Q1-2.縁語とはどういうものか? A. 広辞苑第四版には、こうあります。 歌文中で、ある言葉との照応により表現効果を増すために使う、その言葉と意味上の縁のある言葉。例えば、「白雪の降りてつもれる山里は住む人さへや思ひ消ゆらむ」の「雪」に対する「消ゆ」の類。私は別の歌を例にあげてみます。 くらはしの山のかひより春がすみ年をつみてやたちわたるらん 天徳内裏歌合の巻頭歌として有名な、藤原朝忠の歌です。 歌の題は「霞」で、大意は「倉橋山の谷あいから、春霞はめでたい年を積み重ねてたち渡るだろう。これから先、何年にもわたって」といったところ。霞によって新春を言祝(ことほ)いだ歌と言ってよいでしょう。 さてこの歌では、色で示したとおり、くら(倉)→つみ(積み)、はし(橋)→わたる(渡る)、二通りの縁語が用いられています。山の名前を、ふたつの単語に分けてしまって、それぞれに縁語を用いているわけです。言葉遊びに近いものですが、しかし決して駄洒落ではありません。 「年をつみ」の「つみ」という動詞は、初句の「くら」と関連付けられることによって、「倉にものを積む」という意味や映像を付加することになります。これは「新年を迎えるめでたさ」という一首の主題と直接は関係ありませんが、「つみ」という語の価値を高めるはたらきをします。語と語の関係を緊密にもしています。 縁語の効果に気づかないと、平凡な、面白くもなんともない歌に見えてしまいます。主題と無関係な縁語が、一首に緊張感を与えることによって、初めてこの歌は文芸作品として成り立っている、と思います。 たった三十一文字の小世界に、少しでも豊かな内容を盛り込もうと、歌人たちは色んな工夫を凝らしたわけです。 |