前略、今年の7月がとりわけ暑かったせいか、リビングのエアコンがとうとう引退の意向を示し始めました。何といっても外気温が30℃を越えると活動を停止してしまうのです。全くエアコンとしての自覚が無い所業と言わざるを得ません。

 もっとも12年間も休み無く頑張ってくれていたわけで、その最後の年がこんなに暑いとは全く彼にとっても運が悪かったというべきでしょうか。

 幸いなことに、休憩をとりながら運転をすると、まだ何とか冷房機能を惜しげも無く発揮してくれるので、2時間使って30分休む、など労わりながら働いてもらっています。老体にむちを打つようではなはだ寝覚めが悪い使い方ですが、バーゲンセールが始まるまで我慢してもらいたいと思っています。

 そういう訳でエアコンの方はやがて円満退職してもらうことになりますが、肝心の僕の方が勤め先から出向を命じられ、心穏やかではありません。現在の景気からしてやむをえない経営方針かも知れませんが、何も僕以外にももっと要らなそうな人間が居るわけで、そういう人が残ってのうのうとしているのかと思うとしゃくに障ること甚だしいものがあります。

 まあ、ものは考え様で、使える人材だから出向の対象になったのかいのと、気持ちを慰めています。

 思い起こせばあの、第一次オイルショックで就職口が無いなかに、激烈な競争を勝ち抜いて就職してから、26年間愚痴も言わず(そうでもないかな)に働いた末の仕打ちがこれかよ、と思わずサマーズ(前名バカルディー)のような突っ込みをしたくなります。

 もっとも、今度の出向はそれほど大騒ぎをするほど大変でもなく、子会社に行って同じ仕事をやるという、極めてよくあるパターンの出向ではあります。これが会社都合の転属なんかだと、退職金が出て住宅ローンを返すのに非常に都合が良いのですが、そう上手くは運ばないようです。

 このところ、世の中は希望退職ブームで僕の知り合いも退職金100%増し、というのに釣られて退職したはいいのですが、次の仕事が見つからず、失業保険もぼつぼつ切れるとあってあせっているのがいます。まあ、カミさんが働いていて家のローンも無し、僕に言わせればしばらく遊んでいれば良いのにと思うくらいな境遇ですけど。

 とはいえ、やはり40代には再就職が厳しい世の中のようです。一つには現状の収入が高すぎて同じくらいの仕事がなかなか無いという理由もあるようです。収入だけが仕事を選ぶ基準ではない様に思うのですが、貰えるものなら少しでも多い方が良いというのが人情でもあります。このへんは僕も良く解かるのですが……。

 僕が現在の仕事を続けているのは、製造業という物を作り出す仕事に魅力を感じているからです。これまでの会社生活は新製品の設計開発畑で来ました。そして出向になった今も、開発設計に従事しています。ある意味、幸せな仕事生活だったかも知れません。もちろん辛かったことやもう止めようと思った事も再三でしたが、これまでのいろいろな経験がこれからの僕の人生にとって大きな財産になることは間違いないと思います。

 最後に、僕を支えてくれた妻に感謝をして、この稿を終えたいと思います。

         2001年9月8日 アンクル・ハーリー亭主人

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2001.9.8掲載