有度部牛麻呂 うとべのうしまろ 生没年未詳

駿河国の人。名の「牛」が干支に由るのであれば、神亀二年(725)乙丑(きのとうし)の生まれと推測される。上丁(かみつよほろ/じょうちょう。課役を負った成年男子)。天平勝宝七歳(755)二月、防人として筑紫に派遣される。

 

水鳥(みづとり)の立ちの急ぎに父母に物()()にて今ぞ悔しき(万20-4337)

【通釈】水鳥が飛び立つ時のような出発の慌ただしさに、両親に物も言わず来てしまって、今になって悔しい。

【語釈】◇水鳥の 「たち」の枕詞。水鳥が水面を飛び立つとき、慌ただしく羽音をたてる様を想起させ、「立ちの急ぎ」の比喩にもなっている。◇急ぎ 「急ぎ慌てること」「支度・準備」の両意がある。◇物言(は)ず来(け)にて ろくに物も言わずに来てしまって。「物いはず来(き)にて」の訛り。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日