馬国人 うまのくにひと 生没年未詳

姓は史(ふひと)。天平勝宝八年(756)三月七日、河内国仗人(くれ)郷の自邸で宴を催す。この時散位寮の散位とある。この宴には大伴家持や大伴池主が参席、歌を詠んでいる(万葉集巻二十)。天平宝字八年(764)十月、従六位上より外従五位下。天平神護元年(765)十二月、武生連を賜姓される。この時「右京の人」とある。万葉集に一首。

河内の国の仗人(くれの)(さと)の馬史国人が家にて宴する歌

にほ鳥の息長川(おきながかは)は絶えぬとも君に語らむ(こと)尽きめやも(万20-4458)

【通釈】たとえ息長川の流れが絶えることはあっても、あなたにお話ししたい言葉が尽きることはあるでしょうか。

【語釈】◇仗人の郷 大阪府平野区喜連(きれ)◇にほ鳥の 息長川の枕詞。にほ鳥はカイツブリ。水中に潜って魚を獲る習性を持つことから「息長」にかかるのであろう。◇息長川 滋賀県の伊吹山麓に発し、琵琶湖に注ぐ天野川。流域は豪族息長氏の本拠地であった。

【補記】題詞の脚注に「古歌未詳」とある。馬国人のオリジナルの作ではなく、古歌かもしれない、という編纂者の疑問を付したものであろう。宴に招いた大伴家持に贈った歌。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日