2 反歌へゆくまへがきへ戻る       *                                                               十八|四一二五                           言ひつぎにすれ       語り継ぎして来たのである          天の原 ふりさけ見つつ   天空を振り仰いでは          往き更はる 年の端ごとに  一年が去つてはまた訪れる度ごとに          ここをしも あやに奇しみ  これを何とも計り難く神秘なこととして          うつせみの 世の人われも  下界の人間である我らも             言問ひの ともしき子ら   言葉を交はすことさへ ままならぬ恋人たちよ          なにしかも 秋にしあらねば 何といふことであらう 秋でなければ             なぐさむる 心はあらむを  辛さを紛らはす心持ちにもなれように            思ほしき 言も語らひ    思ひのたけを語り合ひ         携さはり 項がけりゐて   寄り添つて 首に手を廻し合ひ          その上ゆも い行きわたらし その上を通つて渡つて行かれ          橋だにも 渡してあらば   せめて橋でも渡してあつたら          渡り守 舟もまうけず    渡し守は船の用意もしてくれず         息の緒に 嘆かす子ら    精も尽きんばかりに嘆息なさる恋人たち       向かひ立ち 袖ふりかはし  互ひに向かひ立ち 袖を振り交はし          安の河 中に隔てて     安の河を中に隔てて        天照らす 神の御代より   天照大神の元初の御代から            七夕の歌一首 并せて短歌