駿河采女 するがのうねめ 生没年未詳

伝不詳。駿河出身の采女。万葉集巻四・八に各一首の歌を残す。万葉集の排列からすると天武・持統朝頃の人か。

駿河采女の歌一首

敷栲(しきたへ)の枕ゆ(くく)る涙にぞ浮寝をしける恋の繁きに(万4-507)

【通釈】枕をつたって漏れ流れる涙で、波のまにまに漂う辛い浮寝をしました、絶え間ない恋しさのために。

【語釈】◇敷栲の 「枕」の枕詞。原文は「敷細乃」。◇浮寝 波の上に浮き漂う眠り。「憂き寝」の意が掛かる。原文は「浮宿」。

【補記】船上で寝ることを意味した「浮寝」を、涙の流れる床の上での「憂き寝」に転じた。後世、王朝和歌の閨怨歌で多用される趣向の先駆け。

【他出】古今和歌六帖、和歌童蒙抄、秋風集、夫木和歌抄、新千載集

【主な派生歌】
涙川枕ながるるうき寝には夢もさだかに見えずぞありける(よみ人しらず[古今])

駿河采女の歌一首

沫雪(あわゆき)かはだれに降ると見るまでに流らへ散るは何の花ぞも(万8-1420)

【通釈】沫雪がはらはらと降るかと見えるばかりに、流れるように散り続けるのは何の花だろうか。

【語釈】◇はだれ 雪がはらはらと散るさま。

【補記】散り続ける花を雪に譬える。この花は白梅と見て間違いない。

【主な派生歌】
うちわたすをち方人に物申す我そのそこに白く咲けるはなにの花ぞも(よみ人しらず[古今])


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成21年08月09日