まず、登場する電車は、京玉線(けいぎょくせん? けいたません?)と呼ばれているようです。もちろん、京王帝都京王線に、非常に良く似ています。
東京西部の私鉄に詳しくない人のために、簡単に説明しますと、京王帝都京王線は、新宿を始発として、調布、府中などを経由して、八王子に至る私鉄通勤電車路線です。京王とは、東「京」と八「王」子の略です。主要な支線としては、東京都民の手軽なハイキング用の山、高尾山の登山口、多摩動物公園、調布の競馬場、多摩ニュータウンを経て横浜線の橋本へ行く路線があります。最後の路線は、「平成狸合戦ぽんぽこ」に登場した電車路線と考えて良いでしょう。
京王線の特徴を一言で言えば、「地味」と言えると思います。小田急のロマンスカーのような特別な列車はなく、事実上、全部通勤用の車両です。これは、けなしているわけではなく、通勤ラッシュの時間帯に、ガラガラのロマンスカーを忌々しげに見送った経験のある人なら、むしろ好ましい特徴だと感じられるはずです。
現在使用されている主要は車両は以下の4系統です。
これらを簡単に見分けるには、車体の内外にある4桁の番号を探し出して、その下3桁をゼロと見なして読めば良いです。
では、5000系モドキは、どこが謎なのでしょうか。
車内の雰囲気、前面のデザインなどは、5000系のように見えます。しかし、次の二つの点で、5000系とは異なっています。
まず、第1に、ドアが両開きであること。5000系は、片開きドアであって、両開きドアの車両はまったく存在しません。
第2に、前面と側面の接する箇所が角張っていること。5000系は、電車にも優雅なデザインが惜しみなくつぎ込まれた古き良き時代に生まれたのです。前面から側面にかけて、曲面で構成されているのです。これは、かなり雰囲気が違います。
もう一つ、戸袋窓のない電車が描かれているカットがあります。戸袋とは、ドアが開いたときに、ドアが収納されるスペースです。戸袋に相当する箇所は、普通の窓とは別に小さめの窓が付くことが多いです。この窓が描かれていないカットがあります。現在の京王線では、5扉の6000系のみ戸袋窓が存在しない以外、他の車両にはすべて戸袋窓があります。
さて、リアルに描き込まれているはずのジブリ作品の中で、しかも、現代の社会の描写に力を入れているはずの映画の中で、どうして、妙な電車が出現してしまうのでしょうか。
例えば、「さらば愛しきルパンよ」の中で、ニセ銭形が中央線に乗っているシーンがあります。このシーンを見て、リアルだと思ったら間違いです。なぜなら、通常の乗客の目に入る場所はきちんと描かれていますが、屋根上がでたらめだからです。本来、車両中央にあるべき集中型クーラーが、先頭車両の先頭部分に描かれています。
別の例をあげましょう。アニメでよくあるパターンが、全車両にパンタグラフが載っているという描写です。通常の直流用の電車の場合、電動車2両の1ユニットに対して、付随車が1〜2両の割合で編成が組まれます。電動車の1ユニットの中で、パンタグラフを持つものは、通常は1両ですから、3〜4両ごとにパンタグラフ一個の割合というのが自然です。
それらに比べれば、映画「耳をすませば」はかなりマシな部類に入ります。しかし、既に述べたように、それでもおかしいと感じられる描写があります。このあたりは、おそらく、適当に収集された資料を見ながら作画をしたのが原因ではないかと思います。たとえば、側面は6000系の写真を、前面は5000系を。あるいは、部分を描くために戸袋窓のない5扉の6000系の写真を見てしまい、食い違いが出るなどのことが起こっているのではないかと推測します。
アニメで鉄道をちゃんと描いて欲しい。というのはまだ叶えられない1ファンの夢なのです。
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