若倭部身麻呂 わかやまとべのむまろ(みまろ) 生没年未詳

遠江国麁玉(あらたま)郡の人。若倭部は第九代開化天皇(若倭根子)の名を記念して設置された部民(倭国造の部民とする説もある)。身麻呂は「みまろ」と訓む本もあるが、六人部王(むとべのおおきみ)を万葉集に身人部王と書く例があり、「身」はムと訓んだらしい。戸部主帳(郡の四等官)の丁(よほろ)。天平勝宝七歳(755)二月、防人として筑紫に派遣される。

 

我が妻はいたく恋ひらし飲む水に(かご)さへ見えて世に忘られず(万20-4322)

【通釈】私の妻はひどく私を恋しがっているらしい。水を飲もうとすると、その水に影までが映って見えて、さっぱり忘れられない。

【語釈】◇影さへ見えて 妻の面影までもが添わって見えて。この「さへ」は助詞とも動詞「添(そ)へ」の転とも、いずれにも取れる。「のむ水にみゆる影は我影なれども、それによせて妻がおもかげをいふなり」(代匠記)。

【補記】「恋ひらし」「かご」はそれぞれ「恋ふらし」「かげ」の訛り。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日