河内 こうち 生没年未詳 別称:前斎宮河内・百合花

大蔵大輔従五位上藤原永相の娘。永縁僧正の妹。前斎宮俊子内親王(後三条天皇皇女)に仕える。長治二年(1105)か翌年頃、堀河百首に詠進。金葉集初出。勅撰入集七首(重出歌を含む)。

堀川院の御時、百首の歌奉りけるとき、春の暮をよめる

けふ暮れぬ花の散りしもかくぞありしふたたび春は物を思ふよ(千載135)

【通釈】春は今日で暮れてしまった。花が散った時もこんな思いをしたことよ。春は二度も物思いをするものなのだなあ。

【語釈】◇けふ暮れぬ 「今日という一日が暮れた」「春という季節が今日過ぎ去った」の両義。初句切れ。◇かくぞありし このようであった。ここで再び句切れ。

【補記】長治二年(1105)頃の堀河百首に詠進した歌。

堀河院御時百首歌に、五月雨

さみだれは入江の真菰かりにこし渡りもみえずなりにけるかな(新拾遺260)

【通釈】梅雨の季節は水嵩が増して、以前入江の真菰を刈りに来たあたりも、すっかり隠れるほどになってしまったなあ。

【語釈】◇さみだれ 陰暦五月頃に降る長雨。梅雨。◇真菰(まこも) 浅い水中に群生するイネ科の多年草。刈り取った葉を編んで筵にした。種子は食用。◇かりにこし 刈りに来た。「渡り」に掛かる。◇渡り あたり。

【補記】梅雨入り前に真菰を狩りに来たあたりが、今は草も見えないほど増水している。堀河百首。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日