これは、クラーク博士が札幌農学校の生徒と交わしたという
誓約書。


「イエスを信ずる者の誓約」

下に署名する札幌農学校の学生は、基督の命に従いて基督を信ずることを告
白し、且つ基督信徒の義務を忠実に尽くして祝すべき主即ち十字架の死を以
て我等の罪をあがない給いし者に、我等の愛と感謝の情を表し且つ基督の王
国拡がり、栄光現れ、そのあがない給える人々の救われんことを切望す。故
に我等は今後基督の忠実な弟子となりて、その教えを欠くことなく守らんこ
とを厳かに神に誓い且つ互いに誓う。
我等は適当なる機会来る時は、試験を受けて受洗し、福音主義の教会に加わ
らんことを約す。
我等は信ず、聖書は唯一直接天啓なる教導者なることを。
我等は信ず、至仁なる創業者、正義なる主権者、最後の審判者なる絶対無限
の神を。
我等は信ず、凡て真実に悔い改めて神の子を信じ、罪の救いを受くるものは、
身を終わるまで聖霊の佑導を受け、天父の眷顧を蒙りて、遂に贖われたる聖
徒となり、其喜を受け、其業を勤むるに適いたる者とせらるべし。されど凡
て福音を聞きて信ぜざる者は、必ず罪に亡びて神の前より永久に退けられる
べきことを。
次に記する誠は、我等如何なる辛酸を嘗むるとも終身之を服膺履行せんこと
を約す。
爾、精神を尽くし、力を尽くし、意を尽くし、主なる爾の神を愛すべし。叉
己の如く爾の隣を愛すべし。
爾、生命あると生命なきとに拘わらず、凡て神の造り給えるものに象りて彫
みたる像若しくは作りたる形を拝すべからず。
爾の神エホバの名を妄りにいうべからず。
安息日を覚えてこれを聖日とせよ。この日には即ち凡て緊要ならざる業務を
休み、勉めて聖書を研究し、己の徳を樹つるために用ゆべし。
爾の父母と有司とに従い、且つこれを敬うべし。
詐偽、窃盗、凶殺、姦婬若しくは他の不潔なる行為をなすべからず。
爾の隣を害すべからず。
断えず祈るべし。
我等は互いに相扶け相励まさんがために、この誓約により一個の団体を組織
し、これを「イエスの信徒」と称し、而して我等処を同うする間は毎週一回
以上共に集まりて聖書或は宗教に関する他の書籍雑誌を読み、若くは宗教上
の談話をなし、また相共に祈祷会を開くことを誓約す。希くは聖霊我等の心
の中に臨みて我等の愛を勤まし、我等の信を堅くし、我等を真理に導きて救
いを得るに至らしめんことを。

      1877年3月5日
                  於 札 幌
                    ウイリアム・エス・クラーク

※(この原本は札幌独立基督教会に保存されている。)
※クラーク先生とその弟子たち 大島正健著 大島正満補訂 1973 図書刊行会