ハルサヒは見た。夜の空を燃える獅子が駆けているのを。西から空を駆けてきた獅子は、大きな炎と地鳴りをあげてハルサヒの住む村はずれの森の中に落ちたようだった。村人はすぐにハルサヒのいる広場にやってきて、何事かとハルサヒに聞く。
ハルサヒはこの村の若者たちを束ねている賢く、屈強の男だ.村を治めているのは長老達だが実質的に村人はハルサヒを頼りにしている。今も村人たちは彼が口を開くのを不安そうに見守っている。
コズチはそんなハルサヒを小さな頃から兄のように慕っていた。今はまだ親と一緒に暮らしているコズチだが、将来はハルサヒの家で暮らしたいと思っている。もっとも、それはハルサヒや長老たちが決める事だが。
ハルサヒが見つめる方向には不思議な色の光があった。山火事の色とは違う、日の光とも違う、山の頂上にあるミドリの池のような色をした光が森の中からこぼれてきている。あれが長老たちの言う「神」だろうか。ハルサヒは考えた。「神」なら自分は会ってみたい、いろいろ聞きたい事があるし、自分たちが生きるために頼みたい事がある。
ハルサヒは自分を取り囲んだ村人たちに言った。
「夜が明けたら、俺が行って様子を見てこよう。それまでは、みんなは休んでいてくれ。」それからハルサヒは、村人たちを家に戻らせて、何人かの若者と共に広場の中心にあるやぐらに登り、森の奥の方を見張りながら、夜が明けるのを待った。
やがて、東の空の星が消え始め、明るさが次第に増してきた。森の中に光は朝に光の中でもはっきりと見えるほど明るい。
ハルサヒはやぐらの下の地面が見えるだけの明るさになって、若者たちに言った。
「行こう。」
村から森の入り口まではわずかな距離だ。それでも、朝日が真っ暗だった森の道をはっきりと照らし始めている。
森の奥にあるものは、変わりなく光を放っている。光りのせいで近くに見えたが、思ったより遠くに有り、かなりの大きさを持ったもののようだ。
ハルサヒを先頭に、村の若者たちは、それでも恐れを知らぬげに、森の木をめぐりながら、速い足取りで近づいて行った。
「恐れる事は無い。」
ハルサヒは、若者たちに言った。ハルサヒには、その光るものに懐かしさのようなものを感じていた。危険なものではない事が直感できた。その時、光るものの壁の一部が音も無く開き、中からハルサヒたちと変わらない体格のものが姿をあらわした。
「恐れる事は無い。」
その言葉は、ハルサヒの頭の中に直接語りかけられた。
ハルサヒは、さらに前に進むと、頭の中でまたその声が語りかけた。
「ディズニーランドへようこそ。」
ナンチャッテ。
2002年12月14日 アンクル・ハーリー亭主人