
真空管をアピールしない電子制御のフォノイコライザー
もう一つのカートリッジSUMIKO Starlingと組み合わせている EAR PhonoBox の音が素晴らしいので、それじゃ、Van den Hul MC-10 Special 用に、PhonoBoxをもう一台買ったらどうか、と思いつき、試しに今持っているのを移設してみたところ、結果が悪くて驚きました。相性というのがあるのです。だったら、探せば、もっと相性がよいのがあるのではないか、というバカなことを思いついてしまいました。
それが新しいフォノイコライザーの試聴を始めたきっかけでした。お世話になっているお店から、何台も自宅試聴させていただきました。感謝です。その結果、価格には関係なく、Octave
EQ.2を超えるのは相当に難しいとわかりました。そして、私が由一、驚愕したのが、この CANOR PH 2.10 でした。

真空管なのに、圧倒的な高S/N比。そのために、非常に徹底したノイズ対策がされています。トランスはエポキシ含侵コイルが金属箱に入ったシールド型。高いのでめったに使われていない。
真空管を見せるマッキントッシュとかと違い、真空管そのものを金属管で覆ってしまってシールドしている。筐体の外からは真空管であることなどまったくわからない。
さらに、電源部と増幅部は「鉄の壁」で電磁シールド。
内部の構造(外部サイト)
シールドされた真空管(外部サイト)
なかなかここまでやっているのは見かけません。そのおかげで、カタログ上は、あのアキュフェーズさえもS/N比で2dB超えることになってしまう。
C57の入力換算S/N比(Aウエイト)は-156dB
CANOR Ph2.10は、ゲイン71dBで-87dBとされるので、入力換算なら-158dB
もちろん、聞く前は、え、ほんとか?スロバキア製のアンプって大丈夫なのか?と思ったのです。しかし、実物を触ってみて、音を聞いて、実測もして、その完成度の高さに驚きました。え、こんなにすごいの・・・。
電子制御
MCでは、入力抵抗が演奏中にも、ダイヤル操作によって、リレーで切り替えられます。おかげで、音の違いもゲインの変化もよくわかります。MMではキャパシタンスが変えられます。下は抵抗が600オームの状態。Van
den Hul MC-10Sではこれを選びました。実際は、入力トランスの2次側の抵抗を変えています。

そのほかの操作もすべてリレー制御。電源をONにすると、60秒かけて真空管のヒーター電圧をあげていき、それから音が出るようになります。OFFのときは、10秒間かけてゆっくり電圧を下げる。その途中でONにするようなイレギュラーな操作をしても、ちゃんとシーケンスを守ります。すごいですね。
「昔ながらの真空管アンプ」なんてことは、Ph2.10の売りではないのです。
驚きの低ノイズ
ノイズも実測しました。Aウエイトはかけられませんが、他のイコライザとのノイズフロアの計測比較ならできます。
私のシステムでは、どのイコライザも、テストレコードの1kHz基準音が同じ音量になるように調整してあります。PhonoBoxはボリューム内蔵ですし、ほかは、ADコンバータのゲインで調整しています。したがって、以下の結果は、間違いなく、ノイズの差を表します。

そんな馬鹿な、と思って何度も設定を見直しましたが、どうやらこの実測は本当です。Ph2.10は、圧倒的にノイズが少ないのです。真空管なのにです。MCトランスで24dBもゲインを稼ぐところがポイントと思いますが、それにしても、真空管定番のハムも半導体アンプより少ないってどういうこと・・・。
下図のように、-80dBまで直読できるDEQ2496のインプットメーターでも、ノイズはゼロなのです。たまにチラッとピークノイズが入りますが、これはパルス性の外来ノイズでしょう。普通はノイズは「入力ショート」で測りますが、私の場合は、カートリッジにつないだ実際に使うときの状態のままでは測っていますので、周辺機器からのパルスノイズはカートリッジからの配線経由で入ってきます。フォノケーブルの設置位置を少し変えることでノイズが変わるのまで、実際に直読できます。

安いとはいわないけれど
この驚きの性能も、価格が最近よくある数百万円コースならわかるのですが、この円安時代に、いまや80万円以上するアキュフェーズより実売価格では10万円は安い。70万円超のフォノイコライザーを安いとは言うのはどうかとは思いますが、私にはどうしても、バーゲン価格にしか見えなかったのでした。
音の良し悪しは人によると思いますが、基本性能は完璧。音も非常に素直です。SUMIKO Starling+EAR PhonoBox には、アナログ録音のクラシックを、そして、Van
den Hul MC-10には、ボーカル、ポップス、そして1980年代のデジタル録音アナログレコード の音を担当させています。その期待に十分すぎるほど答えてくれます。小椋佳の声を聞いた瞬間に、これは買うしかないな、と思ったのでした。クラシックの声楽曲も女性ボーカルも、サ音が目立たず、しかし、リアルです。
私が信頼するドイツのLowBeatsでも非常に高い評価です。
大きいのが唯一の弱点
私のシステムの中で、一つだけ困ったのは、置き場所でした。何しろ大きい。導入にあたって、一番考えた点でした。結局、アキュフェーズDP-720
の上に置くしか答えはありませんでした。重量は14kgなので大丈夫でしょう。アナログを聞くときは、当然ですが、DP-720 の電源はOFFです。

置いてしまえば、それほど違和感はなかったです。周りが大きいですから。
2025年8月
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