千葉県福祉のまちづくり条例を次のように制定する。 平成八年二月二十七日提出 千葉県知事沼田武千葉県福祉のまちづくり条例
目次 前文 第一章 総則(第一条−第六条) 第二章 福祉のまちづくりに関する施策(第七条−第十三条) 第三章 公益的施設等の整備等 第一節 公益的施設等の整備等(第十四条−第十七条) 第二節 特定施設等の整備(第十八条−第二十五条) 第三節 旅客車両等、公共的工作物及び住宅等の整備(第二十六条−第二十八条) 第四章 雑則(第二十九条・第三十条) 附則 すべての人が個人として尊重され、住み慣れた家庭や地域社会で、できる限り自立し、 安全で快適に生きがいを持って暮らすことができ、そして地域社会を構成する重要な一員 として参画し、一人ひとりが思いやりの心を持ってお互いに支え合う社会の実現は、私たち 千葉県民すべての願いである。 このような社会を実現するためには、私たち一人ひとりが、自らの責任と社会を構成す る一員としての自覚の下に、一個の人間として尊重し合うことを基本に、高齢になって も、また、心身に障害があっても、社会からのサービスを平等に享受でき、自らの意思で 自由に行動し、意欲や能力に応じて積極的に社会参加でき、そして子供から高齢者まで が世代を超えて活発に交流できるように、高齢者や障害者等の日常生活や社会生活におけ る様々な障壁を取り除いていく、福祉のまちづくりを進めていくことが何よりも必要であ る。 本格的な長寿社会を迎えつつある中で、私たち一人ひとりの幸せを大切にする、活力あ る明るい千葉県の未来をつくるため、今こそ、県民総意の下、県、市町村、事業者及び県 民が、お互いに協力し、それぞれの役割を積極的に果たし、一体となって、福祉のまちづく りに取り組まなければならない。 私たち県民は、共に力を合わせ、福祉のまちづくりに取り組むことを決意し、ここに千 葉県福祉のまちづくり条例を制定する。 第一章 総則 (目的) 第一条 この条例は、高齢者、障害者等が安心して生活し、自らの意思で自由に行動し、 及び平等に参加することができる社会を構築するために行われる福祉のまちづくりに 関し、県、市町村、事業者及び県民の責務を明らかにするとともに、福祉のまちづくりの ための施策及び高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できる施設等の整備について必 要な事項を定めることにより、福祉のまちづくりの総合的な推進を図り、もって県民の 福祉の増進に資することを目的とする。 (定義) 第二条 この条例において、「高齢者、障害者等」とは、高齢者、障害者基本法(昭和四十 五年法律第八十四号)第二条に規定する障害者その他日常生活又は社会生活に身体の機 能上の制限を受ける者をいう。 2 この条例において、「公益的施設等」とは、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百 貨店、共同住宅、事務所、学校その他の不特定かつ多数の者が利用する建築物及び公共 交通機関の施設、道路、公園その他の公共の用に供する施設をいう。 (県の責務) 第三条 県は、福祉の町づくりに関する総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有 する。 2 県は、前項の施設の策定及び実施に当っては、市町村との連絡調整を緊密に行うよ うに努めるものとする。 (市町村の責務) 第四条 市町村は、当該市町村の区域の実情に応じた福祉のまちづくりに関する施策を策 定し、及び実施するとともに、県が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力する 責務を有する。 (事業車の責務) 第五条 事業者は、事業活動を行うに当たっては、自ら進んで福祉のまちづくりに取り組 むよう努めるとともに、その所有し、又は管理する施設等について、高齢者、障害者等 が安全かつ快適に利用できるように必要な措置を講ずる責務を有する。 2 事業者は、県又は市町村が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力する責務を 有する。 (県民の責務) 第六条 県民は、福祉のまちづくりに関する理解を深め、自ら進んで福祉のまちづくりに 取り組むよう努めるとともに、相互に協力して福祉のまちづくりを推進する責務を有す る。 2 県民は、県又は市町村が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力する責務を有 する。 第二章 福祉のまちづくりに関する施策 (施策の基本方針) 第七条 県は、次の各号に掲げる基本方針に基づき、福祉のまちづくりに関する施策の総 合的かつ計画的な推進を図るものとする。 一 すべての県民が福祉のまちづくりに積極的に取り組むよう意識の高揚を図ること。 二 高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できる施策等の整備を推進すること。 (啓発活動) 第八条 県は、福祉のまちづくりについて、事業者及び県民の理解を深めるため、広報活 動、教育活動その他啓発活動を行うよう努めるものとする。 (情報の提供等) 第九条 県は、市町村、事業者及び県民に対し、福祉のまちづくりに関する必要な情報の 提供、指導及び助言を行うよう努めるものとする。 (調査及び研究) 第十条 県は、市町村、事業者及び県民が福祉のまちづくりを効果的に推進するため、必 要な調査及び研究を行うよう努めるものとする。 (施設等の整備) 第十一条 県は、自ら設置し、又は管理する施設等について、高齢者、障害者等が安全か つ快適に利用できるようその整備に努めるものとする。 (財政上の措置) 第十二条 県は、福祉のまちづくりを推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努 めるものとする。 (推進体制の整備) 第十三条 県は、県、市町村、事業者及び県民が一体となって福祉のまちづくりを推進す る体制を整備するよう努めるものとする。 第三章 公益的施設等の整備等 第一節 公益的施設等の整備 (設備基準) 第十四条 知事は、公益的施設等の構造及び設備の整備に関し、高齢者、障害者等が安全 かつ快適に利用できるものとするために必要な基準(以下「整備基準」という。)を定め るものとする。 2 整備基準は、次の各号に掲げる事項について、公益的施設等の種類の区分に応じて規 則で定める。 一 出入口の構造に関する事項 二 廊下及び階段の構造に関する事項 三 エレベーターの設置及び構造に関する事項 四 車いす使用者が利用できる便所及び駐車場の設置及び構造に関する事項 五 案内標示及び視覚障害者誘導施設の設置に関する事項 六 歩道及び公園の構造に関する事項 七 前各号に掲げるもののほか、高齢者、障害者等の利用に配慮すべき事項 (整備基準への適合) 第十五条 公益的施設等を所有し、又は管理する者(以下「施設所有者等」という。)は、 当該公益的施設等を整備基準に適合させるよう努めなければならない。 (施設の維持等) 第十六条 施設所有者等は、整備基準に適合した公益的施設等について、当該適合した部 分の機能を維持するよう努めなければならない。 2 公益的施設等の利用者は、当該公益的施設等の整備基準に適合している部分の機能の 妨げとなる行為をしてはならない。 (適合証の交付) 第十七条 整備基準に適合している公益的施設等を所有し、又は管理する者は、規則で定 めるところにより、知事に当該公益的施設等が整備基準に適合していることを証する証 票(以下「適合証」という。)の交付を請求することができる。 2 知事は、前項の規定による請求があった場合において、当該公益的施設等が整備基準 に適合していると認めるときは、当該請求をした者に対し、適合証を交付するものとす る。 3 知事は、前項の規定により適合証の交付をした場合においては、その旨を公表するも のとする。 第二節 特定施設に係る措置 (届出) 第十八条 公益的施設等で規則で定める種類及び規模のもの(以下「特定施設」という。) の新設又は改修(建築物等については、増築、改築、移転、建設基準法(昭和二十五年法 律第二百一号)第2条第十四号に規定する大規模の修繕又は同条第十五号に規定する大 規模の模様替えをいう。以下同じ。」)をしようとする者は、あらかじめ、規則で定めると ころにより知事に届け出なければならない。 2 前項の規定による届出をしたものは、その届出に係る事項を変更しようとするときは、 規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。ただし、規則で 定める軽微な変更にあっては、この限りではない。 (指導及び助言) 第十九条 知事は、前条の規定による届出があった場合において、当該届出に係る特定施 設が整備基準に適合しないと認めるときは、当該届出をした者に対し、必要な指導及び 助言をすることができる。 (工事完了の届出) 第二十条 第十八条の規定による届出をした者は、当該届出に係る特定施設の新設又は改 修の工事を完了したときは、規則で定めるところにより、速やかにその旨を知事に届け 出なければならない。 (勧告) 第二十一条 知事は、第十八条の規定による届出を行わずに特定施設の新設又は改修の工 事に着手した者に対し、当該届出を行うように勧告することができる。 2 知事は、第十八条の規定による届出を行った者が当該届出に係る工事を行った場合に おいて、当該工事が届出の内容が異なり、かつ、当該届出に係る特定施設が整備基準に 適合しないときは、当該届出を行った者に対し、当該届出の内容に基づく工事を行うこ とその他必要な措置を講ずるよう勧告することができる。 3 知事は、第十九条の規定による指導及び助言を受けた者が当該指導及び助言に係る工 事を行った場合において、正当な理由なく当該指導及び助言に従わず、かつ、当該指導 及び助言に係る特定施設が整備基準に適合しないときは、当該指導及び助言を受けた者 に対し、当該指導及び助言の内容に従うことその他必要な措置を講ずるよう勧告するこ とができる。 (公表) 第二十二条 知事は、前条の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、そ の旨を公表することができる。 (適合状況の報告等) 第二十三条 知事は、この章の規定の施行の際現に存する特定施設(新設又は改修の工事 中のものを含む。以下「既存特定施設」という。)を所有し、又は監理している者に対し、 特に必要があると認めるときは、当該既存特定施設の整備基準への適合状況の報告を求 め、又は必要な指導及び助言をすることができる。 (立入調査) 第二十四条 知事は、第十九条及び第二十条から前条までの規定の施行に必要な限度に おいて、当該職員に、特定施設に立ち入り、当該特定施設の構造及び設備について調査 させることができる。 2 前項の規定により立入調査をする当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係 人の請求があったときは、これを提示しなければならない。 3 第一項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈して はならない。 4 知事は、第一項の規定による立入調査に協力しなかった者があるときは、その旨を公 表することができる。 (国等に関する特例) 第二十五条 第十八条から前条までの規定は、国、地方公共団体その他規則で定める公共 的団体については、適用しない。ただし、国、他の地方公共団体その他規則で定める公 共的団体は、特定施設の新設又は改修をしようとするときは、規則で定めるところによ り、あらかじめ、知事にその内容を通知するものとする。 第三節 旅客車両等、公共的工作物及び住宅等の整備 (旅客車両等の整備) 第二十六条 鉄道又は軌道の車両、自動車、船舶その他の旅客の用に供する機器を所有し、 又は監理する者は、当該所有し、又は監理する機器について、高齢者、障害者等が安全 かつ快適に利用できるようその整備に努めなければならない。 (公共的工作物の整備) 第二十七条 信号機、公衆電話ボックス、自動販売機その他の公共の用に供する工作物を 設置し、又は管理する者は、当該設置し、又は管理する工作物について、高齢者、障害 者等が安全かつか井的に利用できるようその整備に努めなければならない。 (住宅等の整備) 第二十八条 住宅又は住宅の用に供する土地(以下「住宅等」という。)を供給する事業者 は、当該供給する住宅等について、高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できるよう その整備に努めなければならない。 2 県民は、その所有する住宅等について、居住する者が将来にわたって安全かつ快適に 利用できるようその整備に努めなければならない。 第四章 雑則 (意見の聴取) 第二十九条 知事は、第二十二条及び第二十四条第四項の規定による公表を行う場合には、 あらかじめ、期日、場所及び事案の内容を示して、当事者又はその代理人の出頭を求め て、意見の聴取を行わなければならない。ただし、これらの者が正当な理由がなくて意 見の聴取に応じられないときは、意見の聴取を行わないで公表することができる。 (委任) 第三十条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。 附則 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第三章及び第29条の規定は、平成九 年四月一日から施行する。