豊玉比売 とよたまひめ

海神の娘。玉依姫の姉。山幸彦(火遠理命とも日子穂穂出見命ともいう)と結婚し、鵜葺草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)を生む。出産の際、夫に産屋を覗くことを固く禁じたが、山幸彦がひそかに窺うと、「八尋鰐(やひろわに)」になってくねくねと這いまわっていた。本身を見られたことを恥じた比売は、海坂を塞いで海神の国に帰ってしまった、という。鹿児島県知覧町の豊玉姫神社ほか各地に祀られている。子の鵜葺草葺不合命は叔母の玉依姫と結婚して磐余彦尊を産む。神武天皇である。
鹿児島県知覧町の豊玉姫神社、愛媛県松前町の高忍日売神社などに祭られている。
古事記・日本書紀に、妹の玉依姫に与えたという歌を伝える。以下には古事記より引用した。

 

赤玉(あかだま)は 緒さへ光れど 白玉(しらたま)の 君が装ひし 貴くありけり

【通釈】赤い宝玉って、緒に通せば、その緒まで光るみたいですよね。それは綺麗なものですけど、立派に着飾った貴男を喩えるなら白い玉、真珠のようです。そんな貴男のおすがたは、なんと神々しかったことでしょう。

【補記】古事記上巻。海神の国に去った豊玉比売は、やはり穂穂出見命が恋しく、御子のお守役として妹の玉依姫を命のもとへ遣った。その時、妹にことづけたのが上の歌であるという。穂穂出見命の返歌は次のとおり。
 (おき)つ鳥 鴨()く島に 我が()寝し 妹は忘れじ 世のことごとに

【他出】日本書紀には次のように載る。
赤玉の 光はありと 人は言へど 君が装ひし 貴くありけり
ほかに、奥義抄・和歌色葉・古来風躰抄・三五記などに引用されている。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成21年04月16日