家持拾遺 私撰集収録歌 のべ253首

『新編国歌大観』所収の私撰集(「百人一首」などの秀歌撰を含む)に大伴家持の作として載る歌を、管見に入る限り(というか検索し得た限り)すべて掲載した。
歌の本文は原則的に『新編国歌大観』(角川書店発行)に拠る。但し『古今和歌六帖』については、校註国歌大系(国民図書発行)も参照し、補足した。
歌の末尾に新編国歌大観番号を付した。
典拠と思われる歌を【出典】として示した。「万」は万葉集、「家」は家持集の略である。万葉集の歌の番号は巻数と旧国歌大観番号を示し、家持集の歌の番号は『波流能由伎』に収録した家持集に付した番号を示している。
出典歌との間で本文の異同が甚だしいときは、当該出典歌を引用して比較できるようにした。万葉集の歌は『萬葉集本文篇』(塙書房)を用い、その他の歌は新編国歌大観を用いた。
万葉集の原歌と思われる歌は【原歌】として示した。
【他出】として主な他出文献名を記載した。


古今和歌六帖古今和歌六帖(補足)麗花集金玉集深窓秘抄三十人撰三十六人撰俊成三十六人歌合定家八代抄時代不同歌合百人秀歌百人一首万代集秋風集雲葉集夫木和歌抄高良玉垂宮神秘書紙背和歌六華集三百六十首和歌題林愚抄別本和漢兼作集



古今和歌六帖 50首

のこりのゆき          やかもち

春の日に霞たなびきうらがなしこのゆふかげに鴬なくも(24)

【出典】万19-4290(初句は「春野尓」)
【補記】この歌は「のこりのゆき」の部類に入るが、本来は「鴬」の部にあるべきところ。


子日              大伴やかもち

はつ春のはつねのけふの玉ばはき手にとるからにゆらく玉のを(36)

【出典】万20-4493 【他出】新古今集708(読人不知)・古来風躰抄(作者不明記)・定家八代抄(読人不知)・夫木抄・六華集(作者不明記)・三百六十首和歌・歌林良材


あをむま            やかもち

水鳥のかものはいろのあをき馬をけふくる人はかぎりなしてふ(50)

【出典】万20-4494 【他出】六華集・三百六十首和歌(作者不明記)


家持宅宴三月三日        やかもち

から人の舟をうかべてあそびけるけふぞわがせこ花かづらせよ(60)

【出典】万19-4153 【他出】新古今集151・新撰朗詠集・夫木抄・定家十体・六華集・題林愚抄・三百六十首和歌・別本和漢兼作集


しはす             やかもち

荒玉のとしゆきかへり春たたば先我が宿に鴬はなけ(232)

【出典】万20-4490 【他出】続後拾遺集498・三十人撰・三十六人撰・夫木抄


みか月             やかもち

ふりあふぎてみか月見ればひとめ見し人のまゆひきおもほゆるかも(352)

【出典】万6-994 【他出】高良玉垂宮神秘書紙背和歌(作者不明記)


つゆ              やかもち

白露をとればけぬべしいざとらじ露ふきそひてはぎのあそびせん(545)

【出典】万10-2173(作者不明) 【他出】古本人丸集・夫木抄(読人不知)


                やかもち

秋萩における白露あさなあさなたまとぞ見ゆるおける白露(555)

【出典】万10-2168(作者不明) 【他出】人丸集


やまびこ            やかもち

山びこのあひとよむまでつまごひにしかなく山にひとりのみして(1000)

【出典】万8-1602


やしろ             やかもち

あめつちの神をねぎつつわがこふる君にかならずあはざらんやは(1069)

【出典】万13-3287(作者不明)


かり              やかもち

ますらをのよびたてしかばさをしかのむなわけ行くぞ秋の萩はら(1162)

【出典】万20-4320


きじ              やかもち

すすきのにさをどるきぎすいちしるくなきしもなかむこもりづまはも(1182)

【出典】万19-4148 【他出】夫木和歌抄・五代集歌枕・歌枕名寄
【補記】校註国歌大系は作者名なし。なお次の「あしひきのやまをのきぎすなきとよむあさけのすがたみればかなしも」(1183)も万葉集によれば家持の歌である。


うづら             やかもち

うづら鳴くふるきさとよりおもへどもなにそもいもにあふよしもなき(1190)

【出典】万4-775 【他出】夫木和歌抄


こたかがり           やかもち

おもひいでてこひしくもあるかあはづのの小萩が下にわがゆきしかり(1200)

【出典】不明。夫木和歌抄には伊勢作として載る。「おもひいでてこひしくもあるかあはづののこはぎがもとにわれ行くしかり」(4143)。


井               やかもち

わがやどの板井の清水里とほみ人しくまねば水草おひにけり(1340)

【他出】古今1079(「神あそびの歌」作者不明)
【補記】もと歌は、古くから口誦により伝わった神楽歌である。


まがき             やかもち

うつたへにまがきのすがたみまほしみゆくとはいもをみにこそきつれ(1353)

【出典】万4-778


おむな             やかもち

ももとせにおいくちひそみなりぬともわれはわすれずこひやますとも(1409)

【出典】万4-764「百年尓 老舌出而 與余牟友 吾者不〓 戀者益友」ももとせに おいしたいでて よよむとも あれはいとはじ こひはますとも


うなゐ             やかもち

さねかづらいまするいもがうらわかみゑみみいかりみきつつひもとく(1417)

【出典】万11-2627「波祢蘰 今爲妹之 浦若見 咲見慍見 著四紐解」はねかづら いまするいもが うらわかみ ゑみみいかりみ つけしひもとく(作者不明)
【参考】万4-705「葉根蘰 今爲妹乎 夢見而 情内二 戀渡鴨」はねかづら いまするいもを いめにみて こころのうちに こひわたるかも(大伴家持)
【他出】夫木和歌抄(読人不知)
【補記】校註国歌大系本では「読人しらず」。


う               やかもち

年ごとにあゆしはしればさはた川うやつかづけて川瀬たづねん(1506)

【出典】万19-4158 【他出】夫木和歌抄


せ               やかもち

千鳥鳴くさほの川せのせをひろみこまうちわたしいつかかよはん(1741)

【出典】万4-715 【他出】新勅撰集1274・歌枕名寄


こひ              やかもちある本

こひしなんそれもおなじななにせんに人め人事ふたみわがせん(2003)

【出典】万4-748
【補記】このあと「おもひたえわびにしものをなかなかになににすべなくあひみそめけん」(2004)、「あひ見てはいくかもへぬをいかばかりくるひにくるひおもほゆるかも」(2006)と万葉集出典の家持歌が続くが、古今六帖は作者名を記していない。


こひ              やかもちイ

あひ見てはしばしはこひはなぎなんをおもへどいよいよこひまさりけり(2007)

【出典】万4-753
【補記】続く「よのほどもいでつつくらくあまたたびなれはわがむねいりやくがごと」(2008)も万葉集4-755に家持作とある歌が出典。


おもかげ        かさの女らうやかもちともある本

かくばかりおもかげにのみおもほえばいかにかもせん人めしげくて(2073)

【出典】万4-752(「大伴宿祢家持贈坂上大孃歌十五首」)


しめ              やかもち

あしひきのいはねをきよみすがのねをひけばかたしとしめのみぞゆふ(2599)

【出典】万3-414 【他出】夫木和歌抄


                やかもち

きみににるくさと見しより我がしめしのやまのあさぢ人なかりそね(2603)

【出典】万7-1347(作者不明) 【他出】夫木和歌抄


                やかもち

すみの江のはままつがねをしめはへてわが身しをののくさなかりそね(2609)

【出典】万20-4457


人にしらるる          やかもち

こもりえのしたにこひあさりしらなみのいちしろくいでぬ人のしるべく(2686)

【出典】万12-3023「隠沼乃 下從戀餘 白浪之 灼然出 人之可知」こもりぬの したゆこひあまり しらなみの いちしろくいでぬ ひとのしるべく(作者不明)・万17-3935「許母利奴能 之多由孤悲安麻里 志良奈美能 伊知之路久伊泥奴 比登乃師流倍久」こもりぬの したゆこひあまり しらなみの いちしろくいでぬ ひとのしるべく(平群氏女郎)


とほみちへだてる        やかもち

あしひきのやまかぜふきてとほけれどこころしゆけばゆめにみえけり(2788)

【出典】万17-3981 【他出】秋風集


うちきてあへる         やかもち

きみがいへのかどたをみんといでてこし心もしるくあへる君かも(2797)

【出典】万8-1596 【他出】家150


いへとじをおもふ        やかもち

ひとり山かさなるものを月よよみかどにたちいでていもやまつらん(2988)

【出典】万4-765


おもひやす           やかもち

ひとへのみいもがむすばんおびを猶みへにゆふべくなりぬわが身は(2997)

【出典】万4-742 【他出】歌林良材


わぎもこ            やかもち

おもはずにいもがゑまひをゆめにみてこころのうちにこふるこのごろ(3082)

【出典】万4-718


たまかづら           やかもち

わぎもこがはかとつくれるあきのたのはつほのかづらみれどあかぬかも(3163)

【出典】万8-1625 【他出】夫木和歌抄


おび              やかもち

いにしへのしづはたおびをむすびたれたれといふとも君にはまさじ(3361)

【出典】万11-2628(作者不明) 【他出】夫木和歌抄


なでしこ            やかもち

わがやどのなでしこの花さきにけりたをりて人にみせんこもがも(3617)

【出典】万8-1496 【他出】新続古今集318・題林愚抄


                やかもち

わがやどにさきしなでしこいつしかも花にさかなんよそへつつみん(3618)

【出典】万8-1448 【他出】後撰集199「わがやどのかきねにうゑしなでしこは花にさかなんよそへつつ見む」(読人しらず)
【補記】このあとの二首「わがやどのなでしこの花ちらめやはいやはつはなの咲きまさるとも」(3619)、「なでしこのその花にもかあしるあしるてにをり持ちてこふるひなけん」(3620)も作者名はないが家持の万葉歌である(それぞれ出典は万20-4450・万3-408)。


女のつらきにやれる       やかもち

わがやどのはぎの花咲く夕日影いたしていもをみるよしもがな(3636)

【出典】万8-1622「吾屋戸乃 秋之芽子開 夕影尓 今毛見師香 妹之光儀乎」わがやどの あきのはぎさく ゆふかげに いまもみてしか いもがすがたを(大伴田村大嬢)


                やかもち

わがやどのひとむらはぎをおもふこにみせでほとほとちらしつるかも(3637)

【出典】万8-1565


はちす             やかもち

ひさかたのあめもふらぬかはちすばにたまれる水のたまににむみん(3791)

【出典】万16-3837(右兵衛 姓名未詳)
【補記】校註国歌大系は作者名なし。


あさがほ            やかもち

かすが野ののべのあさがほおも影にみえつついもはわすれかねつも(3894)

【出典】万8-1630(初二句は「高圓之 野邊乃容花」) 【他出】夫木和歌抄(躬恒)・五代集歌枕・歌枕名寄
【参考】伊勢集「かすがののなかのあさがほおもかげにみえつついまもわすられなくに」(伊勢集に混入した古歌かとも言われる)


たけ              やかもち

我がやどのいささむら竹ふく風におとのさやけき此ゆふべかな(4116)

【出典】万19-4291 【他出】夫木和歌抄(よみ人しらず)


むめ              やかもち

さかづきにむめのはなうけおもふどちのみての後はちりぬともよし(4145)

【出典】万8-1656(大伴坂上郎女) 【他出】夫木和歌抄(坂上郎女)
【補記】校註国歌大系は作者「坂上郎女」とする。


たちばな            やかもち

もとくたちきよき月よにわぎもこがみせんと思ひしやどのたちばな(4254)

【出典】万8-1508


すもも             やかもち

我がそののすもものはなかにはにちるはだれのいまだ残りたるかも(4272)

【出典】万19-4140 【他出】古来風躰抄・六華集・歌林良材


つばき             やかもち

おく山の八重をのつばきつばらかにけふはくらさねますらをの友(4300)

【出典】万19-4152


                おなじ

あしひきのやへらのつばきつらつらにみともあかめやうゑてけるきみ(4301)

【出典】万20-4481


かたかし            やかもち

もののふのやそをとめらがふみとよむてらゐのうへのかたかしのはな(4326)

【出典】万19-4143


つまま             おなじ

岩のうへのつままをみればねをはひてとしふかくらしかみさびにけり(4327)

【出典】万19-4159


さねき             おなじ

あをやぎのさねきのはなはいまもかも君みだるらん見る人なしに(4328)

【出典】万10-1867「阿保山之 佐宿木花者 今日毛鴨 散乱 見人無二」あほやまの さくらのはなは けふもかも ちりみだるらむ みるひとなしに(作者不明)
【参考】赤人集「あの山のさくらのはなはけふもかもちりみだるらんみる人なしに」


かり              やかもち

ひさかたのあまぐもおかずくもがくれ鳴きぞ行くなるはつた雁がね(4360)

【出典】万8-1566「久堅之 雨間毛不置 雲隠 鳴曾去奈流 早田鴈之哭」ひさかたの あままもおかず くもがくり なきぞゆくなる わさだかりがね



古今和歌六帖(補足) 古今和歌六帖評註本より 5首
新編国歌大系(底本は書陵部蔵桂宮旧蔵本)では作者を家持としないが、
校註国歌大系(底本は古今和歌六帖評註)では家持の名を記している歌。
歌は校註国歌大系より引用したが、()内の数字は新編国歌大観番号である。


のこりの雪           家持

打ち霧らし雪は降りつつしかすがに我家(わぎへ)の園に鴬ぞ鳴く(23)

【出典】万8-1441 【他出】後撰集33(読人不知)・拾遺集11・夫木抄・秀歌大躰・定家八代抄
【補記】新編国歌大観では作者名「あか人」。


みなと             家持

湊風いたく吹くらしなごの江に妻呼び交したづ騒ぐ見ゆ(1967)

【出典】万17-4018 【他出】続古今集1635・夫木抄・秋風集・五代集歌枕・歌枕名寄


ひとりね            家持

沫雪の庭に降りしき寒き夜を手枕まかで独りかも寝む(2701)

【出典】万8-1663 【他出】新拾遺集655


ひかげ             家持

足曳の山下日陰かづらける上にや更に梅を忍ばむ(3930)

【出典】万19-4278 【他出】新勅撰集1110・題林愚抄


ほほがしは           家持

すべらぎの遠きみよみよはやふせり酒飲むと言ふぞこのほほ柏(4306)

【出典】万19-4204(僧恵行)



麗花集 2首

                家持中納言

さをしかのあさたつをののはぎはらに花と見るまでおけるしらつゆ(51)

【出典】万8-1598 【他出】新古今集334・三十六人撰・秀歌大躰・定家八代抄・別本和漢兼作集


             大とものやかもち

かしはぎのもりのしたこそこひしけれそのこまほしきほどのへぬれば(103)

【出典】不明



金玉集 1首

                中納言家持

はるののにあさるきぎすのつまごひにおのがありかを人にしれつつ(18)

【出典】万8-1446または古今六帖 【他出】拾遺集21・深窓秘抄・三十人撰・三十六人撰・赤人集・定家八代抄



深窓秘抄 1首

                やかもち

はるののにあさるきぎすのつまごひにおのがありかをひとにしれつつ(22)

【出典】万8-1446または古今六帖 【他出】拾遺集21・金玉集・三十人撰・三十六人撰・赤人集・定家八代抄



三十人撰 3首

家持中納言三首

はるののにあさるきぎすのつまごひにおのがありかをひとにしれつつ(47)

【出典】万8-1446または古今六帖 【他出】拾遺集21・金玉集・深窓秘抄・三十六人撰・赤人集・定家八代抄


さをしかのあさたつをののあきはぎにたまとみるまでおけるしらつゆ(48)

【出典】万8-1598 【他出】新古今集334・麗花集・三十六人撰・秀歌大躰・定家八代抄・別本和漢兼作集


あらたまのとしゆきかへりはるたたばまづわがやどにうぐひすはなけ(49)

【出典】万20-4490または古今六帖 【他出】続後拾遺集498・三十六人撰・夫木抄



三十六人撰 3首

家持

あらたまのとしゆきかへる春たたばまづわがやどにうぐひすはなけ(41)

【出典】万20-4490または古今六帖 【他出】続後拾遺集498・三十人撰・夫木抄


さをしかのあさたつをのの秋はぎにたまとみるまでおけるしらつゆ(42)

【出典】万8-1598【他出】新古今集334・麗花集・三十人撰・秀歌大躰・定家八代抄・別本和漢兼作集


春ののにあさるきぎすのつまごひにおのがありかを人にしれつつ(43)

【出典】万8-1446または古今六帖 【他出】拾遺集21・金玉集・深窓秘抄・三十人撰・赤人集・定家八代抄



俊成三十六人歌合 3首

左               中納言家持

まきもくの檜ばらもいまだくもらねば小松がはらにあわ雪ぞふる(13)

【出典】家224 【原歌】万10-2314 【他出】新古今集20・古今六帖・時代不同歌合・夫木抄・雲玉集・歌枕名寄


かささぎのわたせるはしにおく霜のしろきをみれば夜ぞふけにける(14)

【出典】家257 【他出】新古今集620・定家八代抄・秀歌大躰・時代不同歌合・百人秀歌・百人一首・別本和漢兼作集・題林愚抄


神なびのみむろの山のくずかづらうら吹きかへす秋はきにけり(15)

【出典】家98 【他出】新古今集285・秀歌大躰・時代不同歌合・歌枕名寄



定家八代抄 7首

題不知             中納言家持

春の野にあさるきぎすの妻ごひにおのがありかを人にしれつつ(38)

【出典】拾遺集21 【原歌】万8-1446 【他出】金玉集・深窓秘抄・三十人撰・三十六人撰・赤人集


題不知             中納言家持

ゆかん人こむ人しのべ春がすみたつ田の山の初さくら花(89)

【出典】新古今集85 【原歌】家56 【他出】歌枕名寄


題不知             中納言家持

さをしかの朝たつ野べの秋萩に玉とみるまでおける白露(329)

【出典】新古今集334 【原歌】万8-1598 【他出】麗花集・三十六人撰・秀歌大躰・別本和漢兼作集


題不知             中納言家持

わがやどのを花が末に白露のおきし日よりぞ秋風も吹く(356)

【出典】新古今集462 【原歌】家176


題不知             中納言家持

かささぎのわたせる橋に置く霜の白きをみれば夜ぞ更けにける(518)

【出典】新古今集620 【原歌】家257 【他出】俊成三十六人歌合・定家八代抄・秀歌大躰・百人秀歌・百人一首・別本和漢兼作集・題林愚抄


題不知             中納言家持

足曳の山のかげ草結びおきて恋ひやわたらんあふよしをなみ(859)

【出典】新古今集1213 【原歌】家282


題不知             中納言家持

秋萩のえだもとををにおく露のけさ消えぬとも色に出でめや(1004)

【出典】新古今集1025 【原歌】万8-1595



時代不同歌合 3首

七番 左             中納言家持

真木もくのひばらもいまだくもらぬにこまつがはらにあは雪ぞふる(13)

【出典】家224/新古今集21(第三句「くもらねば」) 【原歌】万10-2314 【他出】古今六帖・夫木抄・俊成三十六人歌合・雲玉集・歌枕名寄


八番 左

神なびのみむろの山のくずかづらうら吹きかへすあきは来にけり(15)

【出典】家98/新古今集285 【他出】俊成三十六人歌合・秀歌大躰・歌枕名寄


九番 左

かささぎのわたせるはしにおく霜のしろきをみれば夜ぞふけにける(17)

【出典】家257/新古今集620 【他出】俊成三十六人歌合・定家八代抄・秀歌大躰・百人秀歌・百人一首・別本和漢兼作集・題林愚抄



百人秀歌 1首

                中納言家持

かささぎのわたせるはしにおくしものしろきをみればよぞ更けにける(5)

【出典】新古今集620 【他出】家257・俊成三十六人歌合・定家八代抄・秀歌大躰・百人一首・別本和漢兼作集・題林愚抄



百人一首 1首

                中納言家持

かささぎのわたせるはしにおく霜のしろきをみれば夜ぞふけにける(6)

【出典】新古今集620 【他出】家257・俊成三十六人歌合・定家八代抄・秀歌大躰・百人秀歌・別本和漢兼作集・題林愚抄



万代集 8首

題しらず            中納言家持

梅花ちりにし日よりしきたへのまくらもわれはさだめかねつも(137)

【出典】家47 【他出】続後拾遺集51


七夕の心を           中納言家持

あまのがはかはせのなみのうちはへてわがたちまちしけふはきにけり(797)

【出典】家165 【他出】万代集・続後拾遺集246(山辺赤人)


題不知             中納言家持

あきかぜはよごとにふきぬたかさごのをのへのはぎのちらまくをしも(854)

【出典】家179 【原歌】万10-2121(作者不明) 【他出】新続古今409


題しらず            中納言家持

あきのよのにはのしらつゆけさ見ればたまやしけるとおどろかれつつ(918)

【出典】家175 【原歌?】忠岑集「あきのののはぎのしらつゆけさみればたまやしけるとおどろかれつつ」 【他出】後撰集309(壬生忠岑)


題不知             中納言家持

ふくかぜにちるだにをしきさほやまのもみぢこきたれしぐれさへふる(1326)

【出典】家254 【他出】新続古今集553・歌枕名寄


題不知             中納言家持

はるをまつむめのたちえにふるゆきは人だのめなるはなにぞ有りける(1520)

【出典】家259


題不知             中納言家持

わかれゆくふゆのかたみはしろかみにふりおけるゆきのきえぬなりけり(1533)

【出典】家260(第三句「くろかみに」)


恋歌中に            中納言家持

いまさらにまつひとこめやあまのはらふりさけ見ればよもふけにけり(2105)

【出典】家246 【他出】続後撰集807・別本和漢兼作集



秋風和歌集 8首

やなぎをよみ侍りける    中納言やかもち

青柳のいとよりかけて春かぜにみだれぬさきをみむ人もがな(48)

【出典】家28 【原歌】万10-1851(作者不明記) 【他出】続後撰集46


あきたつ日よみはべりける  中納言やかもち

ときはいまはあきぞとおもへば衣手に吹きくるかぜのしるくもあるかな(230)

【出典】家145 【他出】続古今集284・別本和漢兼作集


だいしらず              家持

はぎのはな色づく秋をいたづらにあまたかぞへてとしぞへにける(359)

【出典】家207 【原歌?】貫之集「萩の葉の色づく秋をいたづらにあまたかぞへて過しつるかな」 【他出】後撰集301「秋はぎの色づく秋を徒にあまたかぞへて老いぞしにける」(つらゆき)・風雅集1284「萩の葉のいろづく秋をいたづらにあまたかぞへてすぐしつるかな」(貫之)


だいしらず            やかもち

あしびきの山辺におりて秋風のひごとにふけばいもをしぞ思ふ(781)

【出典】万8-1632 【他出】玉葉集1637


だいしらず            やかもち

あしびきの山風ふきてとほけれど心しゆけば夢にみえけり(829)

【出典】古今六帖 【原歌】万17-3981


だいしらず         中納言やかもち

家おもふといもねずをればたづがなくあしべも見えず春のかすみに(1007)

【出典】万20-4400


だいしらず         中納言やかもち

みなと風さむく吹くらしなごの江につまごひかはしたづさわぐなり(1147)

【出典】万17-4018 【他出】続古今集1635・古今六帖・夫木抄・五代集歌枕・歌枕名寄


をんなのおもひにてよみはべりける
               中納言やかもち

うつせみのよはつねなしとしるものをあきかぜさむみ忍びつるかな(1310)

【出典】万3-465 【他出】玉葉集2424・古今六帖(作者不明記)・別本和漢兼作集



雲葉和歌集 4首

題不知             中納言家持

うばたまのよはふけぬらしたまくしげふたかみやまに月かたぶきぬ(619)

【出典】万17-3955(土師宿祢道良作) 【他出】続古今集429・歌枕名寄


題不知             中納言家持

ひさぎおふるかはらのちどり鳴くなへにいもがりゆけばつきわたるみゆ(794)

【出典】不明 【他出】新拾遺集697・夫木抄・新々百人一首


冬の歌とて           中納言家持

あすかがは川おとたかしうばたまのよかぜをさむみゆきぞふるらん(838)

【出典】家245 【他出】続千載集660


だいしらず           中納言家持

ふなでするおきつしほさゐしろたへのはしゐのわたりなみたかく見ゆ(935)

【出典】不明 【他出】続古今集928・夫木抄・歌枕名寄



夫木和歌抄 132首

歳内立春
 家集 春歌中 万廿      中納言家持卿

月よめばいまだ冬なりしかすがに霞たな引く春はき(立或本)ぬとか(19)

【出典】家1・万20-4492 【他出】能因歌枕(作者不明記)


初春
 題不知 万十七        中納言家持卿

三冬つぎ春はきたれど梅の花君にしあらねばをる人もなし(101)

【出典】万17-3901(大伴書持)


 天平勝宝二年正月五日作云云 万十八   同

むつき立つ春のはじめにかくしつつあひしゑみてばときじけめやも(102)

【出典】万18-4137


子日
 題不知 万廿         中納言家持卿

初春のはつ子のけふの玉ばはき手にとるからにゆらく玉のを(162)

【出典】万20-4493 【他出】新古今集708(読人不知)・古今六帖・古来風躰抄(作者不明記)・定家八代抄(読人不知)・六華集(作者不明記)・三百六十首和歌・歌林良材



 鴬 万八           中納言家持卿

うちきらし雪はふりつつしかすがにわが家のそのにうぐひすなくも(375)

【出典】万8-1441 【他出】後撰集33(読人不知)・拾遺集11・古今六帖・秀歌大躰・定家八代抄


 天平五年正月十一日詠雪 万十九  中納言家持卿

みそのふの竹のはやしにうぐひすはしばなきにしを雪はふりつつ(459)

【出典】万19-4286



 梅歌中 万八         中納言家持卿

ひきよらでをらば折るべし梅のはな袖にこきいれつそまばそむとも(661)

【出典】万8-1644(三野連石守)


 題不知 万八         中納言家持卿

うらわかみ花咲きがたき梅をうゑてひとのことしげみ思ひぞわがする(664)

【出典】万4-788 【補記】「万八」とあるのは誤り。


 同 万十七          中納言家持卿

みそのふのももきの梅の散る花のあめにとびあがり雪とふりなむ(666)

【出典】万17-3906(大伴書持) 【他出】六華集(作者不明記)


 家集 春歌中         同

淡雪にむらさきだてる梅の花君しわたらばよそへてもみむ(667)

【出典】家9 【原歌】万8-1641(角朝臣廣辨)


 同              同

雪さむみさきもひらけぬ梅の花さまれにこくはかくてあらなん(668)

【出典】家51 【原歌】万10-2329(作者不明記)


 同              同

しろ髪に咲きまどはせる花の色をそれなん梅と人はわかなむ(669)

【出典】家48


 同              同

春の野に鳴くやうぐひすなつけんとわがいへのそのに梅のはなさく(670)

【出典】家16 【原歌】万5-837(志氏大道)


 同 万五           同

風まじり雪はふるともみになさず我がいへの梅を花にちらすな(671)

【出典】家50 【原歌】万8-1445(大伴坂上郎女)
【補記】「万五」は誤り。八が正しい。


 同 万五           同

花やなぎかつしきをりし梅の花誰かは植ゑしさかづきのうへに(672)

【出典】家62 【原歌】万5-840(村氏彼方)



 家集 春歌中         中納言家持卿

わが宿のまどの青柳風ふけばをる人なしにぬきみだるいと(748)

【出典】家52 【他出】夫木抄



 帰雁を 万十九        中納言家持卿

つばめくる時に成りぬとかりがねはふるさとおもひて雲がくれ行く(1052)

【出典】万19-4144 【他出】古今六帖「つばめくるときに成りぬとかりがねはふるさとこひてくもがくれなく」(作者不明記)



 題しらず 万廿        中納言家持卿

桜花今盛なり難波のうみおしてる宮にきこしめすなへ(1301)

【出典】万20-4361 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


帰雁
 帰雁を詠歌 万十九      中納言家持卿

春まけてかくかへるとも秋風に紅葉の山をこえこざらめや(1588)

【出典】万19-4145 【他出】歌枕名寄


三月三日
 天平勝宝二年三月三日宴歌 万十九  中納言家持卿

から人の舟をうかべて遊ぶてふ今日ぞ我がせこ花かづらせよ(1747)

【原歌】万19-4153 【他出】新古今集151・古今六帖・新撰朗詠集・定家十体・六華集・題林愚抄・三百六十首和歌・別本和漢兼作集



 聞暁啼雉 万十九       中納言家持卿

あしびきのやみね(つを両本)の雉子鳴きとよむ朝けのかすみ見ればかなしも(1766)

【出典】万19-4149 【他出】六華集(作者不明記)


 聞暁啼雉 万十九       中納言家持卿

すぎの野にさをどる雉子いちしるくなきにしもなかんこもりづまかも(1777)

【出典】万19-4148 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


雲雀
 題しらず 万二十       中納言家持卿

雲雀あがる春べと更に成りぬればみやこも見えず霞たなびく(1842)

【出典】万20-4434


 天平五年正月廿五日詠 万十九 同

うらうらにてれる春日に雲雀あがりこころかなしもひとりし思へば(1843)

【出典】万19-4292


菫菜
 家集 春歌中 菫       中納言家持卿

つばなぬくあさぢが原のつぼすみれ今さかりにもしげしわが恋(1981)

【出典】万8-1449(大伴田村大嬢)・家38


款冬
 題しらず 万十九       中納言家持卿

款冬の花とり持ちてつれなくもかれにしいもをしのびつるかな(2014)

【出典】万19-4184(留女之女郎)・家39


藤花
 布勢水海船泊多の浦の藤をみて作歌四首 万十九  中納言家持卿

田子のうらの底さへにほふ藤なみをかざして行かん見ぬ人のため(2104)

【出典】万19-4200(次官内蔵忌寸縄麻呂)【他出】拾遺集88(柿本人麿)・古今六帖(作者不明記)・人丸集・古来風躰抄(次官内蔵忌寸縄麿)・五代集歌枕(作者不明記)・歌枕名寄(次官内蔵忌寸縄麻呂)


 越中国の任のとき 万十八   中納言家持卿

あすのひのふせの浦まの藤なみにけだしきなかずちらしてんかも(2107)

【出典】万18-4043 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


菖蒲
 題不知 万八         中納言家持卿

ほととぎすまてどきなかずあやめぐさたまにぬく日をまだとほみかも(2620)

【出典】万8-1490



 題不知 万八         中納言家持卿

わがやどの花たちばなのいつしかもたまにぬくべくそのみならなむ(2668)

【出典】万8-1489


 長歌 万十九         中納言家持卿

もののふの やそのとものを しまやまに あかる橘 うずにさし ひもとりさけて(2676)

【出典】万19-4266


郭公
 題不知 万八         中納言家持卿

卯の花もいまださかねばほととぎすさほの山べにきなきとよませ(2748)

【出典】万8-1477


 家集 夏歌中         中納言家持卿

君こふとふしゐもせぬにほととぎすあを山べよりなきわたるなり(2764)

【出典】家95


 家集 夏歌          中納言家持卿

卯の花のにほふ五月の月きよみいねずきけとやなく郭公(2801)

【出典】家78 【他出】後撰集0148「卯の花のさける垣ねの月きよみいねずきけとやなく時鳥」(よみ人しらず)・伊勢集「卯花のにほふさかりは月きよみいねずきけとやなくほととぎす」(伊勢集に混入した古歌か)



 題不知 万十七        中納言家持卿

玉にぬくあふちをいへにうゑたらば山ほととぎすかれずこんかも(3115)

【出典】万17-3910(大伴書持) 【他出】雲玉集(作者不明記)


瞿麦
 だいしらず 万廿       中納言家持卿

久堅の雨はふりしくなでしこのいやはつ花に恋しきわがせ(3482)

【出典】万20-4443


 同              同

我がせこが宿の撫子ちらめかもいや初花に咲きはますとも(3483)

【出典】万20-4450


 贈紀女郎歌 万八       おなじく

撫子は咲きてちりぬと人はいへどわがしめし野の花にあらめやも(3484)

【出典】万8-1510


七夕
 題不知 万十五        中納言家持卿

七夕のふなのりすらしまそかがみきよき月夜に雲立ちわたる(3986)

【出典】万17-3900 【他出】家150・続千載集347・三百六十首和歌(作者不明記)


 家集 雑歌中        同

ひととせに一たびわたる天の川いくらばかりのひろさなるらん(3987)

【出典】家159


 同             同

かささぎのはしつくるより天の川みづもひななむかちわたりせん(3988)

【出典】家162


 題不知 万八         中納言家持卿

わがをかにさをしかきなくはつ萩のはなづまとひにきなくさをしか(4090)

【出典】万8-1541(大伴旅人)



 題不知 万八         中納言家持卿

たかまどの野辺のあきはぎこの比のあかつき露にさきにけむかも(4107)

【出典】万8-1605 【他出】玉葉集494・五代集歌枕・歌枕名寄


 同 万廿           同

みや人の袖つきごろもあき萩ににほひよろしきたかまどのみや(4108)

【出典】万20-4315 【他出】六華集(作者不明記)・雲玉集(作者不明記)・五代集歌枕・歌枕名寄


 秋歌中 明玉         中納言家持卿

わがやどのまへの秋はぎ風ふけばをる人なしにぬきみだるいと(4173)

【出典】家52 【補記】「明玉」は中世の散佚歌集「明玉集」のこと。藤原知家撰。


女郎花
 家集 秋歌中         中納言家持卿

ことさらに衣はすらじをみなへしさがのの花ににほひてをみん(4227)

【出典】家119 【原歌】万10-2107(作者不明)


 家集 稲日          中納言家持卿

いなみのの秋のをばなはまねけどもをみなへしにぞ心つけつる(4255)

【出典】家208


 題不知 万十七        中納言家持卿

日ぐらしのなきぬる時はをみなへしさきたるのべをゆきつつこえし(4300)

【出典】万17-3951(秦忌寸八千嶋)


 同 万廿           同

たかまどのみやのすそまのぬづかたにいまさけるらん女郎花はも(4301)

【出典】万20-4316


 同 万四           同

女郎花さくさはにおふる花かつみみやこもしらずこひもするかも(4302)

【出典】万4-675「娘子部四 咲澤二生流 花勝見 都毛不知 戀裳摺可聞」をみなへし さきさはにおふる はなかつみ かつてもしらぬ こひもするかも(中臣女郎)


鹿
 題不知 万廿         中納言家持卿

をみなへし秋はぎしぬぎさをしかの露わけなかんたかまどののぞ(4588)

【出典】万20-4297


 同 万八           同

この比のあさけにきけばあしびきの山をとよましさをしかなくも(4589)

【出典】万8-1603



 題不知 万八         中納言家持卿

ひさかたのあままもおかず雲がくれなきぞゆくなるわさ田かりがね(4866)

【出典】万8-1566


秋田
 題不知 万八         中納言家持卿

さほ河の水をせきあげてうゑし田をかるわさいひはひとりなるべし(5017)

【出典】万8-1635(「尼作頭句并大伴宿祢家持所誂尼續末句等和歌一首」)


 家集 雑歌中         同

たちばなのもりべのいほのかど田わせかり時すぎぬこじとやすらん(5018)

【出典】家291 【原歌】万10-2251(作者不明)


 同              同

山田もるたもりのひたのこほろにてこひするしかの声ぞとめつる(5019)

【出典】家200


 家集 雑歌中         中納言家持卿

あしびきの山田のいねはひでずともつなをはやはへもるとしらなん(5050)

【出典】家187 【原歌】万7-1353(作者不明)



 初月歌二首中 万三      中納言家持卿

あまの原ふりさけみればしらま弓はりてかけたるよみちはよけん(5097)

【出典】万3-289(間人宿祢大浦)


 題不知 古来歌合       中納言家持卿

ふなばりのなつみの上の山を出でて西をさしける月の影見ゆ(5121)

【出典】不明 【他出】歌枕名寄


秋夜
 題しらず 万三        中納言家持卿

今よりは秋風さむく吹きなむといかでかひとりながき夜をねん(5532)

【出典】万3-462 【他出】家147・新古今集457・古今六帖・夫木抄



 家集 雑歌中         中納言家持卿

きりぎりすわがねやちかくよるはなけひるはさわがし物がたりせん(5610)

【出典】家202


 同              同

から衣たつたの山にあやしくもつづりさせてふきりぎりすかな(5611)

【出典】家203



 贈紀女郎 万四        中納言家持卿

うづらなくふるきさとより思へどもなにぞもいもにあふよしもなき(5695)

【出典】万4-775 【他出】古今六帖


紅葉
 題しらず 明玉        中納言家持卿

おほ空に雁ぞなくなるうねびやまみかきがはらにもみぢしぬらし(6267)

【出典】不明 【他出】歌枕名寄 【補記】「明玉」は中世の散佚歌集「明玉集」のこと。藤原知家撰。


冬雑
 家集 雑歌中         前中納言家持卿

冬の夜のさむきまにまにわぎもこがころもをかりのこゑはききつや(6726)

【出典】家275


千鳥
 題不知 雲葉         中納言家持卿

ひさ木おふるかはらの千鳥なくなへにいもがりゆけば月わたる見ゆ(6734)

【出典】不明 【他出】新拾遺集607・雲葉集・新々百人一首


 天平五年正月於内裏聞千鳥詠歌 万十九  同

かはべにもゆきはふれらしみやのうちにちどりなくらしゐんところなみ(6735)

【出典】万19-4288



 家集 雑歌中         中納言家持卿

しら山の峰なればこそ白雪のかのこまだらにふりて見ゆらん(7146)

【出典】家274


 家集             中納言家持卿

とつくには衣手さむしたかまどの山の木ごとに雪のふるらし(7193)

【出典】家225 【原歌】万10-2319「暮去者 衣袖寒之 高松之 山木毎 雪曽零有」ゆふされば ころもでさむし たかまつの やまのきごとに ゆきぞふりたる(作者不明)


鷹狩
 思放逸鷹夢見て感悦作歌 万十七  中納言家持卿

やかたをの鷹を手にすゑみしまのにからぬ日もなくく月ぞへにける(7429)

【出典】万17-4012 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


湊風
 題不知 万十七        中納言家持

みなと風さむく吹くらしなごのえにつまよびかはしたづさわぐなり(7740)

【出典】万17-4018 【他出】続古今集1635・秋風集・五代集歌枕・歌枕名寄


あゆの風
 題不知 万十七        家持

あゆの風いたく吹くらしなごの海士のつりする小舟こぎかへるみゆ(7752)

【出典】万17-4017 【他出】古来風躰抄・五代集歌枕・歌枕名寄・歌林良材



 秋歌中 万八         中納言家持

雨ぐもり心ゆかしみいでみればかすがの山は色づきにけり(7875)

【出典】万8-1568


いづへの山 伊豆又越中 万十九
                中納言家持卿

わがここにしぬはくいさに郭公いづへの山を啼きかこゆらむ(8129)

【出典】万19-4195 【他出】歌枕名寄


わづかそま山 和豆香蘇麻 大和
 題不知            中納言家持卿

わがおほ君あめしられずとおもはずはおほにぞみけるわづかそまやま(8268)

【出典】万3-476 【他出】歌枕名寄


かがみ山 近江又山城或豊前
 家集 雑歌中         中納言家持卿

くしげなるかがみの山をこえゆけばわれはこひしきいもがすがたか(8338)

【出典】家287


そのはら山 信乃
 家集 雑歌          中納言家持卿

その原の山をいかでと歎くまに君もわが身もさかり過ぎゆく(8444)

【出典】家317


うたたね山 未勘
 家集 夏歌          中納言家持卿

夏衣うたたね山のほととぎすいまはきときに立ちかへりなく(8512)

【出典】家84「夏衣うたしめ山の時鳥今はきとよめ立ちかへりなけ」 【他出】古今六帖


きよひめの山
 家集             中納言家持卿

さ夜更けてみつつやゆかんこしぢなるきよひめのこがきよひめの山(8830)

【出典】家296「さよ深けてみつつやゆかむまつら成るさよひめのこがひれふりの山」


みづわけ山 水分 大和
 題不知 万二十        中納言家持卿

あら玉の年ゆきかへり春たたば水分山にうぐひすはなけ(8875)

【出典】万20-4490「安良多末能 等之由伎我敝理 波流多〃婆 末豆和我夜度尓 宇具比須波奈家」あらたまの としゆきがへり はるたたば まづわがやどに うぐひすはなけ 【他出】続後拾遺集498・古今六帖・三十人撰・三十六人撰


もがみ山 最上 出羽
 家集             中納言家持卿

もがみ山すがけせしより心ありてまもりかへせるやかたをのたか(8959)

【出典】家290 【原歌?】忠岑集 【他出】夫木和歌抄


すそまの山 須蘇麻 越中
 越中国二上山にて作長歌 万十七  中納言家持卿

すめ神の すそまの山の しぶ谷の さきのありそに あさなぎに よする白波 夕なぎに みちくるしほの(8976)

【出典】万17-3985 【他出】歌枕名寄


すかの山 須加 越中
 題不知 万十七        同

心にはゆるぶことなくすかの山すかなく君をこひやわたらん(8977)

【出典】万17-4015 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


いつばたのさか 伊都婆多 越前
 越前の任のとき 万十八    中納言家持卿

かへるまの道ゆかん日はいつばたのさかに袖ふれ我をしおもはば(9254)

【出典】万18-4055 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


となみのせき 越中
 越中国任の時 僧に贈酒歌 万十八  中納言家持卿

やきたちをとなみのせきにあすよりはもりへやりそへ君をとどめん(9529)

【出典】万18-4085 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


いはせの 石瀬 越中
 長歌 万十九         中納言家持卿

あきづけば はぎさきにほふ いはせのに むまだきゆきて をちこちに とりふみたてて しらぬりの こすずもゆらに(9627)

【出典】万19-4154 【他出】歌枕名寄


河ぐちのの 伊勢

 伊勢国歌 万六        中納言家持卿

かはぐちののべにいほりてよのふればいもがたもとのおもほゆるかも(9663)

【出典】万6-1029 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


みしまの 摂津又越中
 長歌 万十七         中納言家持卿

みしまのを そがひにみつつ ふたかみの 山をとびこえて くもかへり かけりいにきと(9822)

【出典】万17-4011 【他出】歌枕名寄


すぎのの 越中
 聞暁鳴雉 万十九       中納言家持卿

すぎののにさをどるきぎすいちしるくなきにしもなかんこもるつまかも(9836)

【出典】万19-4148 【他出】古今六帖・・五代集歌枕・歌枕名寄



 長歌 万十九         中納言家持

へたに出でたち 朝夕に 満来る塩の やへ浪に なびく玉藻の 時の間も(10248)

【出典】万19-4211


なごのうみ 越中
 越中国任の時 長歌 万十八  中納言家持卿

さぶるそのこに ひものをの いつがりあひて 鳰鳥の ふたりならびぬ なごの海の おきを深めて さどはせる(10334)

【出典】万18-4106


ふせのうみ 越中
 越中国任の時 布勢の湖を 万十七  中納言家持卿

夕されば てたづさはりて いみづ川 きよきかふちに 出でたちて 我がたち見れば あゆのかぜ いたくし吹けば 湊には 白波たかみ 妻よぶと すどりはさわぐ あし刈ると 海士の小舟は 入江漕ぐ 梶の音高し そこをしも あやにともしみ しぬびつつ 遊ぶさかりを(10358)

【出典】万19-4177 【他出】歌枕名寄


すすのうみ
 同 万十七          中納言家持卿

すすの海にあさびらきして漕ぎくればながはまの浦に月てりにけり(10385)

【出典】万17-4029 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


たこのしま 越中
 長歌 万十七         中納言家持

つなしとる ひみのえ過ぎて たこの島 とびたもとほり あし鴨の すだくふる江に をとつひも(10484)

【出典】万17-4011 【他出】歌枕名寄


たるひめのうら 多流比売 越中
 布勢水海にて作歌 万十八   中納言家持卿

たるひめのうらをこぐふねかぢまにもならのわぎへをわすれておもへや(11480)

【出典】万18-4048 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


ありそのはま 越中 家集   中納言家持卿

しぬらんとかねてしりせばこしのうみのありそのはまは見てましものを(11848)

【出典】万17-3959 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


しなののはま 越中
 天平廿四年正月廿九日作歌 万十七  中納言家持卿

こしのうみのしなののはまをゆきくらしながきはるひもわすれておもへや(11862)

【出典】万17-4020 【他出】古来風躰抄・五代集歌枕・歌枕名寄


たこの崎 駿河
 越中に下る時 万十八     中納言家持卿

たこの崎このくれしげきほととぎすきなきとよめばはたこひめやも(12134)

【出典】万18-4051 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


かしひの渡 香椎潟 筑前
 旅歌 雲葉          中納言家持卿

ふなでするおきつしほさゐしろたへのかしひのわたり波たかくみゆ(12242)

【出典】不明 【他出】続古今集928・雲葉集・歌枕名寄


美濃国多芸行宮にて 万六   中納言家持卿

たど川の滝をきよみかむかしよりみやづかへけん多芸ののうへに(12362)

【出典】万6-1035 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄



 越中国にて 万十七にあり   中納言家持卿

ふたかみのをてもこのもにあみさしてあがまつたかをいめにつげつも(12766)

【出典】万17-4013 【他出】歌枕名寄



 家集 雑歌中         中納言家持卿

家路にはいしふむ山もなきものをわがまつきみが馬のつまづき(12964)

【出典】家295 【原歌】万11-2421「〓路者 石蹈山 無鴨 吾待公 馬爪盡」くるみちは いはふむやまの なくもがも あがまつきみが うまつまづくに


夕陰草
 題しらず 万四        中納言家持卿

我が宿の夕かげ草の白露のけぬるももとなおもほゆるかも(13336)

【出典】万4-594(笠女郎) 【他出】古今六帖(さかの女郎)
【補記】古今六帖の作者名は「かさの女郎」の誤記であろう。正しくは笠女郎の歌。



 長歌 万十八         中納言家持卿

いやましにのみ たづのなく なごえのすげの ねもごろに 思ひむすぼほれ なげきつつ(13542)

【出典】万18-4116 【他出】歌枕名寄



 題しらず 万十三       中納言家持卿

つくばのにおふる紫衣にそめいまだきずして色にいでにけり(13578)

【出典】万3-395(笠女郎) 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄
【補記】「万十三」は誤り。正しくは万葉集巻三、笠女郎の歌。



 題不知 万廿         中納言家持卿

やちくさの花はうつろふときはなる松のさえだをわれはむすばな(13698)

【出典】万20-4501 【他出】歌林良材



 題不知 万十         中納言家持卿

まきもくのひばらもいまだくもらぬにこまつが末にあは雪ぞふる(13933)

【出典】家224 【原歌】万10-2314「巻向之 桧原毛未 雲居者 子松之末由 沫雪流」まきむくの ひばらもいまだ くもゐねば こまつがうれゆ あわゆきながる(柿本朝臣人麻呂歌集出也) 【他出】新古今集20・古今六帖・俊成三十六人歌合・時代不同歌合・雲玉集・歌枕名寄


歓合木
 題しらず 万八        中納言家持卿

わぎもこがかたみのかふくわはなにのみさきてけだしも身にならずかも(14050)

【出典】万8-1463「吾妹子之 形見乃合歡木者 花耳尓 咲而盖 實尓不成鴨」わぎもこが かたみのねぶは はなのみに さきてけだしく みにならじかも
【補記】類題は「合歓木」の誤り。歌の「かふくわ」は合歓の音読。



 長歌 万廿          中納言家持卿

すべらぎの とほのみかどと しらぬひの つくしのくには あたまもる おさへのきそと きこしめす(14150)

【出典】万20-4331


くにのみやこ 久邇 山城
 万三             中納言家持卿

おほやまと くにのみやこは うちなびく はるさりぬれば 山べには 花さきををり かはせには あゆこさばしる(14210)

【出典】万17-3907(境部宿祢老麻呂)


ののうへのみや
 題不知 万廿         中納言家持卿

たかまどの野のうへの宮はあれにけりただしき君のみよとほそけば(14267)

【出典】万20-4506 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄


うねびの宮
 題しらず 万廿        中納言家持卿

あきつしま やまとのくにの かしはらの うねびのみやに みやばしら ふとしきたてて あめのした しらしめしける(14294)

【出典】万20-4465



 詠酒歌            中納言家持卿

さけの名をひじりといひしいにしへのおほきひじりのことのよろしさ(15046)

【出典】万3-339(大伴旅人「大宰帥大伴卿讃酒歌十三首」) 【他出】古来風躰抄


 同 万三           同

よるひかる玉といへどもさけのみてこころをやるにあにしかめやも(15047)

【出典】万3-346(大伴旅人)


 同 同            同

あたひなきたからといへども一つきのにごれる酒にあにまさらめや(15048)

【出典】万3-345(大伴旅人)


 同 万四           同

いにしへの人ののませるきびのさけやもはらすへてぬきすたまはん(15049)

【出典】万4-554(大伴旅人)



 題不知 万四         中納言家持卿

みな人をねよとのかねはうつなれどきみをしおもへばいねがてにかも(15252)

【出典】万4-607(笠女郎) 【他出】古来風躰抄



 みちのくよりはじめて金をまゐらせたりける時 万十八
                     中納言家持卿

皇の御代さかへんとあづまなるみちのく山にこがね花さく(15273)

【出典】万18-4097 【他出】五代集歌枕・歌枕名寄・歌林良材


 長歌             同

わがおほきみの もろ人を いざなひたまひ よきことを はじめたまひて こがねかも たのしくあらんと おぼほして したなやますに とりがなく あづまのくにの みちのくの をだにある山に こがねありと まうしたまへれ み心を(15274)

【出典】万18-4094


ゆふまくら
 家集 雑歌中         中納言家持卿

かみつせにかはづなくなり夕されば川風さむしゆふまくらせん(15405)

【出典】家293 【原歌?】万10-2165「上瀬尓 河津妻呼 暮去者 衣手寒三 妻将枕跡香」かみつせに かはづつまよぶ ゆふされば ころもでさむみ つままかむとか(作者不明)



 家集             中納言家持卿

わぎもこがわざとつくれるあきのたのわさほのかづらみれどあかずかも(15447)

【原歌】万8-1625 【他出】和歌六帖
【補記】出典「家集」とするが、この歌を載せる家持集の存在をしらない。


しめ 六五          中納言家持卿

君ににる草と見しよりわがしめしのやまのあさぢ人なかりそも(15489)

【出典】古今六帖 【原歌】万7-1347(作者不明)


しめ 同           中納言家持卿

あしびきのいはねのきよみすがのねのひけばかたしとしめのみぞゆふ(15492)

【出典】古今六帖 【原歌】万3-414


しづはたおび
 題不知 万十一        中納言家持卿

いにしへのしづはたおびをむすびたれたれといふとも君にはまさじ(15636)

【出典】万11-2628(作者不明) 【他出】古今六帖



 題不知 万二十        中納言家持卿

あをなみに袖さへぬれてこぐ舟のかしふる程にさ夜ふけなんか(15766)

【出典】万20-4313 【他出】六華集(作者不明記)


大王
 長歌 万六          中納言家持卿

すべらぎのみゆきのまにまにわぎもこがたまくらまかずつきぞへにける(16488)

【出典】万6-1032 【他出】古今六帖(作者不明記)
【補記】「長歌」は誤り。


雲のつかひ
 題しらず 万廿        中納言家持卿

みそらゆく雲もつかひと人はいへどいへづとあらむたつきしらずも(16638)

【出典】万20-4410



 旅歌中 古来歌        中納言家持卿

たび人のよこをりふせるやまこえて月にもいくよわかれしつらん(16895)

【出典】不明 【他出】新拾遺集791



 題しらず 万四        中納言家持卿

をととしのさいととしよりことしまでこふれどなぞもいもにあひがたき(17141)

【出典】万4-783 【他出】六華集(作者不明記)


 題不知 万四         中納言家持卿

月夜にはかどにいでたちゆふけとふあし占をぞせしゆかまくおほそ(17147)

【出典】万4-736 【他出】古来風躰抄



高良玉垂宮神秘書紙背和歌 4首

同十七                家持

越俗語東風謂安由乃可是也
あゆのかぜいたくふくらしなごのあまのつりするをぶねこぎかくるみゆ(96)

【出典】万17-4017 【他出】夫木和歌抄・古来風躰抄・五代集歌枕・歌枕名寄・歌林良材


あまぎりあひひかたふくらしみづぐきのをかのみなとになみたちわたる(97)

【出典】万7-1231(作者不明「古集中出」) 【他出】夫木和歌抄(読人不知)


かすがののはぎもちりなばあさごち(朝東)のかぜにたなびくここにちりこね(98)

【出典】万10-2125(作者不明) 【他出】五代集手枕・歌枕名寄


同                  家持

ぬばたまの月にむかひてほととぎすなくおとはるけしさととほみかも(273)

【出典】万17-3988



六華和歌集 2首

万廿              大伴家持

水鳥の鴨のは色の白馬を今日見る人はかぎりなしやといふ(10)

【出典】万20-4494 【他出】古今六帖・三百六十首和歌(作者不明記)


万十七             大伴家持

唐人の舟をうかべてあそぶてふけふぞわがせこ花かづらせよ(278)

【出典】万19-4153 【他出】新古今集151・古今六帖・新撰朗詠集・夫木抄・定家十体・題林愚抄・三百六十首和歌・別本和漢兼作集
【補記】題詞の十七は十九の誤り。



三百六十首和歌 2首

子日           家持

はつ春の初音の今日の玉ばはき手にとるからに延命(ゆらく)玉の緒(6)

【出典】万20-4493 【他出】新古今集708(読人不知)・古今六帖・古来風躰抄(作者不明記)・定家八代抄(読人不知)・夫木和歌抄・六華集(作者不明記)・歌林良材


三月上旬         大伴家持

から人の船をうかべてあそぶてふ今日ぞ我がせこ花かづらせよ(66)

【出典】万19-4153 【他出】新古今集151・古今六帖・新撰朗詠集・夫木抄・定家十体・六華集・題林愚抄・別本和漢兼作集



題林愚抄 3首

新続古             中納言家持

我が宿のなでしこの花咲きにけり手をりてひとめみせんこもがな(2565)

【出典】新続古今集318 【原歌】万8-1496


曲水宴 新古          中納言家持

から人の舟をうかべてあそぶてふけふぞわがせこ花かづらせよ(9762)

【出典】新古今集151 【原歌】万19-4153 【他出】古今六帖・新撰朗詠集・夫木抄・定家十体・六華集・三百六十首和歌・別本和漢兼作集


新嘗会 新勅          中納言家持

足引の山したひかげかづらなるうへにやさらにむめをしのばん(9918)

【出典】新勅撰集1110 【原歌】万19-4278(第三句、原文は「可豆良家流」かづらける) 【他出】古今六帖



別本和漢兼作集 10首

曲水宴を             中納言家持

から人の船をうかべて遊ぶてふけふぞ我がせこ花かづらせよ(1)

【出典】新古今集151 【原歌】万19-4153 【他出】古今六帖・新撰朗詠集・夫木抄・定家十体・六華集・三百六十首和歌・題林愚抄


題しらず

ほととぎす一声鳴きていぬるよはいかでか人のいをやすくぬる(2)

【出典】新古今集195/家83 【他出】躬恒集・別本和漢兼作集
【補記】この歌、正しくは凡河内躬恒の作であろう。何らかの理由で家持集に混入し、新古今集には家持作として採られた。


秋のはじめのうた

ときは今はあきぞとおもへばころもでに吹きくる風のしるくも有るかな(3)

【出典】続古今集284/家145 【他出】秋風集


題不知

わがやどのをばなが末にしら露のおきし日よりぞ秋風も吹く(4)

【出典】新古今集462/家176 【他出】定家八代抄


さをしかの朝たつをのの秋萩に玉とみるまでおけるしら露(5)

【出典】新古今集334 【原歌】万8-1598 【他出】麗花集・三十人撰・三十六人撰・秀歌大躰・定家八代抄


ふく風にちるだにをしきさほ山のもみぢこきたれしぐれさへふる(6)

【出典】続古今集553/家254 【他出】万代集・歌枕名寄


かささぎのわたせるはしにおく霜の白きをみればよぞふけにけり(7)

【出典】新古今集620/家257 【他出】俊成三十六人歌合・時代不同歌合・定家八代抄・秀歌大躰・百人秀歌・百人一首・題林愚抄


みなと風さむくふくらしなごのらにつまどひかはしたづさわぐなり(8)

【出典】続古今集1635/万17-4018 【他出】古今六帖・夫木抄・秋風集・五代集歌枕・歌枕名寄


いまさらにまつ人こめやあまの原ふりさけみればよもふけにけり(9)

【出典】続後撰集807/家246 【他出】万代集


をうなのおもひにてよみける

うつせみのよはつねなしと知るものを秋風さむみしのびつるかな(10)

【出典】玉葉集2424/万3-465 【他出】古今六帖・秋風集
【補記】この後に万葉集巻一七に収められた家持の漢詩が載るが、省略した。



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最終更新日:平成14-3-11