季刊かすてら・2005年冬の号

◆目次◆

軽挙妄動手帳
奇妙倶楽部
編集後記

『軽挙妄動手帳』

●不定形俳句●

『奇妙倶楽部』

●世界虚事大百科事典●

青平醍醐

あおひらだいご  鳥取県青平町特産の珍味。舌触り、味、ともにクリーム状のカマンベールチーズに酷似するが乳製品ではなく森で採れる。変形菌類の一種である。変形菌類は粘菌とも呼ばれ、多個体が集まってアメーバ状(これを変形体という)をなし、自由に移動して活動し、植物の根のように体表から栄養物を吸収する。繁殖の際には黴のように細い繊維状の身体を形成して立ち上がり、先端に作った胞子を飛ばす。食用にされるのはアメーバ状の変形体でこれを加工せずにそのまま食べる。薫りはカマンベールチーズに勝るといわれ珍重されるが、痛み易いため青平町でしか食べられず、そのためこれを目当てに同町を訪れる人も多い。生きている変形菌をそのまま食べるので、保存の際に密封して置かないと逃げ出してしまう事がある。また一度に大量に食べると胃で消化し切れずに生き残り、睡眠中などに食堂を這い上って口や鼻から出て来る事がある。

駅伝葬

 群馬県東部、赤城山麓の木菟(みみずく)村に伝わる葬送儀礼。駅伝葬は俗称。正式名称は棺担送(かんかつぎおくり)。その名の通り、二人一組の走者が前後に並び間に挟んだ棺桶に通した棒を肩に担いで走り、駅伝の襷(たすき)のように棺桶を受け渡してリレーして行く。五組みで村内を一周して死者のあった事を知らせるのである。1958年より所要時間が記録されるようになり、以降担ぎ手はその速さを競う傾向がある。そのため急いだ担ぎ手が転倒して、棺桶の破損、飛び出した死体の人家への突入、死体の破損、転倒した担ぎ手の怪我、担ぎ手の死亡などが度重なり問題となった。また、少しでも速く走るため、より軽量な棺桶の開発、より空気抵抗の少ない流線型の棺桶の設計、乾燥による死体の軽量化なども工夫され、更には内蔵の摘出、手足の切断なども検討され葬儀の厳粛さが損なわれるなどの問題も発生している。度重なる村役場からの注意にもかかわらず記録短縮熱は収まらず、1998年には複数チームによる競技化まで検討されたが流石にこれは見送られた。見送られた理由は倫理的な物ではなく、複数の遺体の調達が困難だからであった。

◆編集後記◆

 ここに掲載した文章は、パソコン通信ASAHIネットにおいて私が書き散らした文章、主に会議室(電子フォーラム)「滑稽堂本舗」と「創作空間・天樹の森」の2004年10月〜12月までを編集したものです。

◆次号予告◆

2005年4月上旬発行予定。
別に楽しみにせんでもよい。

季刊カステラ・2004年秋の号
季刊カステラ・2005年春の号
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