前略、日本は真夏ですね。僕も明日には南回りのエールフランスで帰るつもりです。コートダジュールに来たのは3年ぶりです。地中海も海面がやや上昇しているのか、海辺に建てたヨット小屋が10cmほど水に洗われていました。別荘のある浜までは、ヨットで行くしかないのでもう少し高いところに移動してくれるよう管理人に頼んでおきました。

 別荘は海抜4m以上あるところに2.4mの土台を築いて建てたので、あと20年は使えると思います。飲料水のタンクと風力発電ユニットは修理が終わっていつでもいらしていただけます。去年取り替えたという太陽電池パネルも、かなりの電力を供給してくれるので、キッチンにオーブンレンジをつけました。

 日本から持って行った「八海山」をチンして、ぬる燗で飲むと日本人に生まれた幸せを感じます。浜は高さ50mほどの玄武岩崖にかこまれ、穏やかな入海に、ヨットが揺れています。そんな様子を見ると眠くなってきます。それに、電気が無駄になるので夜は早々に寝て、日の出と共に起きる生活を10日もしてみると、都会的な2枚目の私も、いかにも現地の人と見分けがつかなくなります。今朝起きた時など、鏡に見知らぬ顔が映ったので思わず挨拶したら、自分の顔でした。

 モナコの王様の遊び友達だったという、ポーリン・ジュノーという漁師と知り合いになって、マグロを釣ったのが今回の収穫でした。刺身で食べたら、野蛮な習慣だ、と怒られました。酢があれば寿司にしていたところですが、ワインビネガーやバルサミコでは、もう一つ日本の米との相性が合いません。

 この漁師、フランス人なのに蛸が好きで、でかいミズダコも釣ってきたので塩で揉んで、ビール瓶で叩いてから茹でるという明石の漁師に習ったやり方を教えてあげました。このゆでだこのマリネはなかなかの味です。残りは明日、たこ焼きにしようかと思います。

 この頃は、日本を離れているとギターなどを弾きながら「夜空をー仰いでー……」などを唄い。“寂しいなあー”かなんかつぶやく毎日です。つくづくスターは辛いです。

 

 と、ここまで書いてなんだかバカバカしくなってきた。読んでる人はもっとバカバカしいだろうな、と反省するがきっと誰も読んでいないか、などと自分を慰めてみる。なんだかそれも寂しいが。

 この暑い中、横浜の陋屋でパコパコキーボードを叩いていると、時々無性にカレーライスが食べたくなる。この頃海軍カレーなるものが流行っているが、今でも週に1度、カレーを食べながら海上自衛隊の諸君は任務に励んでいるのだろうか。

 横浜の陋屋とカレーがたとえ無関係にしても強引に書いてしまえば何となく関係を否定する材料も無く、こうしてディスプレイの画面は埋まって行くのだった。

 来週は陸上自衛隊の食べ物に関して拙文を上梓しようかとも考えるが、いろいろと社会的立場との関連から難しいかもしれない。だいたい、食べ物に関する話題が多過ぎるという批判もあり、ますます混迷は深まるばかりであった。(完全に手を抜きました、ご免。)

         2001年8月4日 アンクル・ハーリー亭主人

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2001.8.4掲載