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定家歌補遺

 

鳥羽殿影供歌合建仁元年四月(二五、五〇)

海辺夏月 二番 左

4572 清見かた浪の関戸のよる〳〵はあくる程なき月影そさす

忍恋 三番 右

4573 うつ蝉のはにをく露は色に出てなくねはたてし身をはかふとも

 

建仁三年六月十六日和歌所影供歌合(四〇、九五)

水路夏月 二番 右

4574 程もなしあさつま舟の追風に雲ちともなふみしか夜の月

雨後聞蝉 十二番 左

4575 風すゝしなくうつせみのからころも日もゆふたちの雲のきえかた

 

名古屋大学本拾遺愚草(二四五二)

権大納言 河辺雪

4576 あともなしこほれておつるしら雪の玉しま川の河上の里 *1

 

建保五年十一月四日歌合(二三)

十二番 冬野霰 左

4577 あまつ空たかぬく玉にをたえして霰みたるゝ野への篠原 *2

 

吉田丹左衛門氏旧蔵の自筆歌切(大日本史料)

元仁元年四月四天王寺聖霊院絵堂 九品往生人画図

詠下品上生和歌

4578 たつたかはもみちなかるゝいはまよりにしきをくゝるみつのしらなみ *3

 

自筆和歌懐紙

元仁元年四月四天王寺聖霊院絵堂 九品往生人画図

詠下品上生和歌

4578 たちかへる夢のたゝちにをしへおくうてなのはなのすゑのうはつゆ

 

閑月和歌集(五〇〇、五〇一)

廿八品の詩をつくりて哥をそへ侍中に常在霊鷲山

4579 わしのやまむかしのかけはかはれとも月こそあきをわすれさりけれ

唯独自明了 餘人所不見

4580 たれかしるちさとのくものほかまてもこころの月のとをきひかりを

 

蔵月和歌鈔

碧玉 残月掛峰

(4581) 雲こりし嶺の松かえさやイかにて秋風たかく残る月影 *4

 

同名歌枕名寄抄(一三五五)

峯 山城

4582 暮て行秋やかなしき嵐ふく小松か峯に鹿の鳴也 *5

 

定家卿枕屏風秘歌二十首

(4583) 月といへはやとる影まて待物を露吹くれの野への秋風 *6

4584 木のはにも思ふみ山の住居哉しくるゝ月のみしかよの空

 

軸物之和歌 *7

新古今時代 和歌五十二首

4585 あしかきの松にはつるゝむめのはなゆくてのはるをみてやすきなん

4586 とりのこゑ草のいろにはとゝまれとかつゆく水に花はちりつゝ

4587 み吉野ゝ吉野ゝやまのやまさくらいくよのはるをにほひきぬらん

4588 みてもなをあかすもあるかな花さかりをはつせやまのあけほのゝそら

4589 ゆくゑなくちりしく花をうらみても猶雲ふかき鳥のかへるさ

4590 たちとまるしたかけすゝしゆふたちのふるかはのへのふたもとの杉

4591 ひとりのみおもひくらしのこゑたママてあかすわかれし秋はきにけり

4592 世中はこのかりいほにまさるとてきくもはけしき山おろしの風

 

六花和歌集(七五、四一〇、九一一、一三六三、一七八三、一八九七)

4593 難波江やあし間の月のおほろ舟霞にまかふ春の明ほの

4594 五月雨に海と成ては天川ほしのやとりやあまのいさり火

(4595) かきとむる詞のうみのかひそなき紅葉の舟も秋は過けり *8

4596 月ならてあまの河原のこほる夜やをなし雲まの鏡なる覧

4597 うつもれぬ身は後のなもかひもなしある世に苔のしたにくちなは

4598 まれにあふのりのもろ人あふきまつママしの高根に月そいさよふ

 

和歌秘抄 *9

建保二九三当座

暮秋同詠二首応 製倭歌

参議従三位行侍従臣藤原朝臣〻〻上

  暁山

  夜恋

4599 たまほこやさゝわけしあさにぬれまさるいく夜のつゆにそてかくちなむ

 

     (建仁二)

同年当座

九月十三夜侍

太上皇水無瀬院詠三首応

          製和歌

4600 ゆくみつもしからみかけて秋の夜はみなせかはやは月もよとまん

 

夏夜詠二首応 製和歌

 月令夏月云〻

4601 春の花をうらみしかけのはをしけみ月もうつろふよのほとそなき

 

正治二年石清水若宮歌合(二二、八八、一五四、二二〇、二八六)

十一番 右勝 桜

4602 山さくらさくや弥生の春かすみたゝまくおしきよもの木のもと

十一番 右勝 郭公

4603 ほとゝきすありとなゝきそ橘はむかしをしれる袖のにほひそ

十一番 右

4604 神もわきて照月かけを契れはや秋のなかはにみ山出らん

十一番 右

4605 すくやともしらぬ月日を色に出てことしもふかくつもる雪哉

十一番 右勝 祝

4606 久方のそらゆく月日もろともに照さむ程は御代もつきせし

 

反古懐紙 *10

頭カ

4607 神かきや秋にはあへぬくすのははけさママくしもにふりやはてなん

 

建暦三年八月七日内裏哥合(二三)

十二番 左 野夕風

4608 ゆふされははきのしたつゆふくかせのあまりてそむるをのゝしのはら

 

雲葉和歌集(九二九)

大嘗会御屏風歌に *11

  玉かつらきよくみせんと神山の豊のあかりの月もくもらす

 

沙石集拾遺 異本歌(一八一) *12

  春の苗代秋のかりほのそめきまてくるしく見ゆるしつのをたまき

(古活字本巻九、一〇九の次)

 

夫木和歌抄(九六二三、九九四七、一一四四一)

家集

  雲葉

  かはらしな三わのひはらのをのれのみ人のしくれはあきふかくとも

浦(くまのにまゐりける時)

  浜木

  わかのうらにうちいててみれはあはママしま月になみこすやへのしほかせ

 

三百六十首和歌(二三)

春 正月中旬

  竿姫の遠山まゆのうす墨にかすむ柳のはるの面かけ *13

 

蔵玉和歌集(一一九、一二五、一三〇、一三五、一四〇、一四六、一五〇、一五四)

正 初空月 霜初月 初春月

  今日も猶山かせ寒みふる雪のその名はかりや霞む初月

三 花見月 桜月 春惜月

  なへて今盛とみえて桜月うすくもりなる四方の山のは

五 賤男染月 月不見月 橘月 吹喜月

  いかゝして菅のを笠をさして行むしつをイの空の五月雨の頃

六 風待月 鳴電月 常夏月

  夏雨はなをはれやらてイなる神の月にも成ぬ夏や暮らん

八 秋風月 月見月 紅染月

  萩イの葉に露ふきみたす音よりや身にしみそめし秋かせの月

十 時雨月 拾月 初霜月

  ちりはてし木のはの後のしくれ月冬のはしめに何を染まし

十一 霜降月 神無月 霜見月

  しらきて四方の宮居の神楽月立榊はの音のさやけさ

十二 春待月 梅初月 三冬月

  豊なる時そとみえて三冬月いそかにつもる雪ののとけさ

 

題林愚抄(四〇七五)

野径月明

  荻原やのへより野へにうつり行く衣てしたふ霜の月かけ

 

  参照文献

建仁元年影供歌合    古典文庫140

建仁三年六月影供歌合  〃

名古屋大学本拾遺愚草  同本写真版(ウェブ公開)

建保五年十一月内裏歌合 群書類従一九七

閑月和歌集       古典文庫410

六花和歌集       〃303

雲葉和歌集       群書類従一五二

夫木和歌抄       作者分類夫木和歌抄本文篇

蔵玉和歌集       群書類従二九〇


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公開日:平成270322
最終更新日:平成270322

やまとうた表紙 拾遺愚草資料集