国道202号線西新交差点に立ち、北(海側)に何本か走る小さな道から遠望できるツタの絡まる赤レンガ造の建物が西南学院旧本館・講堂です。(以下、講堂と略述する場合あり) キャンパスのシンボル的建築となっている本講堂は赤レンガ造の洋風建築で、William Merrell Vories(ウィリアム・メレル・ヴォーリズ、1880-1964年)の設計によって、大正9年(1920年)9月9日に着工、翌大正10年(1921年)3月9日に献堂された。施工は同じくヴォーリズ設計の久留米ルーテル教会(大正7年竣工)も手がけた関 忠次です。 当時は中学部本館・講堂として建設され、その後学院の高校講堂として使用されて来ましたが、平成15年4月、西南学院中高の百道浜キャンパス移転に伴い、今後は西南学院大学の博物館(館名:ドージャー記念館)として一部耐震補強、及び修理復元工事を行い、再生することが決まっています。 本講堂は赤レンガ造建築三階建で、延べ面積980F、間口24メートル、奥行15メートルで軒高10.4m、棟高15m。外周及び主な内壁はレンガ造、1,2,3階の床は木造です。更に屋根は木造トラス(キングポストトラス)により構築されています。レンガ積みの工法はイギリス積み(正確にはオランダ積み)です。南西の角に「SEINAN GAKUIN 1920」と記された定礎石がレンガ壁に埋め込まれています。 外観は古典様式であるジョージアンコロニアルスタイルを基調として、浅い軒裏を見せる大きな寄棟屋根(勾配5寸5分)をかけ、玄関廻りや軒裏にクラシカルな装飾(コーニス)、1階上部でファサードを分割するストリングコース(水平帯)が装飾されています。又屋根の正面中央部には設計当初三角形破風(ペジュメント)が配されていましたが、建築時に変更されたようです。それらクラシカルモチーフの扱いと共に、フラットアーチの窓とレンガ壁面で構成された端正なプロポーションが「簡素ながら、柔らかくそれでいて重厚な雰囲気」を醸し出しています。 正門の正面に位置する南側玄関より入ると、1階には当初、職員室、院長室、応接室などが配置されていましたが、それに接して昭和34年(1959年)、鉄筋コンクリートの東校舎が建てられるなど、1階は諸所改変されています。当初の東側玄関からは階段室両側に二つ造られた緩やかな階段で講堂にアプローチします。段板(塩地)は長年の使用により、ゆるく中央がくぼみ、木目が白く浮き出ています。 階段を上り2階講堂は2,3階を吹き抜けとし、上部(3階)にギャラリー(内壁から突き出た床)を設けそれを支持する太い木製八角形の列柱と、ギャラリー廻りの手摺の意匠がこの空間に個性を与えています。正面講壇はゆったりとした三芯アーチで構成された、プロセニアムステージ形式で、その下に曲線状に一段高く張り出すしています。講堂に並ぶ重量感ある長椅子(約3m)は一枚板(塩地)でつくられおり歴史を感じさせます。 両側壁には大きな二連式の欄間付き高窓が並び(三階には欄間なし)、レンガ造の建物かと疑うほどに明るい空間が作られており、近い将来のコンクリート建築の到来を予感させます。
京都市の同志社大学のアーモスト館と並びヴォーリズ作品におけるジョージアンコロニアルスタイルの典型的作品です。 |