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神奈川月記9704

ガードレイルごとはね飛ばされたDJEBEL XC,さぞ痛ましい姿にと案じたらさほどでもない。右のサイドカヴァ(ここからぶつけられたと思われる)は半分ちぎれ左側のナックルガード(ここから着地したと思われる)が擦り傷だらけ灰だらけではあるものの,ウインカ・ヘッドライト・テイルランプといった割れ物に損傷が無い。バックミラは明後日の方向を向きながらも鏡面は無事で,タンクやシートも無傷である。如何にも壊れるべきが壊れ,守るべきを守ったという感じだ。
特に修理も必要ないか・多少の傷はあるほうが恰好いいしな,と一滴の自己欺瞞を隠し味に示談に臨む。何たってこちとらに非はまったく無いので──歩道に常時駐輪していたのは別問題だ──相手がゲルニした場合にだけ怒りくるえば良い。
けっきょく修理費の全額を相手方の保険会社が負担するという至極まっとうな決着を見た。ちっとも揉めなかった。事故った当人から詫びの電話が入ったりして,何だ,善い人じゃんか。これにて一件落着,の予定が立つ。
とにかくXCをバイク屋に持ち込んで修理の見積もりを貰う,保険屋のエイジェントが見積もりとバイクの壊れ具合に納得したら──ちゃんとバイク屋に出向いて検証するそうである──示談書を作ってバイク屋に送る,おれがバイク屋で書面を確認し署名捺印すれば示談成立,それから部品を発注して修理開始と,こういうストーリである。一般的な手順と思うが,どうか。
事故から10日目,自走して修理工場へ運ぶ。セルをキョトトトと回すだけでエンジンに火が入った。ガス漏れ・オイル染みは見えない。ハンドルロックとサイドスタンドが渋くなっている。Fサス・Rサスの効きやブレーキパッドの接触などをひと通りチェックしてからそろそろと走り出し,路上で分解しては堪らないので50km/hも出さなかったが,異音も妙な挙動も感ぜられなかった。さすがにハンドルは少しく曲がっていたけれども──進路に正しく向いていないという意味──走行に差し支えるほどではない。
ところがバイク屋の兄ちゃんは一瞥するなり,あぁ結構イってますねえなどと言う。えっ,そうなん。シートレイルが曲がってるし,フレイムの継ぎ手の塗装がひび割れてます。ははぁなるほど,車体全体がくの字なりに歪んでいる。4時方向からどつかれたのが急にありありと見えた。
フレイム交換となると新車を買うほうが安く付くということになりかねない。もしも全損と判定されれば,加害者の保険だって「時価」でしか弁償しないだろう。バイクのリセイルヴァリュなど吹けば飛ぶようなものである。中古車価格で補償されても,買いなおす際にこっちの持ち出しが嵩んでやりきれないぞ。
見積もりに拠ればフレイムの修正があって18万円だ。うおー。新車価格の1/3だね。保険会社もこれでウンと言ったようで,バイク屋から直接保険会社に請求の行くよう取り計らってもらった。おれの懐の痛むわけではないから幾らでも構やしないけれど,18万ものダメイジを受けたXCが憐れである。
それにしても事故から1箇月たってやっと修理が始まる。こんなものなのか。フレイムの修正は専門の業者(或るいはそのバイク屋の専任部門)に外注するらしい。一度エンジンから何からみな降ろして引き渡し,直ってきたらもう一度くみたてるわけで,完治にはなお時間が掛かりそうである。
ガードレイルのほうは4週目,モノリスのように忽然と新品が据え付けられていた。あー,近所のライダ諸君,おれに既得権があるので常駐しないように(不当)。
ところで事故った人はガードレイルも弁償せねばならんのではないかいな。電柱1本300万円というのを聞いた憶えがあるけれども──真偽は不明──ガードレイルはお幾らかしら。へえ,1m5000円っす。あら,意外にお安いのね。4000〜7000円/mくらいの値幅はあるのだが,それは主に支柱の太さに拠るものらしい。ふーん。信号機は230万円・パーキングメイタが33万円だそうだ。まぁこれらは出荷額だろうから付帯費用が上乗せされてどのくらいになるかは見当も付かない。激突するときは貯金高を確かめて,無理のない選択を心掛けよう。

1997年4月6日


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モノリス
 Arthur C. Clarke『2001年宇宙の旅』シリーズ最重要建造物。おれにも触らせてもらいたい。いま手元に『2001年』が無いんで確認できないんだけど,2001年の出来事は月面でのモノリス発見だっけ・ディスカヴァリ遭難のほうだっけ。どっちにしろもう出発していないと間に合わないのではないか。

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written by nii. n