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火だるまGのTHANK YOU REPORT


since 97.5.03

毎月3と9の日に僕のHEART AND SOULからお届けします。1カ月単位でバックナンバーに在庫していきます。

1997年5月3〜1997年5月29日

5月3日 久しぶりに冷や飯を食った
9日  援助交際で彼女たちが失っているもの
13日  訂正あり・野球三題
19日  メトロポリタンテレビの『アフタヌーン・ビート』はまさに俺のためにあつらえたような番組であるのだが、そこには端的に現代の抱える問題が映し出されている
23日  三日連続してレコードをまわした
29日  LAST MONDAY IN COMMON STOCK

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メール歓迎

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3日(土曜日)

久しぶりに冷や飯を食った

俺はいつも2合づつ飯を炊いて2〜3回でそれを消費するのだか、こう飲酒が続くとその消費が滞り飯ばかりが滞留する事態とあいなる。カロリー調整と体重コントロールだけにすがりついてようやく命をつないでいる糖尿持ちの俺としては、大量飲酒の後の胃袋の欲望をほしいままにしてやるわけにはいかないのだ。
まだ死ぬ気はないし、拒食症のみなさんのように喰った後便器を抱えて胃袋の掃除をするのには肉体的に年をとりすぎた。
一昨日くらいから東京は夏になった。飯は炊飯器で保温しておくのだが、なんとなく悪くなりそうで気になる。俺の感覚的な夏の到来は食い物が悪くなるのではないかという畏れとともにやってくる。冷凍しておいて炒飯に使えばいいのだが、もう炒飯ならいくらでも作れるというぐらい在庫がたまっているのだ。
それで昨日の夜は、寝る前に炊飯器から一合弱の飯を茶碗に移し、ラップをかけて冷蔵庫に移しておいた。夜とか寝る前とかいっても朝の6時ぐらいのことである。
1時に起きた。飯を冷蔵庫から取り出すとぼろぼろになっている。電子レンジに1分ほどかける。まぁ食えそうだ。
ここではたと気がつく。おかずがない。肉も魚も冷凍したまま。昨日酔っぱらいながらも飯の心配したところまでは、我ながら立派だったのだが、いつもならやっておく、冷凍庫から冷蔵庫へ肉なり野菜なりを移すという作業を怠ったのだ。
起き抜けのもうろうとした空腹の時間に、さぁてなにを喰おうかと考えるほど、非効率的な作業はこの世には存在しない。世の男性諸氏があいかわらず所帯をしっかりと営んだりする理由が実はこのあたりにあることを俺は知っている。繰り返すが、身心ともに独り者の俺は、肉も魚も一食分づつ優に一ヶ月は篭城可能なほどの在庫を常に保存している。しかし空腹を抱えて考えがまとまらないのだ。挽き肉? 鳥肉? 豚? 牛? 中華? 煮る? 焼く? 炒める?
もう一つの慢性病・喘息の大敵である脱水状態から一時逃避するための麦茶のジョッキを抱えながら、もうろうとした時間が砂時計のように無意味に俺の目の前を通り過ぎていく。
空腹と水分の多量摂取で血液がどんどん薄くなっていく自覚症状にこらえきれず。俺は飯を掌でつまんで口に入れた。飯は再び冷えていたが、薄暖かい季節の温度との微妙なブレンドの賜物か、ちょうどいい粘りけに落ち着いていた。
結局、俺はネギをみじんに切り、花鰹とまぶしふりかけにして、醤油をさっと落として飯をかっくらった。
こうして俺の朝昼兼用の食事は思考時間1時間に対し実行時間で1分で終了したのだが、言葉の本来の意味で冷や飯を食ったのは久しぶりだ。もう一つのほうならいつでものことだけれど。

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9日(金曜日)

援助交際で彼女たちが失っているもの

NHK教育テレビの『視点』、いわば新聞の社説にあたる番組、で脚本家の早坂暁が援助交際について語った。ふだん教育テレビを眺めている人たちにはかなりショッキングだったのではないだろうか。
早坂がデータとして引用した、女子高校生向け某雑誌のアンケート調査に3000人分によると、OGが12%、現役が18%、そして予備軍が50%の割合で、彼女たちは援助交際=売春をしているという。確率70%である。
早坂の結論は、私たちには、彼女たちの「だれにも迷惑をかけていない」、「大人たちだって会社で自分の才能や時間を金に換えているのではないか、どうして私たちが自分の肉体を金に換えてはいけないのか?」という言い分に反論はできない。これは拝金主義の社会のいきついた先であり、彼女たちの父親たちが、高度経済成長にどっぷりと浸かり、会社資本主義を担ってきた団塊の世代であることを考えれば、ある意味で、当然の帰結である、というものであった。そして私たちはまず私たちの幸福の意味を問い直さねばならないのだそうである。
御説ごもっとも。
でもなんか本当はどうでもいいと思っている感じがありあり。下賎な言葉でいえばすでに男をやめている男の言葉だな、これは。
はっきりいって、俺はこのことについてはずいぶん考えたので書く。もちろん俺は今だ現役のつもりです、もうすぐ四十だけど・・・・・・。
1)彼女たちは東南アジアなどからいらしている女性たちの職を奪っている。ブランドものだとか、毛皮だとか、そんなあってもなくてもいいものが欲しいだけでやっているのなら、故国で送金を待つ家族を支えて街頭に立つ女性たちにその場を譲るべきだろう。日本人の若くない女性でそれでしか生きていけない人や、大量の借金などわけあって身を売ってでも金を稼がねばならない人の職も同様に脅かしている。
2)彼女たちは同世代の男たちの生きるエネルギーを損ねている。金さえあれば、どんな男にでも身を委ねる女たちを前にして、それでも俺は男らしく生きようなどと思う男はおるまい。逆にどんなことをしてでも金を握ってぴちぴちの女にありつきたいと思うようになるだろう。そのぐらい若い男たちはやりたいものなのだ。そして、いい女とやりたい、いい女に持てたい、いい女に愛されたいという欲望が、社会の発展を支えてきた。ある者は勤勉さで、ある者は優しさで、ある者は正直さで、ある者は情熱で。結局女とやりたいばかりに男たちは頑張ったりするのよ。そんなことしていると、社会からいい男がいなくなり、さぁもう卒業、これからはいい男を探すのよ、という段になったときに、泣きを見るのはあなた達ですよ。役人は収賄に走り、サラリーマンはサラ金にはまり自己破産に陥ることは請け合い。それに、そのような行為はマザコンのユリカゴに眠っていたい幼稚な男たちの憎悪を駆り立てることは確実になので、通り魔とか痴漢とかが、どんどん増えるよ。あなた達の同世代の男性にだれかが、身の毛もよだつようなおぞましい性犯罪が起こします。これも請け合い。それに、これはそれでもいいと俺は思うけど、今援助交際をしている世代の男性にホモセクシャルが増えることはも間違いないと俺は思います。
3)これは予想だけど、肉体さえ差し出せばいくらでもいうことをきく買春側の男たちを彼女たちはきっと馬鹿にしているでしょう。つまりせっかくのセックスなのに、その時空間にはなんらの優しさも切なさもないのではないだろうか? と危惧するわけです。はっきりいって俺には彼女たちを批判する資格はありません。つい7年ほど前までは、もうげっぷするほど買春に励んだ俺は人間のくずです。でも俺は、言葉の方便ではなく、その度ごとに、その女性を好きになり、いとおしくありがたく思い、涙したことさえもあります。そのような女性と恋愛関係になりしばしお付き合いしたこともありました。遠く島原・吉原の遊郭の時代より、金銭を通した男と女の営みとはいえ、そこにはある種の文化と呼べるような瞬間があったのは事実なのです。永井荷風をひくまでもなく、それらの周辺を描いた文学作品はいくらでもあります。女性としてなら、あなた方の大先輩、樋口一葉さんでさえ、一筋縄で悪とは言い切れない筆致でその世界を描いています。彼女は妾になれという男の申し出を断り貧困の果てに果てた女性でありました・・・・・・。君たちは日本文化のそのような側面を殺しているのです。
4)芸術家がやる気を失います。みんなが金金金といっている中、たとえ金銭的には恵まれなくても、人間の真実を表現したい、芸術家はそんな偉そうなことをいいますが、実はそんな自分を認めて愛して身を委ねてくれる女性によくしてもらいたくて、やせ我慢していることもままあるのです。架空のそのような女性のイメージは間違いなく芸術の源泉です。そのイメージが枯れ、この世から芸術家と芸術がなくなれば、あなた方の感じているような社会の荒廃と乾きはますます進展するばかりとなります。
5)男の子を産んだら愛せなくなりませんか? どうせ金にものをいわせて未成年の女性の肉体にしゃぶりつくんだ、こいつも、なんて思ったら。ついでに女の子も愛せなくなるのではないか? 若い美みそらでそんなつまらない男のおもちゃにされると思ったら。

援助交際をしている女性たちが、僕のいったことなどすべてわかった上で、それをやっていて、どうしようもなく愛に飢えた男たちの女神であらんとしていることを心より祈念してペンを置きます。

僕のページ11日には更新しますので読んでください。


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13日(火曜日)

訂正あり・野球三題

1)まず訂正。
以前デイリープレスの時代に、アメリカ大リーグ、アナハイムエンゼルスの長谷川滋利投手のピッチングには、メジャーの本質たる暴力、すなわち血の匂いがしないので、大リーグの打者は、この程度ならデットボール喰らっても死にやしないと、安心して踏み込んでくるだろうから、おそらく通用しないと書きましたが。結果的にどうなるかはおいておいても、長谷川自身の研究により、通用する可能性が見えてきたので、お詫びして訂正します。
つまり、長谷川は複雑な方法で暴力性を身につけたのです。それは今のところ、右打者だけにしか使えないのですが、すなわち、長谷川は右打者のインコース低めに、シュート気味に落ちるスプリッター(シンカーかもしれない)を意識的に集めはじめました。この球は強振すると、ファールボールを自分の左足に直撃する可能性の高い球なのです。真芯にあたれば100メートルは飛んでいく会心のあたりが、50センチくらいの距離でもろにぶつかればどうなるか? 悪くすればくるぶしとか折ります。これで何人かの選手に痛い目を合わせることができ、長谷川がデンジャラスだとの評判を立てることができれば、道が開けるでしょう。
この球は左バッターから見れば、ちょこんとあてればレフト前にライナーの飛ぶ、もっとも打ちやすい球になるので、左バッターには、同じ仕掛けで、インコース低めに縦のスライダーを集める必要があると思うのですが、そこまではアイディアがいかないみたいです。だれか教えてあげればいいのに。
しかし自力で駄目なら、バットという他力まで本願にするあたり、日本人ですね。

2)早くも失速気味ですが、阪神タイガースに元大リーグボストンレッドソックスの5番バッター。マイク・グリーンウエルがようやく来日、いきなり活躍を見せ、関西の野球ファンの喝采を浴びましたが、少々人が良すぎますな。彼は22〜23試合さぼって出社したわけですが、この22〜23試合というのがミソで、これ以上さぼったら給料に響くというところまでずるしたのに決まっています。契約書は個人のプライバシーに守られていて見ることができませんが、きっとそうです。
このことは現在巨人でずるしていて、最近働きはじめたエリック・ヒルマン投手にも当てはまるはずです。彼もこれ以上さぼると契約で縛られた投球回数か試合数に足らなくなるのでしょう。
あんまりナイーブだと、ますますもって外国人選手たちになめられますよ。それに一昨年のホークスのケビン・ミッチェルの例のごとくに、早期に帰国することになっても、自己都合ではなく会社の都合で帰国するのなら、契約金は返還しなくてもいいという条項が契約書に入っているに決まっています。ミッチェルは勝手に職場を放棄し帰国、やる気はあるのだが体が悪いと、ごねにごね、会社にさじを投げさせて、契約金を泥棒していきました。今はクリーブランドインディアンズでレフトを元気に守っています。
グリーンウエルの性格からすると、危ないと、僕は思います。

3)3週間ほど前、大リーグロサンゼルスドジャーズ野茂英雄投手の対ピッバーグパイレーツ戦の登板で、ドジャーズでコーチ修行をしている元ライオンズそれからホークス、石毛宏典さんがテレビの解説に登場しました。大リーグインサイドレポートが満載で興味深かった。
その昔、ドジャースの総支配人を務めていたアル・キャンパネスという人が書いた『ドジャースの戦法/WAY TO PLAY BASEBALL』という本が、巨人の名コーチ故牧野茂さんにより取り上げられ、それが巨人のV9のベースになったと、大リーグ野球の精緻さの象徴として受けとめられていた時期がありましたが、精緻なんてとんでもない、みんな来た球を打っているだけだし、守備位置や走塁だって系統立てたコーチングなどなにもない。日本の野球のほうがよっぽど進んでいるというのが主旨でした。
石毛さん。あなたは僕と二つ違い、昔ドジャースがやっていたようなちまちました野球が商売にならないから、ここ20年くらいかけて、本来の単純な野球に軌道修正したのだというのがわかりませんか? それがケン・グリフィー・ジュニアとかバリー・ボンズ、フランク・トーマスというような天才の出現を呼び、現在の繁栄を謳歌しているわけなのですよ。
日本には野球しかないとしても、アメリカにはバスケとフットボールとホッケーというライバルがあり、それぞれが違う醍醐味を持っているのですね。バスケはプレーヤーはほとんど黒人、史上最強のアスリートたちが、究極の運動神経をめまぐるしく披露する世界です。フットボールは黒白混淆。すべてのプレーが緻密な作戦によって遂行されるという、史上最大の作戦の世界です。ホッケーは全部が白人(日系人はいる)。カソリックの延長のような保守的な世界でしょう。
アメリカ野球は牧歌的を売り物にする世界なのです。祖父と父と息子が3人並んでホッとドックをほおばるような世界。球場で昼寝している観客があり得るのは野球だけといった感じかしらね。
僕は日本野球もこの線で進むべしと信じて疑いません。

最近このような楽しいバイトしました。ご笑覧あれ。

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19日(月曜日)

メトロポリタンテレビの『アフタヌーン・ビート』はまさに俺のためにあつらえたような番組であるのだが、そこには端的に現代の抱える問題が映し出されている

多額納税者番付が発表されました。我々庶民は、おのれの怠慢や無能を忘れて嫉妬の炎を燃やし、野村証券でVIP口座を持たしてもらい、資金は大手銀行からのほぼ無担保の融資、必ず勝つことが決まっているおんぶに抱っこの合法的なばくちで濡れ手で粟をしている、政治家や官僚や大企業の資金担当者やヤクザや総会屋という、努力しているわけでもなければなんの才能があるわけでもない、ただただ役得に淫している輩への怒りを忘れてしまいます。大蔵=国税の作戦にはまっております。
都議選を控え、そのような輩たちと輩候補たちが、ホテルの宴会場でエイエイオー、俺たちは俺たちの利権を死守するぞとの雄叫びを連日あげております。そしてそれらにお墨付きを与える役割だけが、私たちのボランティア。
この世で、わが国のことが一番嫌いと公言している隣国では、またもや大統領一族にスキャンダル、あと2〜3カ月のタイムラグで、いわれのない(歴史的には十分ある)怒りはなんらかの形で、こちらにとばっちって来ることは必至。怖いなぁ。
自然を守れ、環境を考えろを合い言葉に、メーカーはせっせとRVを作り、高排気量のでっかいジープが狭い東京の道を闊歩。怖くってしょうがないのに、よく見ると運転席に人がたった一人。それで大自然の中で、排気ガスをまき散らして樹木をSMするわけであります。
いやはや、たいへんな時代ですな。

存続の危機がいわれ続けている東京メトロポリタンテレビには、我々東京都民の税金がずいぶん流れているようなので、なるべく見ることにしているのですが、つい最近まで『小林克也のベストヒットトゥデイ』という、昔テレ朝でやっていた『小林克也のベストヒットUSA』そのままの番組が遂にスポンサー不在に陥り、矢尽き刀折れ終了しました。番組時間が変更、たびたびの漂流の果てのお陀仏でした。
ずーっと録画してお付き合いしてきた俺としては、なんとなくホッとした感じ、これで少しは本を読む時間が増えます、だったのですが、なんと、メトロテレビは毎日の音楽番組を始めやがった。これが昼間1時半からのスポンサー皆無番組『アフタヌーンビート』です。なぜスポンサー皆無と言い切るかというと、ずーっとテレビ局自身の番組の番宣だけなのよ。たんなる時間の埋め草としてはこれはよっぽど金のかからない番組なのね。
実はこれはアメリカABCの『IN CONCERT』をそのまま流しているだけなのです。そんな番組なら高いだろう? と思うでしょ? これが現在のそのままではないから安いのです。いやきっとそうだ。
だから、ニルバナのカート・コバーンが新人だったり、スティーブ・レイ・ボーンがファームエイドでギター弾いていたり、もうわけがわからないのですな。
ただただ垂れ流されている番組なので全体像など把握の仕様がなく、日々当惑。しかし、キラキラキラキラ真実が散りばめらている。本日の司会者がカルロス・サンタナだったり、ライブやビデオクリップの他に、インタビューなども多用されており、白髪のレオン・ラッセルが『現代の政治家の言葉はまるで広告のコピーみたいだ。もっと草の根の言葉が出てくるべきだ』と眠そうな表情で呟いたり。ロビー・ロバートソン(元ザ・バンドのリーダー)が『俺は政治にも環境にもなんの興味がない。一日中ニユーオリンズのミュージシャンとギグができたらいい』、そして『いつか昔の仲間ともう一度バンドをやりたい。あいつらは嫌だというだろうか』と寂しそうだったり。貴方のヒーローはという質問に、カート・コバーンが『命知らずの人』と答えたり。
音なら、ファームエイドでのウイリー・ネルソンの『ユーアーオールウェイズオンマイマインド』における、アコースティックギターでのオブリガードの鮮烈さ、彼はアメリカの田端義男だ、そして彼はステージにたつポール・サイモンを紹介するとき、「アメリカ音楽界の伝説であるこのような人物を紹介できることは光栄です」と語っていた。フィル・ラーモンのプロヂュースにより、ジャズのスタンダードナンバーを唄うシニィド・オコナーが「たまには他の男がするように、外に行って金を稼いできてみたら?」という強烈な一節を唄うときの凄み。などなどなど。
しかし、番組の終了時には、制作年度などの一切のクレジットなし、輸入翻訳制作したのが東北新社であることが示されるのみ、ここに登場する人たちになんの予備知識なしで、しかも途中からこの番組にぶちあたり、なんだこれは? なんかしらねぇがカッコいいじゃん! なんて思った人がいても、番組が終わってしまえば、あれは白日夢であったのかとの消化不良の思いが残されるだけだろう。
メトロポリタンテレビの『アフタヌーン・ビート』はまさに俺のためにあつらえたような番組であるのだが、そこには端的に現代の抱える問題が映し出されている。情報が垂れ流されるばっかりで、それを受け手が受容するための親切心がなにもない。情報だけなら現代人はもう満腹である。それを消化するための、胃薬や食後の運動を考える親切な奴がいなければ、情報にはもはや対価としての時間消費以外のなんの意味もないだろう。

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23日(金曜日)

三日連続してレコードをまわした

小学生ならはや卒業の開店六年を経過し我らが最後のロックバー「コモンストック」も何回かめの過渡期に突入し、コモンストックが垂れ流す損失補填のアルバイトなどとの絡みで、今週は月、火、水と、俺が店に出てレコードをまわした。月、火は一人勤務である。

(月曜日)
昼間は編集プロダクションとしては一心同体である、長い友人の事務所とのいっそうの関係強化をはかるための定例打ち合わせの第一回目。来月から店で月曜日を休みにしてみるのも、この作戦の絡みである。メインイベントは大掃除。掃除対策本部長の俺は、バッタ屋で仕入れてきた掃除道具一式を担いで登場。もちろん便所を担当する。和式の水洗便所に向かってそんきょの姿勢。うんちをする道具を掃除するときにもうんちをする格好を人間はするのだという単純な事実を再発見した。
2時間ほど時間があいたのでいったん部屋に戻り、おからで軽食をとって、うんちしてシャワーを浴びて店に。洋式便器では先ほどの真理は当てはまらないことをこれまた再発見。輪廻というのはとことん東洋思想なのですな。(くだらなくてすいません)
店は思いの他に流行って、月曜日を休みに決定した我らに対する神の嫌がらせを感じざるを得ない。経営困難が噂される某銀行のやつの疲れの隠せない顔。まだ月曜日だぜ。去年某石油会社を早期定年退職した初老の彼のセブ島で信じられないほど綺麗な海を見たという話からはじまる、終戦直前に台湾の高雄から引き揚げてくるときに、一本前の船に乗った隣人は海の藻屑に消えたという話。その船は緑十字の船だったという。
1時直前に帰った彼と入れ替わりで入ってきたカップルは10分で出ていった。男は以前、彰に、ボトルの期限切れの問題でごねたことがある。そのことが彼のトラウマになっているのだろうか? ぼろぼろに酔っぱらっている帰り際に、僕のボトルなにか特別なサービスをしてくれているのですか? もう切れていると思ったのに? と呟く。なぁんにもしていないよ。

(火曜日)
昼間は浅草観音裏の病院に定期検診。血圧が高いのはともかく、本日のメインイベントは、最近薬害問題が巷をにぎわしはじめた、喘息患者用、気管支拡張剤「ベロティック」をどうするかである。俺は小児喘息以来の喘息患者だが、喘息用の気管支拡張剤を携帯するようになったのは10年ぐらい前からである。医者には内緒だが、煙草は吸う、寝ない、大酒を飲む、不摂生の限りのような暮らしを支えているのが、常にポケットに入っているスプレーなのだ。人間は心と体でできている。心だけ元気でもしょうがないし、体だけ元気でもつまらない。健康だけを旨に考える生活をすれば俺は発狂するだろうし、行きすぎた無頼は肉体的な廃人を意味する。その狭間で俺を絶妙にコントロールしているのが「ベロテック」なのだ。無茶苦茶な方向に流れていく俺の肉体をストッパーとして支え、俺に自己嫌悪の余韻を残して、明日はもう少しましに生きようと思わせて去っていく。結局念のために、他の類似品と変更することにした。本当の俺の生活を知らない先生はこれでくたばるのは、ガキだけで、大人は大丈夫だ、心配するなといっていた。

また2時間ほど時間があき、日比谷図書館で、来週月曜日の棒大手商社のモスクワ支店長とのインタビューのための、ロシア関係の新聞記事の収拾。
月、火曜日とも、家を出る直前に同じ青年から電話。重度の躁病の彼は話をしたい様子だったが、すまん今は5分も時間を割けないのだ、といって切る。タイミングの悪い人だ。月曜日の打ち合わせはともかく、糖尿病の血糖値を調べるためには食後2時間きっかりに病院にいなくてはならない。
同じ病院に10年近く通っていると、新入職員で入ってきた女性の20代すべてを眺めることともなる。僕は病院では事務のKさんが好み。好みっていうのは、嫌な言葉だね、翻訳するとやりたいってことだものね。彼女は娘から女になりまた娘になり今また女になりつつある様子。妻とか母にはならないといいなぁというのは、俺の勝手な願望。
夜また店こむ。真の音楽ファンが集い。最後に残った若き人たちが、おもしろかったです、よかったですとの言葉をくれる。どうもありがとうございます。
だれかがリクエストした、ボブ・ディランの「フォーエバーヤング」を熟聴していると、MAY YOUR SORROW ALWAYS BE SONG という一節を発見したが、部屋に帰って歌詞を調べると、MAY YOUR SONG ALWAYS BE SUNG、であった。俺の聞き取り能力も大したことないなと苦笑したが、俺に聴こえた言葉のほうが詩だと思いません?

帰宅して、衛星放送でアメリカNBA、西地区決勝ヒューストンロケッツ対ユタジャズを見る。俺はチャールズ・バークリーが好きだ。ルックスがどうしようもなく好きだ。あのあどけない表情が好きだ。顔を見ているだけで幸せな気分にさせてくれる人などそんなにいない。今年こそはチャンピオンになって欲しい。しかし第一戦は負けた。同世代のスーパースターのうちでは、これまでほとんどマイケル・ジョーダン(シカゴブルズ)の一人勝ちで、パトリック・ユーイング(ニューヨークニックス)、カール・マローン(ユタジャズ)とバークリーには最高の瞬間が訪れることがなかった。しかし今年はブルズもたいしたことがないので、ビッグチャンスなのだ。されど今年はマローンのキャリアのピークでもあるようなので、バークリーあやうし。彼の表情はまるで冬山のようで、喜怒哀楽が過不足なくのっかるのだが、今年も哀になるのだろうか。
月火水曜日とも寝る前には、坂口安吾。就寝午前7時頃。

(水曜日) 昼過ぎに飛び起き。アルバイトのブートレッグの原稿書き。3時間。1200字。日曜日深夜朝まで酒飲みながら取材しているので材料には困らない。そこでのことは、次回(25日付)の火だるまGのページで書きますので、奇特な方はお楽しみに。
夜、店。今日は料理人との二人体制。一番暇でやんの。大学の先輩T氏が来店。ベイスターズ(旧ホエールズ)が巨人に5対1で負けたことを知らされる。Tさん残念なようだが、当たり前じゃない最悪落ち目の巨人にこの時点で3連勝するような過酷さを有していたら我らがホエールズは32年も優勝できないなんて信じられない歴史を表現することないんだよ、といってみた。ヤクルトなら完全に3連勝するだろうな。それが勝負の世界に生きるプロというものでもあるが、ここで非情に徹しきれないチームカラーだからこそ、俺や彰が愛したともいえるのである。ここで神さまに申しあげたいのだが、そういう微妙なところで我れらがチームをカードとして配剤しないでください、面倒くさいからさ。
料理人、工がいきなり近づいてきて、俺の頭や肩をもみはじめる。大酒飲みの彼は、怒り上戸、ベロベロベェ奇声発生上戸などなど、いろいろな形で酔っぱらいを表現する人なのだが、時にマッサージ上戸にもなる。しかもこれはプロなのだ。彼は料理、マッサージ、編集などなどに才能を発揮する奇才である。大丈夫、心配するな。まだ死なねぇよ。でも、どうもありがとう。さっきの胡麻豆腐も大変美味しかったです。
12時過ぎに、マスコミボーイ、ペルー帰りの論客J君来店。日本の将来について激論。結論なんて出るわけもなし。俺だけじゃなく、他の奴とも、どんどんくだらなくてもくだっても話すべしと、年上風を吹かして青年を辟易させる。むやみな孤立は悲しいし、無節操な共同はくだらない、というのが、都会暮らしの現代人の合い言葉なのだ。その、ほどのいいあたりに、僕たちの新しいライフスタイルはあらわれるのではなかろうか?

3日連続してレコードをまわし、回転する黒い物体を見つめるばかりで、ものを考える余裕のなかった僕のまわりに起こったことを並べてみたのだが、その間にも、我が相棒たち、彰と工は、それぞれが引き受けた任務を真摯に遂行していたのであり、かくて、我らがコモンストックは最後の最後の瞬間まで大海を行くのであった。

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29日(木曜日)

LAST MONDAY IN COMMON STOCK

ご存じの人はご存じの通り、万障やむを得なく、我らがコモンストックは来月から月曜日を休みにすることにした。従い、26日は最後の月曜日であった。
しかし聞きしにまさるハードな月曜日であった。なんと朝の8時半に起きた。ふだんなら寝入り端である。某大商社におじゃましてモスクワ支店長のインタビューの仕事をした。社内報向けの原稿である。それが終了次第に、代々木上原の仲間のオフィスの掃除及びミーティング。
コモンストックが月曜日から撤退するのは、昔の帝国陸軍大本営の言葉でいえば攻撃的撤退である。本丸を守るために、守る気があるうちは、我々は傭兵となって、戦争の犬たちとなって働かねばならない。そのための大掃除と打ち合わせであった。
5時頃に部屋に戻り、午前中のインタビューのテープをワープロ化する。1時間で終わるわけもなく、6時半には店に出勤である。段取りだけであと4時間くらいかかりそうな雰囲気に泣きそうになる。
店で夕刊を読んでいると、S君が5面の時点で来店した。俺は新聞はテレビ欄からの逆読みである。眠る前に10分ほど新聞を読む運命が決まった瞬間である。S君は最近顔を見せなかったので、どうだ生きているのか? とメールを出した。それに対する応答としての来店であるので、すまんが10分間だけ新聞読ませてくれ、そうするとあとのスケジュールが楽になるのだとはいえない。だいたい毎日几帳面に新聞を読まないと生きていけないなどという弱い俺がいけないのだ。
ちなみに朝刊は昼間の移動時間トータル1時間半で処理した。笑っちまうのが、店で読んでいたのが3つ目の夕刊であるということ、朝刊が代々木上原〜新宿御苑移動中の国会議事堂前で終了したので、国会議事堂の売店で購入したのだ。部屋にも夕刊が届いていることを承知の上での行為で、国会議事堂〜新宿御苑の10分間で少しでも読みすすめて時間を確保したかったのだ。経済的問題でもがいているというのの、このような無駄な金を使う俺はキチガイであろうか?
その新聞を店への出勤で持って出るのを忘れたので、もう一度、西武新宿駅の売店で購入した。その新聞が5面まで来たところでS君が来たというわけだ。やっぱキチガイだな。確実になにかに縛られている。

久しぶりのS君と情報交換。彼は脱サラの保険屋である。がんばっている。
話に疲れて、そろそろ音楽でも聴こうかと(コモンストックはなんの店だ?)、ゴードン・ライトフットを聴いていると、最近よく来てくれる美男美女のカップルが来店。店がようやくコモンストックになりだす。男の人のリクエストのゼップの『プレゼンス』の「インザライト」に深い感銘を受ける。彼らに光を当ててごらん。彼らは愛しはじめるはずだ。みたいなことを唄っているようだ。
男の人が吉田拓郎の「落陽」をリクエスト、それ以降こちらのおまかせ状態になったので、泉谷しげる、古井戸、パンタなどを乱打していると、なんと大学の同級生のMとKが入ってきた。Mはともかく、Kとは15年ぶりの再会だ。MとKは新宿駅の改札でばったりあったよしで、別にMとしてもコモンストックに行こうとして新宿にいたのではなく千葉方面への帰宅の途中で、しかし、ここでKと会ったのも奇遇だからと奇遇ついでに店に来たということである。
しかし実は、奇数日担当の俺が26日の偶数日に店にいること自体も奇遇であり、しかも大滝詠一の「ゆびきり」が掛かっている、その瞬間にあの大肥満のKがあらわれるとは、大滝や細野などのハッピーエンド一派はまさに我らの世代の共通語のようなものであり、奇遇とか運命とか縁とか、とにかく不思議な気持ちにとらわれたが、よぉく考えれば、本当に俺とKとの間になんらかの縁があれば、開店以来の6年間に会えているだろうから、やっぱ、思い過ごしだな。
Kは某大テレビ局のドラマのプロヂューサーである。学生時代から倉本聡に私淑していることを隠していなかった彼にとっては初志貫徹である。学生時代の女性とすでに15年の夫婦の縁を結んでいる彼は実に男らしい人であるが、これから録画撮りがあるとかで30分ぐらいしかいれなかったのは残念だった。
Mが残り、腕のいい編集者である彼と小説の話などしていると、マスコミボーイのJが来店。論客が二人揃い、ペルーの大使館事件と、幕末の長州藩・水戸藩脱藩浪士による、品川のイギリス公邸焼き討ち事件との類似の話など、高尚な話が続き、最後に日本国憲法をどう見るかという話に行き着く。すでに2時を過ぎている。長い一日だ。
両者とも、日本国憲法は理想主義過ぎ、日本の民度を考えると立派すぎるといっていた。同感だが、米ソ冷戦時代など国際情勢ががんじがらめでどんなに理想を語っても、言行一致を問われる心配のなかった幸福な時代には、声高に理想を語ったのに、はっきりと憲法を生活化しなくてはならない状態の、グチャグチャのこの時期になったら、あれはちょっと敷居が高くてなどと言い出しはじめるのはどうかな?
俺を含めて、この国には根性のないやつばかりというところか?
しかし二人とも妻子持ちの切実に守るべきものを有する人たちであり、俺はこの身一つのデラシネだ。俺には本来社会を語る権利がないのかもしれない。
しかし俺は決めている、この国が俺のものの考えからするともう耐えられないという社会状況になったら、この国を出ていく。
どこに行けばいいのかはわからないけど・・・・・・。

THAT'S ALL HAPPEND IN LAST MONDAY OF COMMON STOCK. THANK YOU MONDAY, I LOVE YOU AND I WILL NEVER FORGET WE STARTED COMMONN STOCK ON YOU,11TH MARCH,1991.


最後の月曜日、コモンストックに客6人。善き日であった。


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