ペプシノ−ゲン検査の意義


血清ペプシノーゲン値で胃癌の高危険群をスクリーニングする方法をペプシノーゲン法と呼びます。
通常の胃癌検診では、間接X線法(バリウムを飲んで撮影するX線検査)を用いてスクリーニングし、癌の疑いのある人々を内視鏡にて精密検査するのが一般的です。

ペプシノーゲンとは胃液中に分泌される蛋白分解酵素ペプシンの前駆体であり、ペプシノーゲンT(PGT)とペプシノーゲンU(PGU)に大別されます。PGTは主として胃底腺の主細胞より分泌され、PGUは胃底腺の他に噴門腺、幽門腺、十二指腸腺に存在し、両者とも血中に存在しています。胃粘膜の萎縮が進むにつれ、胃底腺領域が縮小していくためPGTの量やPGTとPGUの比率が減少します。この度合いによって、胃全体の萎縮の進行度がわかるというわけです。
PGT値≦70ngかつPGT/U比≦3が基準値とされています。

今までの調査で胃の萎縮が進む程分化型腺癌が発生しやすいことがわかっています。ペプシノーゲン法をスクリーニングに使用すれば、血液検査のみで胃の萎縮の進行している人、すなわち胃癌発生の危険のある人を絞り込めるわけです。
そのため、幾つかの自治体ではすでに胃癌検診に血清ペプシノーゲン法を取り入れています。その結果間接X線法に匹敵する胃癌発見率があり、さらに早期胃癌の割合が高かったと報告されています。

しかし、一方でペプシノーゲン法には欠点が指摘されています。萎縮と関係なく発症する未分化型腺癌や、間接X線法では容易に診断できる進行癌が逆に見逃されると言われています。ペプシノーゲン法はあくまでも胃の萎縮のマーカーであり、癌の特異的マーカーではないからです。要するに結果が陰性でも必ずしも癌がないということができないということです。

そこで現在適切な方法と考えられているのが、ペプシノーゲン法でまずスクリーニングし、陽性になった人は内視鏡検査による精密検査を受け、陰性者は従来のX線検査を受けるというものです。

いずれにせよ今後においてこの検査の位置付けがはっきりしてくることと思われます。