前略、景気はいっこうに回復する兆しはなく、このままだと日本人はみんなで夜逃げをしなければならなくなりそうです。かつて奇才小松左京が「日本沈没」というSF超大作を出版した時には荒唐無稽だと思ったものですが、このような形で日本が沈没しようとは「お釈迦様でも気がつかなかった」ところですね。

 とは言っても沈没するにはタイタニックのようにしばしの時間が残されていると思います。その間に、救命ボートで安全な場所まで(安全な場所がいまあるのかは別として)逃げ出すか、このまま船と共に運命を共にするか、考えなければならない時が来たのでしょうか。残念ながら、所詮僕のような一般大衆は、逃げ出すことなど出来ないと思います。

 動物的カンで早くも逃げ出した人たちもいますが、いずれにしてもタイタニックと同じように上級船客から優先的に逃げ出す仕組みになっているようではあります。また、中にはこの非常時に、船を救いにきたなんて言う大橋巨泉氏みたいな物好きもいるようですが、本人にどこまでやる気があったのか。

 いずれにしろ、僕のような最下等エコノミー船客などは逃げ出すためのボートも無く、かといって船と運命を共にするのもいやだとなると、自力で助かる方法を考えなければなりません。しかし、それでなくともエコノミークラスにいるわけで、脱出するために甲板に上るのさえままならない状況の中での脱出方法の模索は、はなはだ厳しいものとなっています。ハリウッド映画などを見ると、こういうときは子供と女性を先に脱出させるものと決まっているようです。僕も、なんとか家族は助けたいと思います。

 さて、そこで世界を改めて見てみると、僕自身に経験があるわけではありませんが、今の景気後退がちょうど昭和初期の世界不況に似てきたような気がします。さすがに帝国主義とは表立って表明はしないまでも、1国平和主義だの、保護貿易経済国家主義だのが跋扈して、なにやらいろいろな利益代表国同士の対立が、今後激化して収拾のつかない事態になりそうな状況です。

 振り返って国内を見ても、エリート官僚の業務改革能力は皆無に等しく、問題処理の能力も無い。さらに悪いことに問題を先送りしてばかり。まことに国民の不安の種は尽きません。このまま放置しておけば日本国は沈没必定、いったいどうすりゃ良いのだろう。

 とか何とか言っているうちに、もう沈みかけているのかもしれません。逃げるのは今だ、とは思っていても逃げるための基盤も実力も無い僕であります。しょせんは国と運命を共にして、破産宣告を受けることになるのでしょうか。(まあ、すでに僕の場合、実体経済は破産状態であるような気もしますが)

 この間、ある転職コンサルト会社の人に話を聞きましたが、収入のいい仕事はハローワーク(いわゆる職安ですか)にはきません、全て転職コンサルト会社で押さえております。なんて言ってました。コンサルト会社は求職者と求人社から両方斡旋料をもらって、大繁盛のようです。

 とはいえ、このごろはその会社でも求人数が減ってきて、なかなか仕事が見つからないそうです。それでも求職者はお金だけは毎月払わないといけないそうで、なかなかうまい商売ですな。

         2002年3月9日 アンクル・ハーリー亭主人

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2002.3.9掲載