前略、妻がこの夏、かなり前から整理をしていなかったクローゼットを片付けていたら20年前の結婚式と披露宴関係の書類が出てきた、とのことです。それは僕の作った結婚式までの作業等をまとめた日程表、ホテルの請求書、新婚旅行先での領収書、高速道路やフェリーの領収書などなどでしたが、その中に混じってなぜか、僕が10代の頃に書いたと思われる小説の原稿がありました。

 原稿用紙50枚ほどの短編が2編でした。そのうちの1編はたしかに書いた覚えがあって、それを脚色して22歳の思い出に友人(僕を含め5人)とその女友達たちの出演や協力で8mm映画を撮ったのを思い出しました。残念なのはその5人の内、彼女と結婚して、しかも今も夫婦でいるのは1組だけです。(僕はその唯一健在な奥様に振られた事がある)

 驚いたのはもう1編の方で、僕も完全に忘れていたものでした。あらためて読んでみましたが筆跡はたしかに僕の字ですが、全く書いた覚えの無い話しです。だいたい、題名が「白雪姫みたいな恋なんて」などと、かなりふざけていますから、書き終えてから1度も日の目を見ずに秘匿されていたのでしょうか。(もう1編も「4月1日では遅すぎる」という変な題だけれど)

 僕は、高校生の時、小説がすごく好きで、放課後に学校の図書館で中央公論などに連載されていた庄司薫の「白鳥の歌なんか聞こえない」や、三島由紀夫の「豊饒の海」4部作の「天人五衰」などを一所懸命読んでいました。三島が市ヶ谷の自衛隊に乱入して切腹した時には、まだ「天人五衰」が連載中だったので、続きはどうなると心配したのを覚えています。結局、三島は原稿を書き上げ、編集者に渡してから事に及んだとの事で、無事連載は完成しました。

 そこで、今回発見?された僕の原稿ですが、文体といい、モチーフといい完全に庄司薫のパクリです。多分、初めて書いた作品?なのでしょう、忘れていたのも無理無いのかもしれません。今読むと、とても鑑賞に耐えられない駄文であります。贔屓目で見ると、当時の高校生の生理現象が書き込んであって、それだけは、今読むと面白いような気がしますが。

 それにしても、その頃(高校から大学生時代)のことは、ほとんど覚えていると自信があった僕の考えが、全くの誤解であったことはわかりました。この分だと付き合ったガールフレンドのことも、1人や2人、忘れているかもしれません。数も多かったし(うそだけど)。

 歳をとったって事ですかね、いや、老人力が付いた、と。いろいろとその頃の事を思い出そうとしてみると、かなり欠落が有る事があらためて解かりました。高校の校舎が一部プレハブだった事も忘れていた。(来年が、高校創立100年なので、プレハブ校舎などの思い出を書いてくれって言われて思い出した。)

 それでも、自分が好きでやっていたブルーグラスの歌詞は忘れていないから、何なんでしょうか。僕の場合、歌が好きなので、いろいろなジャンルの歌を歌えると思います。今でも歌詞が入っている歌は、ブルーグラス以外でも、60年代ポップスや、ビートルズをはじめとするリヴァプールサウンズの英語の歌詞、カレッジフォーク(嫌いだったけれど)、グループサウンズ、などなどいくらでも有る。まあ、その辺まで忘れてしまうようになると、いよいよアブナイのでしょうね。せいぜい頭を使っておこうと思います。

   2000年9月2日   アンクル・ハーリー亭主人

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2000.9.2掲載