高宮王 たかみやのおおきみ 生没年未詳

伝不詳。万葉集巻十六に二首。

高宮王の数種(くさぐさ)の物を詠める歌

婆羅門(ばらもむ)の作れる小田を()む烏(まなぶた)腫れて幡桙(はたほこ)に居り(万16-3856)

【通釈】婆羅門が作った田の作物を食う烏は、瞼が腫れて幡鉾に止まっている。

【語釈】◇婆羅門 インドの最上層階級であるが、奈良時代は天竺の仏僧をこう呼んだと思われる。具体的には、東大寺開眼会のために印度から招かれた菩提僧正を指しているのだろう。

【補記】「婆羅門」「烏」「幡桙」など、あらかじめ詠み込む物の名を決め、作った戯歌。内容に意味はない、というか、否応なく意味は生じるが、その偶然性を楽しむことを眼目とした歌である。この種の歌は、長忌寸奥麻呂が多く作っている。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成21年04月05日