大舎人部千文 おおとねりべのちふみ 生没年未詳

常陸国那賀(なか)郡の人。上丁(かみつよほろ)。天平勝宝七歳(755)二月、防人として筑紫に派遣される。

 

筑波嶺(つくはね)早百合(さゆる)の花の夜床(ゆとこ)にも(かな)しけ妹そ昼も愛しけ(万20-4369)

【通釈】筑波嶺に咲く小百合の花のように可愛い人よ――夜の床でも愛しかったけれど、昼の間も愛しくてならない。

【補記】筑波嶺は筑波山。歌枕紀行参照。「早百合(さゆる)の花の」までが同音ユから「夜床(ゆとこ)にも」を導く序詞。

 

(あられ)降り鹿島の神を祈りつつ皇御軍(すめらみいくさ)に我は来にしを(万20-4370)

【通釈】鹿島の神に祈りを捧げつつ、天皇の軍隊の一員として、私はとうとう無事難波までやって来たのだなあ。

【語釈】◇霰降り 鹿島の枕詞。掛かり方は未詳だが、霰の音から「かしまし」の意でかけたとも言う。◇鹿島の神 鹿島神宮。歌枕紀行参照。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日