悪い習慣だとは思うのだけれど、我が家では食事をしながらテレビを見る事が多い。これは、私の生家での習慣がそのまま連綿と(大袈裟な!)引き継がれたからである。

 私が物心付いた頃には、食卓がテレビの前に有った。私がテレビの正面、父がいつも仕事をする場所でもある私の左手(麻雀で言えば上家)兄が右手(下家)、母は台所に近い私と兄の間に座る。当時のテレビのチャンネルはテレビの右に配置されていたから、チャンネル権はあっけなく兄の物となった。

 この位置は、兄が大学を卒業するまで不変であった。もっとも、私と父の間に妹が座るようになり、兄も私も一緒に食事を摂る事は希になってはいたが。それでも、兄が就職して家を出た後に私は兄の居た場所を定位置としたが、チャンネル権は妹に移っていた。リモコンの登場であった。

 兄が家を出て3年後には私も就職し、家を出たのでチャンネル権という物を私は持った事が無い。大企業の独身寮に住んでいた時は、ほとんどテレビを見ない毎日だった。ちなみに現在その独身寮はエアコン、テレビ、電話付きだそうだ。

 閑話休題、結婚して、狭いながらも2DKの社宅に入った時は、狭いダイニングで食事をしていたのでテレビを見るのは食事を終えてからだった。テレビより妻の顔を見ていたほうが幸せであった。しかし、蜜月は短い。仕事で遅くなる事が多くなると、食事とテレビを1度に片付けないと時間的に無理になってしまった。結局食事はテレビのある和室で摂るようになり、子供たちが生まれ、新築の2LDKの社宅に移っても食卓はテレビが見やすい場所に置かれ、現在の家を建ててからも同じような状況で食卓はテレビの方を向いている。

 今は子供たちが大きくなり、テレビ番組の嗜好が私とあまり変わらなくなってきた。食事をしながらテレビを見る、と言ってもテレビが従で、家族との会話が主になってきている。そこでこの頃は、私も意識して食事に間に合うように帰宅するようにしている。とは言え、普段は私が帰宅する頃には子供たちは食事を終えてしまい、そのままテレビを見ている事が多いのが実状だ。それでも、とにかく子供たちと話しをしながら私は食事を出来るわけで、案外テレビも一役買ってくれているとも思う。

 問題は妻との会話が出来ない事にある。妻も仕事を持っていながら、家に帰って家事をしている。子供たちに夕食を食べさせ、終わったと思ったら私が帰ってきてまた私に食事を用意しなければならない。さらに、仕事上の悩みもあり、私にいろいろと話しかけながら食事の支度をする事になる。そういう時に限って私が子供と話していたり、テレビに耳をすましていたりする、らしい。(と、妻は思っているということです)

 妻に言わせれば、私の話しを聞きたくないんでしょ、ということだ。正直に言うと、そういう事も無い事はない。私としては、その話しは昨日も聞いた、ということも多い。それをいちいち言っては会話にならないから一応は聞いているつもりなのだが、微妙に本当は聞いていない、ということがわかるのだろう。その辺は私も悪いと反省している。しかし、聖徳太子ではない私としては、妻、子供、テレビと1度に全てを聞いて理解する能力はないので、どうしたら良いのか、困惑する他はない。後でゆっくりと思っても、妻も仕事で疲れているので早く寝たいだろうし。問題は意外に根が深いのかも知れない。どなたかアドバイスをいただけないだろうか。

  2000年10月21日 アンクル・ハーリー亭主人

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2000.10.21掲載