公開:2005年8月11日

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写真


解説:落ち込むハス

 植物などを擬人化して、人間の感情を持っているように仕上げた作品です。この被写体を見たとき、人間が頭を下げている感じに思えたので、それを利用した雰囲気に写そうと考えました。

 撮影する時点では、落ち込む雰囲気に絞り込んではいません。マイナスのイメージという方向性だけ決めて、それに合った撮り方をするだけです。含まれるイメージには、落ち込む、元気がない、悲しい、寂しい、などがあります。どれにするかは、仕上がった写真を見てから選びます。パソコン上で写真を表示し、一番適していると思う言葉に決定するわけです。

 もちろん被写体によっては、イメージする言葉が最初から決まっていることもあるでしょう。その際には、その言葉に適した形でフレーミングができますから、より完成度の高い仕上りになる確率が増します。

 マイナスのイメージを持つ写真は、喜びなどのプラスのイメージとは反対の表現術を用いて表します。プラスのイメージなら、写真全体を整えるために、顔の前側を広く確保して写すことが多いはずです。今回はその反対ですから、擬人化した顔の後ろ側が広くなるように切り取りました。

 背景をできるだけ整理しようと思い、大きな葉をほぼ全面に入れています。葉は平面ではなくて皿のような曲面だったので、マイナス・イメージの擬人を包み込む、母親のような感じを狙ってみました。“ほんの少しだけ”ですけど、見守るというか優しく包む感じに。撮る方向を選ぶことで、背景の位置が少しは変えられます。できあがった写真を見てみたら、葉の向いている方向が擬人の顔でないため、見守る感じにはなりませんでした。逆に、擬人の顔を無視している感じに見えます。これはこれで良いように思えてきました。いろいろ写していると、こういうこともありますね。

 撮影した写真を後で眺めたら、「落ち込む」の言葉が適している思いました。擬人化して感情を表す場合は、感情の言葉を加えないと、狙いがあまり伝わりません。ですから、「落ち込む」をタイトルに含めました。