オーディオ用オシレーター(発信器)

TEXIO AG-203E

部屋の音響調整における秘密兵器を紹介します

2012年11月5日


出力端子はバナナからRCAに改造。

 

TEXIO AG-203Eによる部屋の定在波の同定

 DEQ2496のパラメトリック・イコライザー(PEQ)を用いて、無数にあるる定在波の中でも特に害がある周波数を取り除いています。調整方法はこちらをご覧ください。

 壁が完全に吸音する無響室で聞いているのでない限り、部屋の大きさに基づく共鳴(定在波)は、確実にあります。それが部屋独特の音になるので、その音が好きならそのままでよいのですが、害を感じて取り除きたければ、まずは周波数を正確に同定しなければなりません。そのために使うのが、このオーディオ発信機です。

定在波とは部屋の共鳴

 例えば、天井の高さが2.4mの日本の多くの家は、70Hzの音は部屋の中央の高さでは消えます。天井と床との反射がキャンセルするからです。一方、その倍の周波数140Hzでは、部屋の中央の高さでは、ピークがでます。それでは、ブーミーな音になってしまいます。逆に天井が高い部屋は音がいいことが多い理由でもあります。

 私の部屋は、これに加えて、前後が4.8mで天井高さの二倍に近く、70Hz付近に、高さの1次共鳴に加え、前後の2次共鳴が加わり、大変なことになってます。

 定在波によって耳の位置でピークになる周波数は、当然ながらカットして取り除くべきです。 定在波が立つということは、耳障りなだけではなくて、左右どちらのスピーカーから音が出ていても、おなじ定位に聞こえるということで、ステレオ定位に大きな悪影響を及ぼします。
 
 一方、定在波により、耳の位置で消える音を、イコライザーで増幅するのは難しいと言えます。部屋の音響的にキャンセルされているなら、ブーストしてても、あまり大きくならないのです。無理にブーストしようとすると、ウーハーに無理がかかり、しかし音はキャンセルされて出ず、百害あって、一利なしなのです。

 加えて言えば、左右の定在波では、その定在波の谷(音が最小の位置)が頭の真ん中にあるなら、右耳と左耳で位相が反転していることになります。そんな音があってよいわけはありません。
 
 谷も、ブーストどころか、逆に、できる限りシャープにカットしてしまう というのが、私の考え方です。
 スピーカーに無理がないよう「谷をブーストするな」という意見はよく聞きますが、「カットすべき」と言う意見は、私は聴いたことがないです。

 でも、
共鳴は、それが谷でも、腹でも、カットが正しいと私は思っています。

 

 この定在波の同定には、発信機を使って20Hzからだんだん周波数を上げて行き、音が消える周波数(本当にあるんです)や、音が急に大きくなる周波数を探していきます。それが耳の位置で腹や谷が発生している周波数。その中でも、とくに悪さをしそうな周波数(右と左で位相が逆とか、二つの共鳴が重複していてやたらと大きい音とか)をパラメトリックイコライザーでカットします。

 

 最初、これには、周波数が正確に読み取れる高級なデジタル発信機がいると思って、購入を躊躇していたのですが、ある日、思いついたのです。周波数を連続可変して行き、共鳴したところで、それがカットできる周波数をDEQ2496のPEQで探せば、発信機のほうで周波数が正確に読み取れる必要はない、という事実に。

 

 これならアナログの安い発信機が使えます。なかでもTEXIO AG-203E(トップの写真)はコスト・パーフォーマンス抜群で、3万円足らずです。

 周波数は、写真のように、つまみの周囲の目盛でだいたいわかるだけですが(それでも数%程度の精度では読めますけど)、PEQでの調整には全然問題なし。周波数の目盛が正しいかどうかさえ、気にすることはありません。

 要するに、部屋の共振を見つけ、PEQを調整してそれを除去すればいいのですから。

 

 現在の除去状況は、以下のような特性です。

@低周波の深い2つのカット(1/10oct.)は、特に大きな害がある共鳴への対応です。

@814Hzのピークは、私の部屋の高次共鳴。いくつかの共鳴がたまたま重なっているらしく、かなり耳障りで、ピアノのある音だけが、ピーンと部屋の一方から聞こえるほどです。この調整で、そのようなピアノの音も、なんら違和感なく、定位します。ピアノの音にはかなり拡がりがあるので、1/10octでシャープにカットするなら、ピアノのその鍵盤の音が聴こえなくなるわけではありません。むしろ、共鳴が消えて自然な音になると思います。

@3kHz付近もカットされています。これは定在波ではないと思いますが、かなり耳障りなピークがあるのを確認したので、耳障りにならないところまで落とします。部屋の中のなにかが共振しているのかもしれませんが、今のところ、その原因を見つけることができませんので、カットしました。

こんなにカットしたら音が変らないの、とよく聞かれます。しかし、このピークの音を聞けば、誰だってカットするのが正しいとわかると思います。
実際に、PEQだけをOn/Offしてみると、音色も左右バランスも変わらぬまま、定位する音像の大きさだけが大きく変わるのがはっきりとわかり、「こんなに悪さしていたのか」と驚きます。

  

2012年11月5日

 

 

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