2006年に読んだ本


[No.22]
■ 白洲次郎 占領を背負った男 ■ 12.2006 北 康利 ★★★★
 講談社 12/10/2005 第5刷

 今年最後の本、迷った挙句に白洲次郎にした。 以前から一度じっくりと読みたいなと思っていたのだが、読み終えた後で「大草原を吹き抜ける風の香りを感じた」ような気がした。 そして坂本竜馬のことを考えてしまった。


[No.21]
■ 三年坂 火の夢 ■ 12.2006 早瀬乱 ★★★★
 講談社 10/08/2006 第一刷

 こちらも江戸川乱歩賞の受賞作。 東京ダモイとは全く違う作風であり楽しめた。 独特の雰囲気のある内容であり、私も東京の坂道には多少興味を待っていたこともあり、とても興味深く読むことが出来た。 導入部分から引き込まれてしまい、展開が読めないこともあり一気に読んでしまった。 全ての謎が一気に解けないまま終わってしまった感はあり残念ではあるが、全体的には良く出来た作品だと言わざるを得ない。


[No.20]
■ 東京ダモイ ■ 11.2006 鏑木蓮 ★★★
 講談社 01/08/2006 第一版

 江戸川乱歩賞の受賞作だけあって、読み応えのある作品であった。 文章が丁寧で落ち着いて読めるのが好感であったが、構成がまだまだ荒削りの部分も目に付いた。 シベリアの収容所の記述はなかなかのもので迫力があり、出版社の女性先輩の描写にも作者の力量を伝える力を感じた。 次の作品が楽しみである。


[No.19]
■ 受精 ■ 10.2006 帚木蓬生 ★★
 角川書店 09/H13 初版

 「受命」を読んだので、この小説は読まなければと考えたのだが、失敗だった。 受命を読んでいたのでストーリーがわかってしまっていたせいか、全然面白くなかった。 描写がくどいのも気になった。 やはり順番によむべき種類の作品だったのか、残念。


[No.18]
■ 風の影 上/下 ■ 09.2006 カルロス・ルイス・サフォン 木村祐美=訳 ★★★★
 集英社 08/2006 第二刷

 予備知識なしで読み始めた。 ちょうどバルセロナへ行った直後に見つけたというだけの動機だった。 ところが、滅茶苦茶おもしろかった。 重厚な構成は読み手を一気に物語へと引き込み、時間を忘れて読み進んでしまった。 本当に久しぶりに、あの子供の頃に読んだ冒険小説のような楽しみを味わうことができた。 だから本は面白いのだ。


[No.17]
■ ゆりかごで眠れ ■ 09.2006 垣根涼介  ★★★
 中央公論新社 04/2006 初版

 ワイルド・ソウルの作者ということで読んでみた。 おもしろかったが、最後が少し楽しくなかったのが残念。 作者は多分続編を書くつもりだなと思わせる箇所があり、それはそれで楽しみではあるが。


[No.16]
■ 受命 Calling ■ 08.2006 帚木蓬生  ★★★★
 角川書店 06/2006 初版

 作者渾身の書き下ろし作品。 とても面白かった。 久しぶりの帚木作品だったが、文章に力があり途中でなかなかやめられないのだ。 


[No.15]
■ 夜市 ■ 07.2006 恒川光太郎  ★★★★
 角川書店 03/2006 八版

 これは良い作品だった。 予備知識なしで読み始めたが、文体/テンポ/構成の品質が高くて、久しぶりに読み終わったあとの爽快感が残る作品だった。 幸せな気分になれてよかった。


[No.14]
■ 町長選挙 ■ 06.2006 奥田英朗  ★★★
 文芸春秋 04/2006 第一刷

 おっと、ついにネタ切れか。 明らかに最近お騒がせの人物をモデルにした前半はどうしたものか、三流の手法じゃぁないですか、奥田さん。 伊良部先生もこれが限界かもしれないね。 次はマユミを主人公にした作品にすればまだシリーズは続くかもしれないね。


[No.13]
■ 制服捜査 ■ 06.2006 佐々木譲  ★★
 新潮社 03/2006 発行

 地味過ぎておもしろくない。 佐々木譲はこの世界ではちと辛いかな?


[No.12]
■ トーキョー・バビロン ■ 05.2006 馳星周  ★★★★
 双葉社 04/2006 第1刷

 すっかりスマートな小説家になってしまったというのが感想。 これでもか!という表現がなくなり、代わりに巧みな言い回しや良く練られた展開に驚いた。 実績を積み重ねるにつれて洗練されていくのは良いことだが、少し初期の作品に共通する「怖いものなしの勢い」が懐かしいのも事実だ。 さて、この作者、今後どうなってゆくのだろうか? 楽しみである。


[No.11]
■ 魔女の笑窪 ■ 05.2006 大沢在昌  ★★★★
 早川書房 01/2006 第1刷

 私がお気に入りの作家ではあるが、途中で止まらなくなり一気に読み終えてしまった。 最後の展開に不満は残るが質の高い作品であることには変わりない。 テンポが良くてほんとうに面白い。 続編があるかもしれないと感じた。


[No.10]
■ 三百年の謎匣 ■ 05.2006 芦辺拓  ★★
 早川書房 04/2005 初版

 消化不良の物語が続き、最後にあっと驚く説明という展開は予想がついていたが・・・ 最後の強引な終わり方は無茶でしょう! 質が高い作品とは思えない。 


[No.9]
■ 報復ふたたび ■ 04.2006 ジリアン ホフマン 吉田 利子=訳  ★★★
 ソニーマガジンズ 11/2005 初版第1刷

 第二作にありがちな「つまらなさ」はまったくなく、リズム感のある展開に引き込まれてしまった。 次回作に期待。


[No.8]
■ キタイ ■ 04.2006 吉来駿作  ★★★★
 幻冬舎 01/2006 第1刷

 構成もシンプルで、謎解きもうまく展開している。 ペットセミタリーを思い出すのは仕方ない、許そう。 緻密な構成とは言い難いが、その点も許そう。 とても面白くて一気に読み終えてしまい、「うん」と唸った。 流石は第6回ホラーサスペンス大賞受賞作という印象だ。


[No.7]
■ ムンクを追え! ■ 04.2006 Edward Dolnik = 河野純治  ★★★★
 光文社 03/2006 2刷

 とても面白い作品だった。 ノンフィクションという内容だが、主題から外れて話題が広がる手法も興味深く読み進めることが出来た。 へたなミステリーより余程面白いと思う。 ただし、この話からちょうど10年後に同じ絵が白昼堂々と盗まれる事件が発生しており、この事件とタイミングを合わせたようなこの本の出版を、単なる偶然と受け止めてよいのだろうかと思ったことも確かだ。


[No.6]
■ チーム・バチスタの栄光 ■ 03.2006 海堂尊  ★★★★
 宝島社 02/2006 第1刷

 登場人物の個性が見事に描写されており、中盤からの盛り上がりも素晴らしい。
エンディングがおとなしいところが、少し寂しかったが、総合的にはレベルの高い作品だと思った。


[No.5]
■ 報復 ■ 02.2006 ジリアン ホフマン 吉田 利子=訳  ★★★
 ソニーマガジンズ 11/2004 第一版

 おもしろかった、この小説は女性でないと絶対に書けない種類のものだと思った。


[No.4]
■ 犬はどこだ ■ 01.2006 米澤穂信  ★★★★
 株式会社東京創元社 07/2005 初版

 すっきりとしたまとめかたで、爽快感が残る。 文体も爽やかで読んでいて心地よい。 この作者の作品は初めてだったが、別の作品も読んでみたくなった。


[No.3]
■ うたう警官 ■ 01.2006 佐々木譲  ★★★
 角川春樹事務所 12/2004 1版

 一定のレベルは確実で裏切られないことがわかっているのが佐々木譲。 一晩に凝縮された時間にそれぞれの立場の警察官を描写するという手法で、手堅くまとめた作品だ。 警察官の心理描写が面白いが、横山秀夫に比べると突っ込み方が今ひとつ弱いような感じがする。 大沢在昌とも少し違った雰囲気であり、この作品は中途半端な印象が最後まで残った。


[No.2]
■ 痙攣的 モンド氏の逆説 ■ 01.2006 鳥飼否宇  ★★★★
 光文社 04/2005 初版1刷

 いやぁ、面白い作品だった。 前半と後半の展開のギャップも素晴らしい意外性があり、素晴らしい。 とても楽しく読むことが出来たので、作者に拍手を送ろう!


[No.1]
■ 蝶舞う館 ■ 01.2006 船戸与一  ★★★
 講談社 10/2005 1刷

 久しぶりの船戸与一は相変わらずで、その独特の世界を堪能した。 しかし、以前の迫力がなくなってきていると感じるのは私の感性が変化してきたことが原因であろうか? あるいは本当に船戸与一に力がなくなってきているのだろうか? 以前の南米を舞台とした作品のような、読み手に迫ってくる圧倒的な力が懐かしい。







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