救急医療システム

よく救急外来で患者様の対応をしていると、「救急病院だから何でも診てくれるんじゃないの」との声をよく聞かれます。ですが、実際には対応しきれない症状で他の病院に行ってもらうことも、多々あります。ここでは、あまり、一般的には知られていない、救急病院の種類と、特性について説明したいと思います。

一次救急医療施設

初期救急医療機関

  救急告示病院、夜間急患センター、在宅当番医、休日夜間診療所、救急告示診療所

     どんな、患者さんを対象としているの? 
     おもに外来での処置やお薬で帰宅できる患者さんが対象になります。あくまで、医師が診察して判断しますが、軽度の発熱、腹痛、といった風邪症状や胃腸炎はここに含まれます。診療時間、診療科など施設によって異なりますので、行く前に電話などで確認することをお勧めします。しかし、自治体で運営している診療所以外は時間外で対応してくれる施設が皆無なのも現状です。
 医師がさらに高度の医療が必要と認めた場合は、高次の救急医療機関に紹介となります。
二次救急医療施設


二次救急医療機関
 救急告示病院、救急担当病院輪番制、共同利用型病院、地域医療支援病院

    どんな、患者さんを対象としているの? 
  ここでは、外来での対応では不充分で、入院加療が必要と医師が診断した患者さんが対象になります。薬のみでは回復が望めない場合、特別な処置、あるいは手術の適応がある場合等です。
 ほとんどの救急患者さんが初め(救急車も含め)に訪れるのがこういった二次救急医療施設だと思います。そこでこういった病院にかかる時の注意を何点か挙げたいと思います。

 ちなみに、救急外来では、症状の重い患者さんから診察を行います。症状が重篤にならないようにするためですが、時折、何時間、待たせるんだ!!と怒り出す人も見受けられます。救急外来の特性をご理解の上、受診して頂けるようお願い申し上げます。

@出来れば、かかりつけの病院を受診すること。
   これまでの診療記録(カルテ)があるため、既往歴、投薬内容、アレルギーの有無など、医師が診断、治療するのに重要な情報が多く的確な診断と治療を受けられやすくなります。

A事前に電話などで受診可能か確認すること
   
多くの二次救急医療施設では、医師の当直体制が二人から三人のことが多く看護婦の数も2、3人です。医師は外科系、内科系に分かれ患者さんの診療にあたっています。一言で外科、内科といっても医師も多くの専門があり、脳を専門としている医師、腹部を専門としている医師、胸部を専門としている医師と様々です。もちろん専門外であっても診察は可能ですが、やはり、事前に電話などで症状を伝え診察できるか確認をとったほうが無難といえます。(※注)病棟で患者さんの容態が急変していたり、処置などを行っていると救急の受け入れを一時的にお断りしていたり、長時間、待っていただく事もあります。
 
※注 診察した医師が専門医(他科)の診察を要すると判断し、他院に紹介した場合でも診察にかかわる診療費は請求されます。結果的に患者さんにとっては医療費の負担が増えるだけでなく紹介先まで行く手間の増加になってしまうことがあります。
眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、産科、婦人科は専門医でないと診察が難しいことがありますので注意が必要です。

B小児科は事前に受診できるところをみつけておくこと。
  
子供の急な発熱は小さなお子さんを持った方なら誰でも経験していることだと思います。特に夜間の病院探しは、なかなか診てくれるところが見つからず大変な思いをされた方も多いと思います。
 大人と違って薬の量も微妙。症状の把握が難しい、小児特有疾患の鑑別の必要性という小児の特徴のために専門医でないと診断するのが難しく、しかも小児専門医のいる医療機関は限られているというのが現状でしょう。
 いざという時に困らないよう、前もって、いざというときに診てくれる医療機関を探しておくのがいいでしょう。自治体の広報などに掲載されている場合もあります。

  生命の危機が切迫している状態、二次救急施設では充分対応出来ないと医師が判断した場合は、三次救急医療施設に紹介、転送になります。

三次救急医療施設


三次救急医療機関
  救急救命センター、救急医療センター、大学病院救急部

    
 どんな、患者さんを対象としているの?
  
生命が危機状態にあり、高度な専門的治療が必要な患者さんが対象になります。心臓の機能や、肺の機能が停止した。交通事故により致命的な外傷を受けた。心筋梗塞あるいは脳卒中の疑いがあり緊急を要すると診断された。など、ケースは様々ですが、一刻も速く高度な医療を受けないと命の存続が危ぶまれる患者さんが対象になります。



特殊診療施設


      どんな、患者さんを対象としているの?
   特定の疾患に応じて、専門的かつ高度な医療を提供している施設です。
一例をあげると、
  重いやけどを専門的に扱う「熱傷センター」
  薬物などの中毒症専門の「中毒治療センター」
  新生児専門の「新生児救急センター」
                    などがあげられます。
これらの施設は医師からの紹介、救急搬送が主体となります。