小町が姉 こまちがあね 生没年未詳

小野小町の姉。出自・経歴等は未詳。小町とともに仁明天皇の更衣であったと見る説がある。また『続日本後紀』承和九年(842)正月の記事に見える小野吉子(仁明天皇の更衣とみられる)と同一人かとも言う。古今集に一首、後撰集に三首。

あひ知れりける人のやうやく()れがたになりけるあひだに、焼けたる()の葉に文をさしてつかはせりける

時すぎてかれゆく小野のあさぢには今は思ひぞたえずもえける(古今790)

【通釈】盛りの時が過ぎて、枯れてゆく小野の浅茅は、今は火が絶えず燃えている。(恋の盛りの時が過ぎて、あなたから疎まれるようになった私には、今恋の火がしきりに燃えているのです。)

【補記】親密な関係だった男が、次第に疎遠になった頃、焼けた茅(チガヤ)の葉に手紙をつけて送った歌。「かれ」に「枯れ」「離れ」を掛け、「小野」に自らの氏名(うぢな)を掛け、「思ひ」のヒに火を掛けている。

【他出】小町集、袖中抄

男の来ざりければ、つかはしける

わがかどのひとむらすすき刈りかはむ君が手なれの駒も来ぬかな(後撰616)

【通釈】我が家の門近くの一叢の薄を刈り取って、馬の飼料にしましょう。そう思っておりますのに、あなたの飼い慣らした馬は近頃来ないですねえ。

【補記】男に対し、遠回しに来訪を催促している。

題しらず

ひとりぬる時は待たるる鳥のねもまれに逢ふ夜はわびしかりけり(後撰895)

【通釈】独りで寝る時は待ち遠しい鶏の声も、久しぶりに恋人と逢った夜は辛く思えるものだなあ。

【補記】「鳥のね」は夜明けを告げるもの。拾遺集に「よみ人しらず」とする小異歌がある(第二句「時はまたれし」。

【他出】小町集、拾遺集


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成22年03月18日