西暦2025年8月、私は5人の同僚と火星へと旅立った。6年前に火星に向かった友人、株元博士からの救難信号が速達で届いたからである。おまけにそれは料金不足であった。何故救難信号が速達の料金不足で届くのかは、本編の主題ではないので割愛する。

 私と株元博士は宇宙旅行期間を画期的に短期間にする、空間活断層利用航宙法を開発実現し、6年前には株元博士自らが率いる金星探検チームが宇宙船キントト号で、8泊9日(うち機内泊2日)の旅に出たのである。しかし、彼らが空間活断層に突入したのが確認されてから、今まで何の音沙汰も無く今まで手をこまねいているきりであった。

 ところが救難信号は火星から届いたのであった。驚いた私たちはかねてより準備していた宇宙船キントト2号改に乗り、すぐさま救助に向かったのは言うまでも無い。

 この6年の間に私は空間活断層利用航宙法をさらに凌駕する、空間磁気断面平泳ぎ航宙法を開発し、火星までの飛行時間を6時間に短縮していた。これはなんと光の速度の1%に近づく驚異的な速度である。アインシュタインもビックリである。その原理に付いては現在執筆中の著書に詳しく書いてあるのでそちらを参考されたい。

 という訳で、株元博士を救出に向かった我々であったが、前途には思わぬ障害が有った。太陽である。空間磁気断面平泳ぎ航宙法の欠点は、推進力が弱く、大質量の天体の近辺を飛行できないことであった。我々が出発するときの地球と火星の位置関係は、直線で結ぶと太陽の僅か250万kmの所を通過する事になる。実際にこのコースを飛べば、確実に太陽面に落下する事になるということである。太陽の周辺は空間磁気密度が高いとはいえ、我々の宇宙船では絶対的にパワーが不足していた。この状況において、我が開発クルーは苦肉の策を考え出した。空間磁気断面平泳ぎ潜水航宙法である。

 空間磁気断面平泳ぎ潜水航宙法の詳細も拙著に詳しく解説する予定であるので、本文では割愛する。速い話が太陽面に近いところでは潜水(もちろん水などは無い宇宙であるから比喩である)して太陽熱を避けるという事である。そんな事が出来るのかと疑う人はあっちに行っていて欲しい。とにかく、太陽熱と引力を、あたかも水に潜水するように避けると言う事なのだ!!!(興奮)

 ということで、我が宇宙船キントト2号改は勇躍月面基地を発信したのである。わずか20分で最高速度まで加速したキントト2号改は火星に向けて真っ直ぐに弧を描いたのである。(なんだ?)約5時間で太陽面をかすめる様に通過した我々は、太陽の引力により、減速を開始した。火星を肉眼で捕らえるまで10分ほどかかったが、予定通りのコースを飛行しているようだ。

 火星の表面からはキントト1号の救難信号が依然として発信されている。いったい何が起きたのだろうか、何故金星に向かったはずの宇宙船が火星にあるのだろうか。我々は平坦な場所に宇宙船を着陸すると、救難信号の発信源に向かった。

 火星の地表はコロラドの砂漠を思い出させる。見渡す限り赤い岩の連なりが続いている。小高い岩山を越えたとき、前方に光るものを見つけた。キントト号であった。いや、キントト号の残骸であった。乗組員の姿は見えない。果たしてこの続きはどうなるか、ちょうど時間となりました。またの機会にこの続きをお伝えしましょう。

         2003年3月22日 アンクル・ハーリー亭主人

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2003.3.22掲載