<あ>
あいぐすり(合薬):「やかんなめ」その人の体質にあって効能のある薬。あいろ(文色):「がまの油」様子。ものの区別。「物の文色と理方がわからぬ」と使われる。あおぎなこ(青黄粉):「茶の湯」青大豆を炒り、ひいて粉にしたもの。あおざしごかんもん(青緡五貫文):穴開き銭の穴に紺染めの細い麻縄を通し、結んだもの。1文銭1000枚で1貫あるいは1分、4分で1両。5貫は1両と1分に相当する。→さし。あかいわし(赤鰯):手入れを怠って赤く錆びた刀。それを持った武士をあざける言葉。あがりがまち(上框):家の上がり口にあるかまち(床の端に使われる横木)。あきばさま(秋葉様):「牛ほめ」火の神。火伏せの神。あげいた(上げ板):板の間の板を取り外せるようにしたもの。あげだい(揚げ代):遊女を呼んで遊ぶ代金。玉代(ぎょくだい)とも。あねがわのかっせん(姉川の合戦):「浮世床」元亀元年(1570年)。織田信長と浅井長政、朝倉義景連合軍が戦った合戦。あらい(洗):「青菜」「鯉が高い」冷水で洗い、身を縮ませた刺身。あらものや(荒物屋):日用雑貨を売る店。あわせ(袷):裏地の付いた着物。反対は単衣(ひとえ)。いちぶ(一分):貨幣単位。千文。一両の四分の一。四朱。現在の約1〜2万円。いちもん(一文):貨幣単位。一両の千分の一。現在の約10〜20円。いちりょう(一両):貨幣単位。一両=四分=四千文。現在の約4〜8万円。いっかいり(一荷入り):「壷算」荷は水壺の容量単位。人間一人で担げる量を一荷としたという。いっしゅ(一朱):貨幣単位。250文。現在の約2,500〜5,000円。いどのちゃわん(井戸の茶碗):「井戸の茶碗」高麗茶碗の一種。李朝初期、朝鮮慶尚南道の産と言われ、室町末〜安土桃山期に日本に持ち込まれた。天正年間には中国産の唐物茶碗を凌ぎ、抹茶茶碗の最高位に置かれた。秀吉の朝鮮出兵は大量の朝鮮の茶碗と陶工を日本にもたらし、茶碗戦争とも呼ばれている。いとま(暇):辞職のこと。いとまごい(暇乞い):辞職を願うこと。いのこり(居残り):「居残り佐平次」金が払えずに遊郭から帰してもらえない状態。いまどやき(今戸焼):「今戸焼」。東京の浅草の今戸で作られた素焼きの土器。天正年間頃に始まったらしい。いろ(情夫)「三枚起請」:(主に男の)愛人。想いを寄せる男。いんぎょう(印形):「三方一両損」印判。はんこ。うずらもく(鶉目):「牛ほめ」屋久杉の異称、鶉目の木目を持つ事から。鶉目は鶉の羽に似た模様の木の木目。うつのみやつりてんじょう(宇都宮釣天井):「湯屋番」宇都宮城主の本多正純が徳川家光を殺そうと、城に釣り天井を仕掛けるが事が露見して処刑されると言う話。湯屋番では「本多謀反の飯」と続くが同じ意味。うま(馬):「付き馬」の略うもれぎ(埋もれ木)「金明竹」:久しく、水中または土中に埋もれ、半ば炭化した木。黒茶色で材質が堅く、細工物に用いる。うら(裏):同じ遊女と二度目に会うこと。うらをかえす(裏を返す):同じ遊女に二度通うこと。初会から三日以内でなければ裏と言わなかったらしい。うるのこごめ(粳の小米):「孝行糖」粳米。うろん(胡乱):疑わしく思うこと。うんざ(運座):出席者が俳句を作り、秀句を選ぶ集まり。えな(胞衣):「まんじゅうこわい」胎児を包んだ膜と胎盤。えもんざか(衣紋坂):江戸市中から吉原へ行く際、日本堤と吉原の間にあった坂。吉原に行く者が、ここで衣紋を直したことからこの名が付いたと言う。えんじ(遠寺):「野ざらし」「お化け長屋」遠くにある寺。「どこで打ち出だすか−の鐘、陰にこもって物凄く…」。えんぶだごん(閻浮檀金):「お血脈」閻浮樹の森林を流れる河の中に産出すると言われる砂金。おいらん(花魁):一般に上級の女郎のこと。落語では狐狸は尾で化かすが女郎は尾が要らないのでおいらんと言った、と説明されるが、若い女郎などが「おいらの(太夫)」と呼んだのがなまったものという説もある。おいらんどうちゅう(花魁道中):「千早ふる」吉原で花魁が遊女屋から茶店まで、禿や新造、遣り手などと共に歩いたのを旅に見立ててこう言った。おおどう(大胴):大太鼓の別名。「おおど」とも。おうばくさん(黄檗山):「金明竹」中国福建省にある山。おおもん(大門):「明烏」「付き馬」等吉原の出入口にあった門。医者以外は駕籠で入れなかったと言う。おかばしょ(岡場所):吉原以外の女郎屋。おはぐろ(お羽黒):歯を黒く染めること。江戸時代の既婚女性の習慣。かね。鉄漿。おはぐろどぶ(御歯黒溝):吉原の周囲を巡らしていた堀。遊女の逃亡を防ぐために設けられていた。おれくち(折れ口):弔いのこと。おんばこ:「がまの油」オオバコ(オオバコ科の多年草)のこと。
<か>
かいのくち(貝の口):男の角帯の結び方の一つ。かえんだいこ(火焔太鼓):「火焔太鼓」縁に火炎模様のついた雅楽の太鼓。かくほう(郭法)「五人廻し」「お見立て」:郭の法律。かくやのこうこ(覚弥の香々):古漬けを水で洗い、生姜と一緒に細かく刻んで醤油をかけたもの。 かくやは覚弥という僧侶の名前とも、一晩置いたもの(隔夜)だから、とも言われる。かさ(瘡):梅毒。かさく(家作):人に貸して収入を得るために持っている家。かさっかき(瘡っかき):梅毒にかかっている人。かじち(家質):家屋を借金の抵当物件にすること。かっきょ(郭巨):「二十四考」中国後漢の人。親のために子供を埋めようとしたところ黄金が出た。親孝行の逸話として語られる。かね(鉄漿):→おはぐろ。かまち(框):
床の端に使われる横木。かみいれ(紙入れ):「紙入れ」紙幣を入れる財布。かむろ(禿):遊女屋に奉公に出された少女。花魁の身の回りの世話をした。かやり(蚊遣り):蚊遣り香や蚊遣り木などを燻して蚊を追うこと。また、そのもの。かいぶし。ガラッポン:「狸賽」他サイコロ賭博。ちょぼいちや丁半のこと。壷を振る音から。かりくら(狩倉、狩競):「道灌」狩猟のこと。かわらけ(土器):「愛宕山」「浮世床」釉薬(うわぐすり)をかけてない素焼きの陶器。がんがさ(雁瘡):痒疹、痒疹性湿疹の総称。かんかんのう:「らくだ」中国の清楽の楽曲「九連環」からとった俗謡と舞踊。 文政年間に唐人踊と共に流行した。歌詞は「看々那、九の連子、九は九連子、九は九連々、三叔阿・・・・(かんかんのう、きゅうのれんす、きゅうはきゅうれんす、きゅうはきゅうれんれん、さんしょならえ)」と続くかんきん(看経):「たらちね」経文を黙読すること。かんざまし(燗冷):「孝行糖」一度燗をした酒を冷ましたもの。かんぺいしき(観兵式):「蛙茶番」「権助芝居」天皇が兵隊を謁見する式。がんにんぼうず(願人坊主):依頼人に代って願かけの修行や水ごりなどをした乞食僧。きいっぽん(きいっぽん):「ちりとてちん」当時は寒作りして火入れ貯蔵した酒をそのまま樽詰めしたもののこと。現在は酒税法で規定されており、自社の単一の醸造所で醸造した純米酒にしか使用できない。きかく(其角):「牛ほめ」宝居其角。江戸の俳人。きぐち(木口):材木の種類、等級。きさんじ(気散じ):「たぬき」気楽なこと。のんき。きしゃがさ(騎射笠):「道灌」騎射のときにかぶる笠。藤や竹で網代に編んだ物。ぎだゆう(義太夫):「寝床」「豊竹屋」「胴乱の幸助」「軒付け」「ジャズ息子」浄瑠璃の一種。竹本義太夫が作り上げた。ぎゅう(妓夫):遊女屋の客引きをする男。妓夫太郎(ぎゅうたろう)と呼ばれることもある。夜鷹の客引きや護衛などをする男。きゅうり(久離):親族の縁を切ること。「久離を切る」というように使う。きょうじや(教師屋):屏風、襖などの表面を細工する職人。ぎょく(玉):落語では玉代のことが多い。ぎょくだい(玉代):遊女を呼んで遊ぶ金。揚げ代。きらず(切らず・雪花菜):「鹿政談」豆腐を絞ったかす。切らずに料理できることから。おから。うのはな。きりみせ(切見世):切り(10分)単位で金を取った遊女屋。吉原でも端の方に置かれ、年を取ったり売れなくなった遊女が働いた。一切り(10分)百文(千〜2千円)位だったようだ。延長することを「直す」と言い、「お直し」はこの話である。きんぷくりん(金覆輪):縁飾りを金メッキしたもの。きんめいちく(金明竹)「金明竹」:マダケの栽培品種。錦明竹とも。くがい(苦界):遊女の辛い暮らしのこと。くちいれ(口入れ):奉公人などの世話をすること。周旋。仲介。仲人。口添え。くちいれや(口入れ屋):口入れを職業とする店。くれむつ(暮れ六つ):江戸時代の時刻の呼び方で、今の午後六時頃。けいあん(桂庵):縁談や奉公などの紹介をする者や店。口入れ屋。大和桂庵という医者が縁談の紹介をしたからと言われる。けいせい(傾城):遊女。色香で城主や国主を惑わし、その結果城や国が傾くことになるから。げめんにょぼさつ、ないしんにょやしゃ(外面如菩薩、内心如夜叉):「猫久」外見は菩薩のごとく、内心は夜叉(仏教に現れる鬼神のようであること。女性のこととされる。けんだい(見台):義太夫語りが目の前に置く読み本を乗せる台。けんつく(剣突):荒々しく叱りつけること。荒い小言。けんのん(剣呑):危ういこと。危ぶむこと。こうか(後架):便所のこと。家の中にあるのが内後架、外にあるのが外後架。こうし(孔子):「厩火事」古代中国の思想家。孔子の言行を集めた本が「論語」である。こうせん(口銭):売買の仲介をした手数料。こうり(行李):竹などで編んだ入れ物。旅人が荷物を入れるためのものや、衣類などを入れて押入に置いたりするもの。柳で編んだ物を柳行李と呼ぶ。こしだかまんじゅう(腰高饅頭):「まんじゅうこわい」高さが高い饅頭。ごぞう(五臓):漢方で言う五つの臓器。心臓、肺臓、脾臓、肝臓、腎臓の五つ。「夢は五臓の疲れ」と言われる。五臓六腑の六腑は胆嚢、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦(さんしょう:具体的にどこを指すかわかっていない)。こづか(小柄):刀の鞘の鯉口の部分にさし添える小刀の柄。またその小刀。こっしょうじ(腰障子):上から下まですべて障子でなく、下部が一尺ほど板になっているもの。ごとうゆうじょう(後藤祐乗):「金明竹」室町中期の彫金家。二代宗乗、三代乗真、四代光乗、五代徳乗と、江戸幕末の十七代典乗まで続いた。こはぜ:足袋に付いている留め金のこと。ごまのはい(護摩の灰):旅人の振りをして相手を油断させ金品を盗み取る賊。高野聖の扮装をして護摩の灰を売ると称して盗賊を働いた者から由来。別に「胡麻の蝿(胡麻にたかった蝿は見分けにくい)」からという説もある。こまもの(小間物):小刀や化粧品などの細々とした品物。こも(菰):目の粗い筵(むしろ)。転じて乞食のこと。お菰さん、などと使う。ごろはちぢゃわん(五郎八茶碗):「たらちね」普通の茶碗よりやや大き目の飯茶碗。元々は江戸初期に五郎八と言う陶工によって作られたと言われている。それと同様の茶碗をこう呼んだのであろう。ごんぱち(権八):「お化け長屋」居候のこと。白井権八が幡随院長兵衛のところに居候をしていたことから。
<さ>
さし(差・緡):「孝行糖」銭の穴に通す紐。紺で染めたものは「青ざし」。落語によく出てくる「青緡五貫文」は、五貫分の銭が通してある。ざっかけない:荒々しく粗野なこと。さつまのうずらもく(薩摩の鶉杢):「牛ほめ」屋久杉の異称。さとことば(里言葉):→里訛り
さとなまり(里訛り):吉原の遊女に話させた吉原独特の方言。店毎に若干の違いがあった。さはいにん(差配人):「お化け長屋」「小言幸兵衛」土地や家の持ち主に変わって、それを管理する者。さやがた(紗綾形):文様の一種。落語ではお白洲で奉行が出てくる襖の模様として良く登場する。画像さん(賛):「一目上がり」漢文の一体で、人や物の美徳を賛美する物。さんぴん:侍に対する蔑称。下級武士の年収が三両一人扶持だったことから。ぴんは一のこと。ししゅく(四宿):江戸から地方へ行くときに最初に通る四つの宿場町。東海道は品川、甲州道は新宿、中仙道は板橋、奥州道・日光街道は千住の四つ。したおび(下帯):ふんどしまたは腰巻。したじ(下地):出し汁や醤油のこと。じっとく(十徳):「十徳」衣服の名。羽織丈ほどの長さで、裏地が無い。画像しっぽく(卓袱):「時そば」麺に松茸、椎茸、蒲鉾、野菜を載せたもの。じば(地場):「三人旅」雲助の隠語で2のこと。地元の遊女が200文だったためと思われる。ちなみに1はおじ。しめこみ(締込):力士が相撲を取るときに締めるふんどし。まわし。しゃ(紗):生糸を絡織にした織物で織目が粗く、軽くて薄い。しゃかん(左官)「文七元結」「三方一両損」:壁を塗る職人。さかん。しゃく(癪):病気のため胸部・腹部に起こる激痛の総称。女性に多い。さしこみ。じゅうのう(十能):炭火を持って火を運ぶ道具。じゅうりょう(銃猟):「道灌」小銃で鳥獣をうちとる狩猟。しゅす(繻子):織物の一種。しょうかんろん(傷寒論):「転失気」中国古代の医書。後漢の時代の人、張機の著。しょうぎ(娼妓):遊女。じょうよ(丈余):「お血脈」一丈余り。一丈は十尺。約3メートル。じょうるり(浄瑠璃):三味線を伴奏にした語り物音楽。一般には義太夫節のこと。しょかい(初会):ある遊女と初めて遊ぶこと。しらげ(精):「たらちね」白米。しんがく(心学):「天災」心を修養する学問。じんこう(沈香):「百年目」ジンチョウゲ科の常緑高木。香木として使われる。じんこうもたかずへもひらず(沈香も焚かず屁もひらず):「百年目」良いこともせず悪いこともせず、平々凡々であること。しんしゃ(辰砂):「がまの油」水銀と硫黄の化合物。深紅色の鉱石。じんすけ(甚助):情が深く嫉妬深い性質。その性質の人。しんぞう(新造):二十歳前後の女。新妻・若妻。おいらんに付き従う若い遊女。しんだい(身代):財産。身分。しんばり(心張り):心張り棒の略。戸が開かないように押さえておくつっかい棒。すががき(清掻):遊女が張り店に出るときに、その合図に弾いた曲。すりがね(摺鉦):和楽器の一つ。縄のついた皿型の鉦で、縄を手に持って下げ、もう一方の手に持ったばちで内側を摺ったり打ったりして音を出す。縁起を担いで「あたりがね」ともいう。ずんどう(ぎり)のはないけ(寸胴(切り)の花生け):「金明竹」竹を水平に輪切りにした花活け。せんき(疝気):「疝気の虫」漢方で下腹部内臓が痛む病気。そどく(素読):「井戸の茶碗」文章の理解は別にして、声に出して読むこと。ぞめき(騒):「二階ぞめき」騒ぐこと。特に遊郭をひやかして騒ぐこと。
<た>
たかの(鷹野):「道灌」鷹を使って山野で鳥を狩ること。たのもしこう(頼母子講):会員が掛け金を払い、一定の日に所定の金額をくじや抽選で融通する組織。無尽(むじん)に同じ。たぼ(髱):日本髪の後方に張り出た部分。たゆう(太夫):吉原で一番位が上の遊女。寛永年間には75人いたが、武士の貧困化のため享保年間には10人を割り、宝暦年間にはいなくなった。ちくおんきのいぬ(蓄音機の犬):「町内の若い衆」「青菜」音響機器メーカーのビクターのマークで犬が蓄音機の前で首をかしげていることから、感心ばかりしている人間をののしる言葉として使われる。本来、ビクターのマークの犬は蓄音機から主人の声がするので耳を傾けているのであって、感心しているのではない。落語では言葉を詰めて「チコンキの犬」と発音されることも多い。ちしゃ(萵苣):「夏の医者」キク科の一年草または二年草。地中海沿岸地方原産。葉を食用とする。ちゃけんじょう(茶献上):茶色の献上帯。献上は博多帯の一種で、幕府に献上したことからこの名がある。ちゅうげん(中間):武士に付き従う従卒。ちょうちょうなんなん(喋喋喃喃):男女が楽しげに語り合う様。ちょうまん(張満):腹腔内に液体やガスがたまり、腹部の膨満する症状。ちょきぶね(猪牙舟):江戸で造られた、細長くて屋根がない、先のとがった舟。隅田川を上下した吉原通いの遊び舟に用いられた。長吉という男が作ったからとも言われている。ちょぼいち:サイコロを使った賭博の一つ。1から6のどの目が出るかに賭け、賭けた目が出ると5倍くらいの配当がもらえる。ちん(狆):犬の一品種。チベット犬やラサ・アプソに似た単吻犬種を源流とする日本の固有犬種で、江戸時代上流階級によって座敷犬として珍重された。ちんぴ(陳皮):「紙屑屋」ミカンの皮を干した物。漢方薬に用いられた。つきうま(付き馬):「付き馬」吉原などで、金の払えない客について行って、金を取ってくる役目。つきばん(月番):その月の当番。つくばい(蹲):うずくまること。つのだる(角樽):「文七元結」柄が2本角のように長くついた酒樽。つめいん(爪印):親指の先に墨や印肉をつけておした花押または印章に代わるもの。つめばん。拇印。爪形。であいじゃや(出会茶屋):男女が密会する目的で使われた茶屋。てこまい(手古舞い):女性が男髷に片肌脱ぎで伊勢袴、紺足袋、草鞋を履き、首に手拭いを掛け、背中に花笠をつけ、片手に鉄棒(かなぼう)を持って歩く。てっぽうざる(鉄砲笊):「らくだ」「井戸の茶碗」底の深いざる。てれめんていか(terementina):「がまの油」ポルトガル語でテレピン油の主成分。「テレメンティナ」の訛り。てんがい(天蓋):仏像・棺の上にかざす絹の傘。てんすいおけ(天水桶):「天災」雨水をためて防火用にする桶。てんぽうせん(天保銭):江戸時代後期に発行された銭。正式には天保通宝と言い、価値は100文だが、実際には80文で通用した。とうが(唐画):「牛ほめ」唐代の絵。中国風の絵。どうざん(唐桟):木綿の縞柄の織物。とうまんじゅう(唐饅頭):「まんじゅうこわい」小麦粉に砂糖と卵を加えて混ぜてこねた皮で餡を包み、円形や小判型にして焼いた菓子。どうらん(胴乱):「胴乱の幸助」皮で作った方形の袋。薬や煙草を入れて腰から下げる。どうろくじん(道陸神):「小言幸兵衛」道路の悪霊を防いで行人を守護する神。道祖神(どうそじん)。とうらいもの(到来物):他所からのもらいもの。とび(鳶):町火消しに属する人足。とまえ(戸前):本来蔵の扉を表わす言葉だが、蔵の数の単位にも使われた。「蔵の三戸前」などと使われる。とんび(鳶):篠笛の別名。
<な>
ないとうしんじゅく(内藤新宿):江戸から甲州街道に入り最初の宿場町。元禄11年(1698)に開かれた。現在の新宿三丁目から一丁目に当たる。内藤丹波守の用地の一部を上納して作られたためこの名がある。新宿御苑は内藤氏の屋敷地。なおし(直し):「青菜」(1)焼酎にみりんを混ぜた酒。(2)なかのちょう(仲の町):吉原の中央部を大門からまっすぐに伸びた道。中央部に桜並木があった。なじみ(馴染み):遊女に3回以上通った客。またはその相方の遊女。初めてを初会(しょかい)、2回目を裏という。なだい(名代):有名、著名。なつのあめはうまのせをわける(夏の雨は馬の背を分ける):「天災」夏の雨は馬の背の片側は降ってもう片側は降っていないというように、ここで降ってここで降らないというのがはっきりしていること。のぞきからくり(覗機関):箱の中に物語を表す絵を入れておき、これを回転させ、窓から覗かせて見せる装置。あるいはその商売。のめりのげた(−下駄)「鰻の幇間」:前部の裏を斜めに切ってのめるように作った下駄。のんこう:「金明竹」京都楽焼本家の三代目である道入(どうにゅう)の俗称。
<は>
はいせん(盃洗):「湯屋番」酒席で杯を洗うための水の入った器。ばいぼく(売卜):「井戸の茶碗」金を取って占いをすること。はなかい(花会):「三軒長屋」金を集めるために行う集会。特に賭博の会。はなまき(花巻):「時そば」もみのりを載せた蕎麦。はやおけ(早桶):「付き馬」「らくだ」「佃祭」「ちきり伊勢屋」粗末な棺桶。死人が出たとき急造するため。はりみせ(張見世)店の外から遊女の姿が見えるようにした遊女屋。ばん(番):「二番煎じ」交代で見張りをする役目。またはその役目の人の詰めるところ。ばんた(番太):番小屋の見張り番をののしって言う語。番太郎とも。はんちく:中途半端。ひきずり:「牛ほめ」ろくに働かない女。ひきつけ(引付):引付座敷のこと。吉原で客と遊女が会わせられる部屋。ここで指名した遊女と面会する。芸者やたいこ持ちを交えての酒宴となり、通常遊女と会話は交わさない。「幾代餅」や「明烏」のように最初から会話ができたのは落語の世界だけか・・・?ひけ(引け・退け):遊郭の門を閉ざす時刻。遊郭により午前0時〜午前二時頃。ひま:退職。仕事を辞めさせることを「暇を出す」という。ひやかし(素見):遊郭で遊女を見るだけで揚がらないこと。近くに紙漉き場があり、この職人たちが紙を見ずに冷やしておくのに時間があるため吉原を一回りしたことから「冷やかす」と言うようになった。ぴん(一):「狸賽」「看板のピン」数字の一。ポルトガル語で1をピンタというのが由来していると思われる。ふくべ(瓢):「野ざらし」瓢箪の中をくりぬいて乾かしたもの。酒を入れる器。ふさようじ(房楊枝):「明烏」竹の棒の端をつぶして房状にした楊枝。ふるたがや(古鉄刀木):「金明竹」鉄刀木(たがやさん)の古木。鉄刀木はマメ科の高木。へっつい(竃):「品川心中」「不動坊」「へっつい幽霊」かまど。ほいろ(焙炉):「元犬」茶の葉を焙じる炉。ほうかいにうおあり、おもなくかしらもなくなかのしこつをたつ(法海に魚あり。尾も無く頭も無く中の支骨を断つ) :「こんにゃく問答」魚という漢字の上(頭)と下(尾)を取ると田と言う字になり、中央の部分(支骨)を取ると口と言う字になる。沙弥托善は「口」という答えを期待したのである。ぼうふら:「無精床」蚊の幼虫。ほっく(発句):「牛ほめ」和歌の初句。連歌・俳諧の第一句。ぽんしゅう(ポン州):「三井の大黒」地域のことを州と呼んだ。備前・備中・備後は備州、上野(こうづけ)・下野(しもつけ)が野州、陸奥(みちのく)は奥州、信濃は信州、三河は三州、近江遠江は江州(ごうしゅう)、上総(かずさ)・下総(しもうさ)は総州と呼んだが、これらの出身者も同様に呼んだ。甚五郎は適当なところということでポン州と名乗った。ほんだむほんのめし(本多謀反の飯):「湯屋番」→宇都宮釣り天井飯。
<ま>
まおとこ(間男):夫のある女が他の男と密通すること。また、その男。まきざっぽう(真木撮棒):薪を切ったり割ったりしたもの。まきざっぽ、とも。まきばおり(巻羽織):羽織の着方で、裾を内側に折り込んで帯に下から挟んだ形。まつのくらい(松の位):最高位の遊女。秦の始皇帝が雨宿りをした松の木に太夫の爵位を与えた故事から。まぶ(真夫):遊女の情夫。まぶはひけすぎ(真夫は引け過ぎ):本当に好きな男は引けの後から来ると言うこと。まわし(廻し):「五人廻し」江戸の遊郭の風習で、一人の遊女が同時に複数の客から指名を受けていること。遊女は誰のところへ行くか自由に決めることができた。まんていか(manteiga):「がまの油」ポルトガル語。イノシシなどの脂肪。膏薬に加えたり機械の錆止めに用いる。みかえりやなぎ(見返り柳):日本堤から吉原へ向かう衣紋坂への曲がり角にあった柳。吉原から帰る客がここまで来たところで吉原を振り返ることからこの名がついたと言う。現在も何代目かの柳がガソリンスタンドの隅に植えられている。みす(御簾):簾(す)の尊敬語。すだれ。みところもの(三所物):「金明竹」刀につける3種類の装飾品。笄(こうがい)、小柄(こずか)、目貫(めぬき)の3種。みとまえ(三戸前):→とまえ(戸前)みよし:和船の船首材、へさきに出ていて波を切る木。みるめかぐはな(見る目嗅ぐ鼻):「お血脈」閻魔の庁にある男女の頭を乗せた幢(はたほこ=旗の付いた矛)。男(見る目)は凝視し、女(嗅ぐ鼻)は嗅ぐ相を示す。これによって亡者の善悪を判断するといわれる。むかばき(行騰):「道灌」熊・鹿・虎などの毛皮で作った腰から脚を覆う物。画像むく(椋):「茶の湯」ニレ科の落葉高木。むしけん(虫拳):「まんじゅうこわい」指で行う3すくみの拳。蛙(親指)と蛇(人差指)となめくじ(小指)のいずれかを出して勝ち負けを競った。拳遊びの部屋参照。むじん(無尽):「干物箱」「寝床」全員が金を出し、くじで一人が当たりとなってその金をもらえる仕組み。めぬり(目塗り):「味噌蔵」「鼠穴」火災などのときに、土蔵の戸前などを塗りふさぐこと。もっこ:わら筵を網状に編んだものの四隅につり紐を着け、土などを持って運ぶ具。もっとい(元結):「文七元結」「無精床」まげを結ぶ紙製のこより。ももだち(股立):袴の左右の腰の側面に当たる部分。もみのきれ:紅で染めた絹布。紅花を揉んで染めたため。眼病には赤いものが良いという言い伝えがあり、目の悪い者はもみのきれを眼に当てていた。
<や>
やつくち(八つ口):女・子供ものの着物の脇明きのこと。やなぎかげ(柳蔭):「青菜」→直し(なおし)。やぶいり(薮入り):奉公をしている子供が仕事を休んで実家に帰宅できる日。正月と薮入りの年に2度しかなかった。やまだし(山出し):田舎から出てきたままであること。そういう人のこと。やまのかみ(山の神):「小言幸兵衛」妻のこと。やりて(遣手):遊郭で遊女を取り締まり監督する役の女性。遣手婆とも。ゆうき(結城):結城紬のこと。ゆうじょ(祐乗):「金明竹」→後藤祐乗(ごとうゆうじょ)。ゆめはごぞうのつかれ(夢は五臓の疲れ):「鼠穴」「宮戸川」夢を見るのは内臓が疲労しているためという俗説。→五臓。よこね(横根):「がまの油」鼠けいリンパ節の炎症によって起こる腫れ物。多くは性病に起因する。よこやそうみん(横谷宗みん):「金明竹」1670〜1733。江戸時代の金工師。横谷宗与の子。横谷家の三代目。はじめ後藤家に彫金を学ぶ。幕府に仕えたが辞して町彫りとなった。「みん」は王に民。よしわらさいけん(吉原細見):吉原の店や女郎の一覧を書いた本。よすけ(四助):摺鉦(すりがね)の別名。よめとおめかさのうち(夜目遠目笠の内):「がまの油」夜見たとき、遠くから見たとき、笠をかぶってみたときは人は(特に女性は)よく見える、ということ。
<ら>
らお(羅宇):「岸柳島」「紫檀楼古木」キセルの吸い口と雁首をつなぐ竹製の管。りかた(理方):「がまの油」理屈。原理。「物の文色(あいろ)と理方がわからぬ」と使われる。りゃんこ:侍のこと。”りゃん”は数字の2を示す中国語だが、刀を2本さしていることから。れき:指示語。「これ」「あれ」。「これ」が逆になり、それが訛ったものと思われる。単に「これ」を逆にした「れこ」は良く「女」の意で用いられる。ろ(絽):織物の一種。横糸数本を平織りにし、それに縦糸の一部を絡ませて透き目を作った絹織物。
<わ>
わかいしゅう(若い衆):遊郭に勤めている男性。わかいしゅ、わけえしゅとも。わや:関西の方言で、だめなこと、無茶なこと、乱暴なこと。わりき(割木):薪を縦に割って細くした棒。