前略、この頃しきりと夢を見るようになりました。その夢とは、料亭で直木賞の受賞の報を待ちながらみんなで人生ゲームをしている夢です。時にはゲームがバンカースであったり、オイチョカブであったりはしますが、おおむね賞の知らせを待っていると言う基本シチュエイションは変わりません。

 これは、僕がいずれ賞を取るか、常習とばく罪で摘発されるかのどちらかではないかと思います。このうち、賞を取る可能性は大変低いと断じざるをえません。その結果、残る可能性は常習とばく罪ですが、こちらも現実の僕は、さいころを持っても鳥肌が立つくらいのとばく嫌いですので、どう見ても冤罪としか思えません。

 元々僕は、冤罪に問われやすい体質で、満員電車に乗ると必ず痴漢に間違えられたり、街を歩いていてSMAPの稲垣吾郎に間違えられてサインを求められたりします。また、自転車に乗っていると、必ずと言っていいくらい、パトロールの警官に呼びとめられて自転車の窃盗犯に疑われたりします。

 先日は、横断歩道の手前で一時停止をしただけで駐車違反の疑いをかけられましたし、赤信号を無視しただけで脱税の疑いを受けました。このままだと、人を殺せば殺人罪に問われそうです。(あっ、あたり前か)

 そういう訳でなかなか安心して外出も出来ない近頃の僕ですが、家にいても安心できません。妻のとっておいたヨックモックのクッキーが消えたときも、疑いをかけられましたし、焼き魚が食卓から消えても、猫より僕の方に疑いの視線がより多く注がれるのです。

 こういう閉塞的状況が僕に夢を見させるのか、夢を見るので疑心暗鬼になっているのか、どちらなのかは僕にも良くわかりません。どちらにしても僕に落ち度が無い事は明白で、このまま不条理な眠りを眠る事には耐えられそうに有りません。

 そんな状況でしたが、昨夜はついに交通事故を起こす夢を見ました。高速道路のカーブでハンドルを切り過ぎ、車が横滑りを始めたのです。その時はとっさにカウンターハンドルを何回か繰り返して車のコントロールを回復したのですが、何故か前方が渋滞していて、そのまま突っ込んでしまった、という複雑な夢です。

 夢はなおも続き、渋滞した車を避けるため、僕は路肩に車を突っ込ませたわけですが、車は大破したのに、僕はキズ一つ負わずに車の横に立っていたのでした。そして、何故か横には同乗していたと思われるK氏が、同じくキズ一つ無く立っていたのです。K氏は僕たちが中学を卒業する時に、同じ女の子に告白して2人とも断られた、という数奇な運命で結ばれた古い友人です。思えば、その時の経験がトラウマとなって夢になったのでしょうか。

 あまり夢を見ない体質だった(要するに忘れっぽいのか)僕が、この頃よく夢を見るのは何故か、このあたり、フロイトが生きていたら分析を依頼したいところですね。どちらにしても、あまり実現したくない夢です。

 文学賞の方も、出来れば遠慮したいところです。もっとも、賞を出す方から全面的に遠慮されそうな気がします。ホント。

 と考えていたら、妻が車で帰ってきた。危うく4重衝突に巻き込まれるところだったとか。僕って予知能力が有るのかな。

         2003年1月25日 アンクル・ハーリー亭主人

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2003.1.25掲載