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定家著『下官集』の「嫌文字事」に挙げる仮名遣の例のうち歴史的仮名遣と異なるものを以下に挙げる。まず定家仮名遣を、その下に括弧でくくって歴史的仮名遣を掲げた。
を
をとは山(おとは山) をく露(おく露) をくる(おくる) 風のをと(風のおと)
お
おしむ(をしむ)*14 おきの葉(をきの葉)*15 おのへ(をのへ) 花をおる(花ををる)*16 おりふし(をりふし) おとこ(をとこ) おみの衣(をみの衣) おはな(をはな)
え
かえての木(かへての木) そなえり(そなへり)
へ
草木をうへをく(草木をうゑおく) たかすへ(たかすゑ)
ゐ
つゐに(つひに) 池のいゐ(池のいひ) よゐのま(よひのま) よひ又常事也 通用也 おゐぬれは(おいぬれは)おいぬれは又常事也 *17
ほ
かほる(かをる) しほるゝ(しをるゝ) *18
『拾遺愚草』自筆本(他人詠を除く)によれば、上記の外にも次のような例がある。
を
をこなふ(おこなふ) をさふる(おさふる) をしこむ(おしこむ) をしなへて(おしなへて) をそし(おそし) をこたり(おこたり) をとつる(おとつる) をとろ(おとろ) をのつから(おのつから) をのれ(おのれ) をひ(おひ) をもし(おもし) をよふ(およふ) をる(おる) をろかなり(おろかなり) とをし(とほし) なを(なほ) なをさり(なほさり)
お
おかむ(をかむ) おさむ(をさむ) おの(をの) あお(あを) *19 しおる(しをる) したりお(したりを) とおす(とほす) とおる(とほる) ひお(ひを)
へ
ゆへ(ゆゑ)
ゑ
ゆくゑ(ゆくへ)
ゐ
しゐ(しひ) しゐて(しひて) にゐ枕(にひ枕)
い
かいな(かひな) まいる(まゐる)
ひ
むくひ(むくい)
ほ
しほり(しをり)
は
あは(あわ)
う
あやうき(あやふき) はうり(はふり)
わ
そわ(そは)
また、自筆本(他人詠を除く)で混用(あるいは通用と言うべきか)の見られる仮名遣には次のような例が挙げられる(下が歴史的仮名遣と同一)。
いゑゐ・いへゐ かい・かひ きおふ・きほふ きわ・きは ことはり・ことわり さかへ・さかえ さはく・さわく さほ・さを さわ・さは とお・とを みきわ・みきは もよおす・もよほす 山をろし・山おろし よはる・よわる
なお、『拾遺愚草』自筆本等に見られる定家の仮名遣の特異な用法として、普通「を」の変体仮名とされる「越」の字を、便宜上「お」「を」いずれにも読める仮名として用いていることが挙げられる。例えば「置く」「起く」が定家仮名遣では「をく」「おく」と仮名違いになるので、この両義に掛けた掛詞を用いたい時に定家は「越」の字を宛てているのである。こうした用法は、991・1142・1345・1454・2145・2162・2469・2639などに見られる。
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公開日:平成27年03月22日
最終更新日:平成27年03月22日