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WRITE IT LOUD!! ROLL OF ROCKS

                        1996年10月11日開始

                                  火だるまG

第10回:1997年2月25日

DON'T THINK TWICE,IT'S ALL RIGHT/BOB DYLAN(62 IN THE FREEWHEELIN' )
It's Hard to be a Saint in the City/BRUCE SPRINGSTEEN(73 IN GRETTINGS FROM ASBURY PARK,NEW JERSEY)
Smells Like Teen Spirit /NIRVANA(91 IN NEVER MIND)


座って考え込んでいるだけじゃしょうがないだろ
どうでもいいじゃないか、そんなこと
だから座って考え込んでててもしょうがないって
今わからないなら一生わからないんだよ
明日の朝、鬨の声があがるころには
俺はもうここにはいないぜ
お前みたいな奴がいるから、俺は一生ふらふらしてなくちゃならねぇ
でも、まぁ、気にすんなよ

明るくしたってしょうがないんだよ
明かりなんてないの
明るくしたってしょうがないんだってば
俺は暗い道を行くんだから
ほかになんかいうことはないのかよ
俺だって行かなくてすむもんなら行きたくないんだぜ
実際のところ、ろくな話しもできなかったな、俺たち
でも、まぁ、気にすんなよ

いまさら俺の名前を呼ぶんじゃねぇ
もっと早くそうすればよかったじゃねぇか
俺の名前を呼ぶんじゃねぇって
もう聞こえないんだよ
考えるだけ考えたことだ
愛した女たち、ガキみたいな奴ら、お前みたいな奴のこったよ
俺は心を捧げたのに、魂までよこせとぬかしやがった
でも、まぁ、気にすんなよ

俺は長い孤独の道を行くんだよ
どうやら、それが俺の故郷らしい
あばよなんていうのは気がききすぎているけど
俺は、あなたに、お別れをいいます
あなたが僕に不親切であったとはいいませんが
もう少しうまくできたかもね。どうでもいいけど
よくも俺の貴重な時間を無駄にしてくれたな
でも、まぁ、気にすんなよ



俺はなめし顔負けの面の皮、ダイアモンド製のコブラ
顔色悪くよれよれだけど、超新星並みの破壊力の持ち主
太陽を眩しげに見上げるマーロンブランドみたいに歩き
カサノバなみのダンスの名手
得物携帯、髪はポマード撫でつけ
皮ジャンの銀鋲はニセだけど、ハーレーダビッドソンなみにピカピカ
それで街に飛び出せば、街の鼓動は俺のもの
姉ちゃんたちは「あのこ可愛いジャン」
ちんばのジジイは「気の毒だと思って5セント恵んでくだせぇ」
ガキどもは喧嘩売ってくるし
街で聖者やってんのもしんどいぜ

俺は横町の王様、汚い言葉ならまかしとき
貧乏人界の王子様、乞食さえからも巻き上げる
ヒモとしても超一流、口はたつし、いつでも冷静
負けてばっかりのダフ屋専門のばくち打ちでもあります
冬になればたちまち凍死の危惧を抱き
地下からキリストみたいに吹き上がる蒸気が悪魔にさえ見える
悪魔の手招きには、サツだってお手上げだろう
蒸気に向かってダイブすれば、熱々の息吹が俺の首筋にあたる
街で聖者やっているのもしんどいぜ

地下鉄の賢者どもは死んだみたいに座っている
地下鉄がガタゴトガタゴト音を立てても、奴等の瞳は固定不動
やつらバランスがとれてるつもりだろうが、実際は怖くて動けないだけ
暖かいのはありがたいが、このトンネルは暑すぎる
それで立ち上がり次の駅で降りようとすると、座っていろとみんなして押さえつけてきやがる
ムカついて足をバタバタして、ようやく穴から抜け出して街に復帰
姉ちゃんたちは「あのこ可愛いジャン」
ちんばのジジイは「気の毒だと思って5セント恵んでくだせぇ」
ガキどもは喧嘩売ってくるし
街で聖者やってんのもしんどいぜ



銃に弾をこめてっと、さぁ、友達を連れてこいよ
失ったり、だますって、おもしろいぜ
彼女退屈でわがままだしさ
いけねぇ、こんな下品なこといって

どう? どう? どう? どのくらい最低?

俺は頑張らせたら世界最低
でも、この才能に感謝しているくらいさ
俺たちってそういうもんだし、これからもずっとそんなもんだよね

どう? どう? どう? どのくらい最低?

なんでこんなことしているのか、忘れちゃった
と、思わず笑みをもらす(笑)
でも、そいつが問題、大問題
でも、まぁ、どうでもいいや

どう? どう? どう? どのくらい最低?

光なんてないほうが、危険が少ないのではなかろうか
俺たちはここにいるのだし、楽しんでいるのだから
馬鹿みたいで、伝染病にかかっているような気もするけど
白黒アイの子、白子、蚊、俺の性欲、あ〜っ、全否定



アメリカ、すなわち世界の、60年代、70年代、80年代は糞みたいな時代だから飛ばして(実際は僕自身が糞のような時を過ごしたということです)、そして90年代の先鋭的な自意識を、こうして並べてみてなにか考えること感じるこというべきことがあるかというと、もちろん、それはたくさんあるのだけど、当然うまくまとまらない。ただ、それぞれ純粋で立派な自意識と思うのだけど、追体験も含めて、それを全てクロニクルしてしまった立場から俯瞰すると、それぞれ、その時代が彼らをしていわせたという気がするよね。たとえばあの時代には、ディランであるよりも、ボスやコバーンであった方が難しいだろうし、現代において、あの時代のディランやボスであることは、彼らの現在を見るがごとく不可能に近い。人間は時代から逃れられないのかしらね。僕は現代になんてなんの興味もないのですがね。

ボダへ

去勢された不満たらたらのガキ、熟練した馬鹿の舌から出た言葉にしては、この手紙はわかりやすいものになると思う。
いわゆる自立と抱擁に深くかかわるコミュニティに初めて僕が紹介されて以来、何年もいわれてきた、パンクロック界お決まりの警告は、やはり本当のようだ。僕は音楽を聴くのも作るのも、本を読んだり文章を書いたりすることにも興味を失ってしまった。そしてそのことに罪の意識を感じている。
たとえば、僕らが袖にいて、劇場のライトが落ち、観衆の躁病の絶叫が沸き上がる時にも、それがフレディ−・マーキュリーに及ぼすような作用がもう僕にはやってこないんだ。彼は、本当にそれが好きで、それからアドレナリンをもらっているみたいだった。僕は賞賛と嫉妬を禁じ得ません。でも、僕は観衆をコケにすることができない。俺は最高に乗っているぜ、なんて、観衆をペテンにかけるのは最悪だ。
ライブで劇場に出入りする時にパンチカードを押しているような気になることがある。僕はできることは全てやったんだよ。(神さま信じてください。でも力がなかったのです)僕はたくさんの観衆に喜んでもらったことには感謝している。終わっちまったことにしか感謝の心を抱けないのはナルシストの証拠だね。僕は感じやすいのさ。僕がガキのころのような情熱を取り戻すには、どこがが少々麻痺でもしなくちゃ無理なのです。
最後のここ3回のツアーでは、友達や観衆にも大変満足したけど、このフラストレーションはどうしようもない。みんなも、僕も、いい人さ。たぶん僕はあまりに人が好きなんだ。それで悲しくなってしまう。悲しい、感じやすい、わけのわからない、魚座の、神の子ってわけだ。なんで楽しまないんだって? 知るかそんなこと。
僕には汗と情熱を惜しまない女神のような妻と、あまりにも昔の僕に似すぎている娘がいる。彼女は愛に満ち、会う人すべてにキスを与え、みんないい人でだれも彼女を傷つけたりしないと思っている。僕が畏れるのは、僕のせいで、彼女が、僕のような、みじめで自己破壊的なデス・ロッカーになりやしないかということだ。
僕は7歳の時以来、全ての人間を憎悪するようになってしまった。でも僕はそれを受けとめた、がんばったんだ、誇りにさえ思っている。理由は簡単で彼らがあまりにも簡単に興奮する、熱狂するからだ。僕があまりにも彼らを愛し、彼らを気の毒に思うからでもある。
こんな吐き気をもよおすような手紙を読んでくれてありがとう。これまでどうもね。僕はどうしようもないフラフラの気分屋で、でも、もう情熱がないのだ。覚えておいて欲しいのは、消え去るよりも燃え尽きる方がましだってことです。
平和、愛、情熱
カート・コバーン

フランシスとコートニーへ

僕はあなた方の身代わりになります。
コートニー、フランシスのために頑張ってくれ
彼女の人生には、俺がいない方がよっぽど幸福だ。
愛しているよ!愛しているよ!


カート・コバーンの遺書を訳してみました。

60年代、70年代の代表的な自意識は顕在で、90年代のそれは早くも滅びているということですが。その全体を勝手にクロニクルする僕としては、その全てを、感じ、学び、愛し、憎まねばならない、という気がします。一番いけないのは、死者を美化し生存者を貶める、あるいは、生存者を美化し死者を貶めることでしょう。そんなことこそはとっくに時代遅れです。そういうことの積み重ねの、ず〜っとず〜っと先の遠くに、このようなロック的な自意識があり、それらが滅びたり、死にかけたり、もがいたいり、乾いたり、虚ろになったり、微笑んだりしているということなのです。だから、僕たちは、ロックを聴く者として、これら全てを感じ、学び、愛し、憎み、美化し貶めなければいけないのですね。
だいたいが正解などないというのがロックの知恵なのですから。
次回は開店記念日、初心の歌を取り上げましょう。カートさん、あの夜の天気はいかがですか? 明るい青ならいいな、なんて思います。

僕のこの歌詞にスポットをあてる連載で、取り上げる曲の音楽面が最高に格好いいことは保証します。大音量で10回続けて聴いてみてください。きっと感じるものがあるでしょう。(この企画、文章、考え方などの著作権は一応存在するといっておきます)


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