前略、K君がおととい、ひょっこり顔を見せました。このところ、連絡が途絶えていたので心配していたのですが、見たところ、元気な様子でした。しかし、僕は臨床経験のある医師ではないので、彼が本当に健康なのかは保証できません。おそらく、彼自身にも保証は出来ないでしょう。僕がはっきり言えるの事は、彼が息を引き取るまでは生きているだろうという事だけです。(この場合、脳死問題は例外とする)
身長185cm、体重100kgを越える偉丈夫がすっかりやつれて海外の仕事から帰ってきました。パスポートの写真との変わりように、出入国審査で何回も止められたとか。僕もお土産にウィスキーをもらうまでは、K君とは気が付かなかったくらいです。さらに追加のお土産が別便で届くと聞いて、本当にK君であると認めるにやぶさかでない気持ちになりました。早く別便のお土産を確認して本人と認めたいところです。
K君は先のサッカーW杯で大活躍をした選手に似ていると自分で言っているけれども、少しもそんな事は無く、大変繊細な神経の持ち主なのです。そんな彼が、なぜ痩せてしまったのか、僕個人もいろいろと事情があって知りたいところですが、彼としても特段思い当たるところが無いそうです。
ただ、毎日3度しか食事を摂れなかったからではないかと言っています。いつもは何回食事を摂っているのか聞いてみたところ、なるべく5回を下回らないようにしているとの事でした。何の事は無い、いわゆる穀つぶしというやつです。
穀つぶしと言えば、K君の海外での仕事というのも、穀類をイナゴの被害から守る対策の研究だそうです。その前に自分が食う量を減らせば、イナゴもそれほど脅威ではない事に気が付くと思います。
とはいえ、何百万という数のイナゴが一斉に麦畑を襲って裸にして行く光景は、恐ろしいものだそうです。K君の顔も恐ろしいですが……。イナゴの恐ろしいところは、食いものが無くなると次の食事を求めて飛ぶために羽が長く伸び、長距離飛行に耐える体格に変身するということだそうです。仮面ライダーの作者もこの事を知っていたに違いないと彼は言います(ホントかね)。
とにかくこのイナゴという奴は、麦といわず米といわず、とうもろこし、牧草など、食べざるもの無しとの勢いで全てを食いつくしてしまうそうです。貯蓄という思想が無いのですな。最後は食べるものが無くなって自分たちも死んでしまう。馬鹿だといえばそれまでですが、人間もそれに似たような事をしているように感じるのは僕だけでしょうか。
イナゴたちは発生と共に自らの種族の破滅へと走り出します。破滅が何世代後に来るか、などは意識していないでしょう。同じように、我々人類も種族が発生した瞬間から、破滅の淵へと走り続けているように思えてなりません。僕のこの心配が杞憂である事を願うだけです。
話が急に哲学的になりましたが、この辺が僕のただでは起きないところです。300円くれれば起きますが。いかがでしょうか、この人類イナゴ説。反響によっては、さらに人類人間説などを開陳してみたいと思います。
2002年11月2日 アンクル・ハーリー亭主人