ゲーム研究室


アクワイヤの部屋

戻る


はじめに

ボードゲームファンの中で人気も評価も高く、長く愛され買われているゲーム、 といえばおそらくアクワイヤが一番ではないかと思います。当会でもかなりプレイ回数が多く、 ボードゲームの中ではおそらく最多ではないかと思います。

アクワイヤとは

既にご存じの方も多いと思いますが、アクワイヤはホテルの株式売買のゲームです。 作ったのはゲーム作家として有名なシド・サクソンで発売は1962年。初めは3M (スリーエム)社から発売されていましたが、後にアバロンヒル社に移り、 現在でも売られています。

アクワイヤの誕生

ではシド・サクソンではどのようにしてこのゲームを作ったのでしょうか。 イギリスのゲーム雑誌「GAMES」に、 ブライアン・ウォーカー氏とのやりとりが載っています。
『アクワイヤはどのようにしてできたものなのでしょうか?』
『最初は”ロト”(編集部注:ビンゴの様なものと思ってください)でした。 私はこれが面白くありませんでした。が、列を揃えようとするアイデアは気に入ったのです。 そこで数字の代わりに色の違う国にしてみました。タイルを並べていき、 違う色が隣り合うと大きい国が小さい国を飲み込むようにしました。』
『ではアクワイヤは元はウォーゲームだったのですね。』
『そうなんですよ(笑)。舞台はヨーロッパでした。 フィンランドがヨーロッパを制圧したことも何度かありました。 でも私はそれをビジネスゲームに変えたのです。』

見落としやすいルール

 アクワイヤに慣れた人はテキパキとゲームを進めていきます。 フェスティバルが7件だと株価がいくらだか知っている人もいれば、 一目で41件と判断してしまう超人(?)もいます。 しかし、日本で発売されたときに添付されたルールがやや不備だったこと、 それ以後国内で発売されたものに日本語説明書がついていなかったこともあってか、 所々誤ったルールで遊ばれているのをよく見かけます。 よく間違えられる点を幾つか挙げますので、気づいたら直していただきたいと思います。

ホテルチェーンの合併の時、吸収されたホテルの株券の処分の順番は?

 よく、合併を行った人から、持っている株券の多い順に決めているのを見かけます。 正しくは「合併を行った人から時計回りに」です。 そして全員の処分が終わってから合併を行った人が株券の購入を行います。

置けないタイルが増えてくると手詰まりになって何もできない?

 終盤になるとこのような状態になって困っている姿を時折見かけます。 でもルールはこうなっています。
「自分の順番でタイルを置く前に、置けないタイルを外に出して交換することが出来る。」
ここでいう置けないタイルとはセーフティチェーン同士を繋げることになるタイルで、 8つ目のチェーンを作ることになるタイルは含まれません。

ゲームは一つのホテルチェーンのホテルが41個以上になったときに自動的に終了する?

 タイルを置いたりチェーンの合併を行ったりした結果、41個以上になったので終わり、 としてしまったことはありませんか。
「ゲームは、一つのホテルチェーンが41個以上になっているか、 ボード上のすべてのホテルがセーフティーになっているときに、 順番に当たっているプレイヤーが終了宣言を出したら終了する」 というのが正解です。プレイヤーが終了といわなければゲームは続くのです。

ゲームは終了宣言から一周したところで終わる?

 終了宣言は分かっていても、そこで終わるのか、 一周したところで終わるのかが良く分からない人もいるでしょう。 正解は「終了宣言が出されたところで止まり、最終計算に入る」です。

終了宣言はタイルを置いたところで出さなければならない?

 終了宣言のタイミングも見落とし易い箇所です。自分の番の最初なのか、 最後なのか、あまり問題になったことは無いかもしれませんが定義はあります。 正解は「自分の番の中ならいつでも良い」です。 つまり回ってきた最初でも、タイルを置いた直後でも (合併等の処理があるなら、これは行わなければなりません)、 売買の後でも、タイルを補充した後でも、自分の都合の良い時を自由に選べるのです。

世界各国のアクワイヤ

アクワイヤは古く、また有名なゲームですので世界各国で販売されています。 そして他のゲームでも良くあるように、 ゲームの名前やホテルの名前は国によって違っているようです。 名前の多くは「ACQUIRE」ですが、ドイツでは「HOTEL HAIE」や 「HOTEL KÖNIG」というのがあります。 フランスではホテル名も違っています。株価の高い順に PRESTAGE,CONTINENTAL,IMPERIAL,ORIENTAL,LUXOR,AIRPORT,FESTIVAL となっています。 アメリカ版と同じ名前があっても価格帯が違うところが面白いですね。 AMERICANが無いのは当然なのでしょうか。

アクワイアのフェアリー(変更ルール)

ゲームのルールが気に入らないとき、もっとこうした方が面白いと言うとき、 決まってゲーマーはフェアリールールを考え出すものです。 アクワイアは有名な割にフェアリールールを聞かないゲームだと思っていたのですが ・・・・探せばあるものです。

まずはエアラインズの作者でもあるアラン・ムーン氏によるフェアリー。

「持っている株券を見せない」というルールを加えての追加ルールです。
.一つのチェーンの株券を40枚にします(元ルールは25枚です)。 ゲーム組では足りませんので2組必要になります(別に紙で作っても良いでしょう)。
.株券は1回に4枚まで買うことが出来ます(元ルールは3枚)。 一度に3種類買った場合はリベートとして銀行から$100もらえます。
.最初の合併が行われるまで、 プレイヤーは1ターンにタイル(ホテル)を1枚$100で5枚まで買うことができます。 一人のプレイヤーが持つことのできるタイルの最高枚数は11枚となります。 ただし、最初の合併が行われてしまうと元の通り6枚となり、 それ以上持っているプレイヤーは5枚以下になるまで補充ができなくなります。
.合併のボーナスは3位まで支払われます(元のルールは2位まで)。 元ルールの2位の金額を3位のプレイヤーが受け取り、 2位のプレイヤーは1位と3位の中間の金額を受け取ります。 以上がアラン・ムーン氏のルールの基本ですが、 氏はさらに2つのオプショナルルールを設けています。
.順番の決め方はタイルを1枚づつ引いて、となっていますが、 この時引いたタイルは書いてある位置に置かず盤の四隅と辺の中間に置きます。
.最初から中央の6Eと7Eにタイルを置いてアメリカンを作ってしまいます。 他にアメリカンよりも大きいチェーンができるまでは、 誰もアメリカンの株を買うことはできません。 アメリカンを大きくすることは可能です。

次はジョージ・クローシェイ氏によるフェアリー。

 それはホテルを2つ増やすことです。
 アクワイヤのホテルは株価によって高中低の3つのパターンがあります。 オリジナルのゲームでは高が2、中が3、低が2の7つのチェーンがあります。 氏のフェアリーは高と低に一つずつ増やして全部で9つにしようというものです。 選択の幅が広がり序盤の動きが早くなる、と氏は説明しています。 チェーンのマーカーはスクラブルのタイルが良いそうです。

続いてデレク・カーバー氏によるものを2つ。

 一つは短縮ルールです。盤を9×9とし、始めの所持金を$5000に、 一人の持てるタイルの数を5にします。
そして一度に盤上に作れるホテルチェーンの数を5つとしてプレイします。 これで90分で終わるだろう、と氏は言っています。
 もう一つは「破壊ルール」です。 これは「チェーンを構成するタイルの数が26以上になった時は、 そのチェーンは解体し株券は無効になる」という過激なものです。 ゲームは盤上の全てのチェーンが11以上になるか、 引くタイルが無くなったときに終了します。

最後はボードウォーク・コミュニティーで良く行われているものです。

 それはペア戦です。6人プレイで向かい合った者同士がペアを組みます。 互いに協力して一つの株を買ったり、分担を決めて買ったり戦略は様々。 もちろん手持ちのタイルを教えることは反則です。

いかがでしょう。一つ試してみませんか。やってみたら是非感想を聞かせてください。

アクワイヤの可能性

 通信ゲームといえば以前は郵便によるものでチェスが有名でしたが、 最近では電話回線を利用した通信ゲームも盛んになっているようです。 そこでも様々なゲームが行われているようですが1991年には日経mix・ テーブルゲーム会議でオンライン・アクワイヤが行われました。
 これは一人がマスター(バンカーも)になってプレイヤーの指示通りに盤と所持金や株券のデータを表示するものでした。 一見アクワイヤはこのような通信ゲームに向いていないような感じですが、 このゲーム、ちょうど一ヶ月で終了しました。
 マスターやプレイヤーの手際が良かったこともありますが、 何よりアクワイヤというゲームが、 意外にもオンラインゲームとして向いていたからだと思います。 プレイヤーが自分の手番にすることが少ないし、ある程度は前もって決まっています。 タイルを置くこと、株券を買うこと、これと多少の考慮時間だけです。
 つまりアクワイヤで時間がかかるのは現金のやり取りやタイルの勘定であって、 実際のプレイ時間は非常に短いのです。時間がかかる、重い、 と思って敬遠している人もいるかと思いますが、 そうでは無いと言うことを認識して頂きたいと思います。 後は考える時間をいかに短かくするかですが、 株券は枚数が良く分かるようにきちんと並べる、等の工夫をして頂きたいと思います。
 アクワイヤは盤が殺風景だという悪評を良く聞きます。 それは元がビンゴであったためかもしれませんが、 そのため通信ゲームが楽だとも言えるでしょう。 さらには本物の株を使ったゲームやテレビショウ等、 様々な分野で行える可能性を持っているともえます

アクワイヤの入手方法

 いつでもどこでも手に入ると思われていたアクワイヤですが、 本家のアバロンヒル社が1999年に世界大手の玩具会社ハズブロに買収されてしまいました。 その他ドイツのシュミット社でも販売していましたが現在は絶版状態です。 しかし非常に多く販売されたゲームなので、探せば中古を入手することは可能です。 当会は長年の活動によって内外のゲームショップ、ディーラー、コレクターらと幅広い連絡網を持っています。 ゲームの売買と捜索のページに登録していただければ、必ずや手に入れることが出来るでしょう。

おわりに

 アクワイヤは約30年前に発売されて以来、百万セット以上も売られてきました。 これだけ遊ばれていながら戦略本や必勝法のようなものも無く、 大会もクラブも無いのは不思議な気がします。 地味でとっつきにくい印象があるためでしょうか。 その印象にプレイヤー自身も惑わされ、堅苦しくゲームをしているような気もします。
 イギリスのポール・ジェフェリー氏はタイルにモノポリーのホテルを貼り付け、 屋根にレタリングシールで座標を書いたセットを作ってしまいました。 現在ヨーロッパで売られている盤の絵柄は高級リゾート地です。 楽しく遊ぶ工夫さえすればアクワイヤ人口はもっともっと広がるでしょう。 元々それだけの面白さを持ったゲームなのですから。

もう一言

   アクワイヤは同好会の存在も聞きませんし、 大会もありませんのではっきりしたプレイヤー人口がつかめません。 しかし、日本に入って長いですからかなりファンは多いと思いますし、 またアクも強くないのでアンチファンは少ないのではないかと思います。
 ひとつ大会でもやってみたいと思いますがいかがでしょうか。


戻る