(この企画は、98年4月10-12日に、海洋科学技術センターの招待で、日本工業新聞記者として「しんかい2000」に搭乗した体験、写真をもとに構成しています。写真、記事の無断転載は禁じます。)

シロウリ貝を採りますか?そうか、私に聞いているんだな。研究者の立場である私の権限でシロウリ貝を採取する。バリッ!ロボットアームは、鋼鉄でできているので、貝殻をつかむのは難しいらしい。生きているのを採りますか?と聞かれたが、どうせ殺してしまうし、食ってもうまくないと聞いているので、やめる。この貝殻は、いまでも私が所有している、後で述べるもう一つのものと一緒に。
画面左にあるのは、採取した生物などを入れるケースだ。これに入れて、浮上してから直接触ることができる。ここで科学的な話を一席。深海で採取した生物を地上に上げるとすぐ圧力のせいで目玉や内臓が飛び出てしまうんでしょ。何度も聞かれた質問だ。そういう私も、深海の取材を進めるまではそのように思っていた。実際には、肉体を構成する細胞なども、細胞膜を通じて水が行き来するので、あまり急激でなければ、負担はないらしい。逆に言えば、浅いところにいる魚を深海に持っていっても、結構生きることができるらしい。ただし、空気が入っている肺を持つ我々は、圧力によって肺がつぶされて死んでしまう。また、浮き袋に油脂を利用している魚は大丈夫だが、空気を利用している魚も人間と同様に死ぬ。
さらにしんかいを進めると、シロウリ貝の死骸の中にカニが群をなしているのが見えた。シロウリ貝やその腐敗した肉を分解する微生物などを食べにきているようだ。カニにとって、硫化水素の臭さを我慢すれば、この辺りにはたくさんの栄養源がある。このカニはうまいのかそれとも硫黄臭いのか。持ち帰って、鍋にでもしたい気がした。