神奈川月記9405

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冠省
ミズホのAMアンテナが届いた。組み立ててみましょ。
骨組みは電磁誘導を嫌って木製である。長さ45cmの角棒を4本放射状にセット,台座に螺子留めした支柱(全高55cm)へ蝶螺子が固定する。これで4翼の風車ふうになった。
アンテナ部分は翼を対角線と考えて1辺67cmの正方形である。各構成材は木工用ボンド(ご丁寧に付属してある)で接着するよう指示されていたが,いずれバラす機会もあろうと摩擦に頼った。
翼にはそれぞれ13本の溝が1.5cm間隔で切ってあり,これをガイドにビニル線を蜘蛛の巣様に張っていく。アンテナ線の総延長距離は,えっと,えっと,面倒臭い。外側12回のループと最内周1回のループと,アンテナ線は2本ある。この2本てえ所に高性能を予感させるではないか。
木材はニスを上塗りしてあるものの下地に何の表面処理も無く,そこへ手巻きのビニル線だからどう見ても小学生の夏休み工作である。ただなりが大きいので何かやりそうな雰囲気だけは残っている。
注文したときは気が付かなかったのだけれど,何とブースト アンプ付きだった。それで1万なんぼもするのだ。アンプは調整済みの完成品だが,これがまた市販の金属シャーシにトグルスイッチ・発光ダイオードのパイロットランプ・アンテナ入力がワンタッチのスピーカ端子流用なもんで,中学生の夏休み工作然としている。中を開けてみたら4×52cm^2の基盤に十数点のお馴染みのパーツ,どうせならこいつもキットにしてもらいたかったなあ。
電源は3VのACアダプタの他に乾電池も使える。出力はRCAピンを介してカプラか裸線かの選択式だ。アンテナ入力端子の無いポケットラジオなんかにカプラを用い,バーアンテナの内蔵されていそうな辺りに載っけるだけでそれなりの効果を得られる。カプラはコイルを木片に封入したもので,ワニさんカットを施して受けを狙う。でもおれのチューナは外部端子があるから直接検波をぶち込めるもんね。
おれが中波を聴くのはひと重に落語を録るためで,NHK第2・TBS・文化放送が入れば言うことなす。まぁ文化放送は『ビアホール名人会』がこの春で終わってしまったのでもはやどうでも良い。それぞれ594・954・1134kHz。
現状満足に入るのは1局も無く,ザーザーいうノイズが常にてんこ盛りである。内容が聴き取れさえすれば用を為す噺だからおれも録っているのであって,音楽であらばとうてい容認できないレヴェルだ。
NHK第2をリファレンスにしよう。チューナの入感メイタは10セグメントの簡易版で,8点からフルスケイル扱いである。買った当時の月記を読み返すと(92年11月),ラジオ日本が8点で最高・他は6点とある。何だ何だ,今は5点だぞ。
チューナに付属のミニループは取り去ってミズホを接続。うぬ,4点ではないか。笑うな,これ,指向性の問題があるんよね。90度転回させればベストなのだが,それだとどうしても設置場所が無い。敷居(と言うのかな)の上へ窓(ベランダの出入り口)に寄り添うように載せると則ち窓面に平行となり,皮肉なことに最悪の方向に当たるのだ。お負けのミニループはミニだけに最良の方角に向けることができた,それと同等なわけだ。
では,徐にスイッチオン。ふふふ,まだパワを入れてなかったのだよ。アンプで増幅しなくとも電波自体はキャッチしているから無電源アンテナとしても使えるのだ。アンプを生かしてバリコンを調整してっと。やあ,6点になった。ありゃ,2年前の水準に戻っただけかい。
新アンテナの設置で確かに感度は上がった。アナウンサの声なんか張りが出てるしノイズも減っている。しかしむかし地元で聞いていたRCCの比ではなく,ザーザーいうのも払拭されてはいない。ここ数年だけでも電波状況は悪化していると見える。
劇的な改善は得られなかったけれど,まぁ良しとするしかないわいな。次に引っ越したときを楽しみにしよう。


DOS/VのJ6.1が届いた。インストールしてみましょ。
J5.0はFD5枚だったのに今度は9枚だ。大きくなったものである。DOSなんて多くのユーザにとってWindowsを起動するための通過儀礼に過ぎない。かく言うおれもそうだ。そんなタグボウトみたいな奴をヴァージョンナップするには強力な動機がなければならない。
全てのファイルをインストールするにはHDに18MBの空きが必要である。尤もぜんぶ要るなんて人は評論家くらいなものだ。同じユティリティが英語版と日本語版とふた通り用意されていたり環境によっては不用だったり,オプションを選べば負担はぐっと軽くなる。勿論あとからどうにでも追加できる。なるべく入れないつもりでいるべきだ。
アップデイトの際は旧ヴァージョンのファイルを自動的にいったん削除するから,特に自己流にチューンしたものが無ければただただインストーラ任せにすれば済む。各ユティリティの英語版と日本語FEPのIBM MKKを入れなかったら,使わないFDが2枚あった。
完全に不用となったJ5.0のFDはライタで炙って使えないようにしてから捨てる。OSのFDは誤消去防止の爪が外してあるんで潰すこともできない。勿体無いけどしようがないね。
電源を落として再立ち上げ。RAMブーストとアンチウイルス(RAMのみ対象)が動いてこれまでより30秒よけいに時間が掛かる。RAMブーストの方はいったんDOSが立ち止まって,今回ユティリティを起動するかどうか訊いてくる。3秒以内に"n"を投入すればスキップされ,放っとけば勝手に"y"が入って続行である。どちらのユティリティもブート毎に動かすか否か・チェックをどの程度やるか指定できる。おれは初回起動時(電源スイッチを入れたとき)だけ簡略してやってちょとAUTOEXEC.BATに書き込んだわけだ。
アプリを快適に動かすには,デヴァイス ドライヴァなんかをUMB領域に追い出してなるべくコンベンショナルメモリを空けといた方が良い。とは言い条この頁を書くにも実は一所懸命解説本を繙いてばらばらにしているおれのような素人ビギナには酷な設定だ。
RAM BOOSTはそれをフルオウトで代行してくれる学習型の独立ユティリティである。起動時のCONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATを解析してメモリの配置を最適化する。ユティリティが最適と判断するまで解析とOSの再立ち上げリブートを繰り返すのだが,通常リブートは1回で済むようだ。
アンチウイルスはその名の示すとおりコンピュータ ウイルス駆除のユティリティである。日本では法人・個人を問わずかなりのパワユーザでもウイルス禍を舐め切っているが,AIDSや梅毒の蔓延に無関心な体質に由来するのは間違いない,無防備な奴に限っていざ罹患したなら用心していた人の百万倍も怒るくせに。
おれのVisionのように極めて閉鎖的なシステムでも違法コピイ(こらー)やFDのやりとりから感染の可能性があり,パソコン通信を始めれば飛躍的に危険は高まる。アンチウイルスは1000種以上のウイルスを検知し駆除し破壊されたファイルを(ある程度)復元する能力を持つ。もちろん既知のウイルスは1000種じゃ利かないが,未知のものでも感染経路や挙動のパタンから高率で対応できる。
おれのばあい雑誌付録のフリーソフトを2・3インストールしているのでひょっとしたらの不安があったのだが,幸い冒されていなかった。当面は月1回の自動チェックで充分だろう。パソ通を始めたら頻度を上げることにする。
さて,目玉は何と言ってもハードディスクの最適化ユティリティDEFRAGだ。これまでのファイルの書き込み・消去で断片化した空きエリアを纏めてひとつの大きなブランクにする。スワップファイルの拡大が容易になり,ファイルアクセスの時間短縮にもひと役かう。これがあるからおれはヴァージョンナップしたのである。
完全な最適化を指定すると次のみっつの処置を採る。

  1. 全てのサブディレクトリをディスクの先頭に移動
  2. 全てのファイルの断片化解除
  3. 全ての空きエリアをディスクの終端に移動

ただ実行に先だってディスクの診断が為され,軽度であれば「不連続ファイルの調整のみ」とか「必要なし」とかメセイジをよこしてくる。
実の所おれも調整だけで良いと言われた。つまり前掲2番目のファイルの断片化解除のみ。実に93%が連続状態だったのだ。何だ,つまらん。でもやってみたら98%に上がった。す・凄い。しかしこれだけで引き下がるのも業腹である。完全最適化もやってしまえ。なんとすばらしい,99%連続状態を達成したのであった。
最適化の最中はフルスクリーンでディスクの模擬マップが展開され,今どこを読んでいてどこに書き込んでいるかリアルタイムに表示される。ぴこぴこカーソルが動いてファイルの整頓されていく様は見ていてとてもおもしろかった。
さっそくスワップファイルを常設5,120KBに広げてやる。尤もこれが適性値なのかは心許ないのだが。
もうひとつ。多分IBMにすればこれが目玉中の目玉なのだろう,ディスク圧縮ユティリティSUPERSTOR/DSがある。「ハードディスク倍増計画」などと唱っているが,本当か。プレヴューといってどのくらい圧縮できるか見積もる機能がある。これをやってみよう。
「倍増計画」ならば圧縮前後で1:2になる筈だ。結果は1:1.3だった。30%アップはたいしたことあるんだかないんだか。
しかし170MBのHDが見掛け上220MBになると言い換えるなら俄然ええ感じに思えてくる。いま空きディスクは35MBだから──あれ,なんか増えたような気がするぞ。確か12MBかそこいらな筈だがなあ。おかしいなあ──ここだけ圧縮しても55MBまで拡大できる。うーん。
やっぱり止めとこう。近近あたらしいソフトの導入は無いし日記やDBを追加したって高が知れている。本当にいっぱいいっぱいになるかデイタMDを入れてバックアップを採りやすくなってからにしよう。
ただFDには圧縮を掛けたい。1.44MBが2.88MB相当で使える。元元HDに突っ込んだファイルの退避用にしか利用してないんで,解凍不能になっても害は無い。ああ,FDには一所に解凍用モジュールも記録できるからSUPERSTORを持っていないパソコンでも貸し借りは大丈夫だ,ただしDOS/Vマシンのみ。


ぐうぜん手にした「少年サンデー」。や,『機動警察パトレイバー』最終回ではないか。
マンガ・OVA・CD・劇場アニメ・TVアニメ・プラモ・ムック・TVゲイム・パソコンゲイム・小説,あらゆるメディア上で展開されたプロットだが同じストーリはひとつも無い。週刊マンガのTV化といった凡百のアニメとは一線を画すのだ。
下敷きはゆうき"あ〜る"まさみや出淵"νガンダム"裕・押井"うる星"守らの与太話(全員うれる前)であって,どれがどれの原作ということはない,おれはマンガのパトがいちばん好きだがね(最近スーファミのパトを買って大失敗した)。
足掛け5年に渡って連載され多くのエピソードで構成されているけれども,実は1話しか描かれていない。具体的にはイングラム対グリフォンであり泉対内海であり警視庁対シャフトであるのだが,抽象的には知恵と勇気は暴力に勝てるかというものだ。大量のハイテクを一極集中の東京にぶちこみ続けたらどうなるかという都市論でもある。
紙数が盡きた。以下,次号。

草草

1994年5月17日


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ビアホール名人会
 確かサッポロビールの提供だったのでこの名がある。

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本を繙いてばらばらにしている
 春風亭小朝のクスグリ。

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written by nii.n