平成13年度指定

有形民俗文化財
板絵著色三十六歌仙絵馬 25点


柿本人麻呂
指定絵馬一覧

 宗教法人 紅葉八幡宮

品質 檜材
法量 (枠共)各竪約53p×横37p
   (本地)各竪約50p×横34p 
銘文 【右十八 中務裏面墨書】
   右之歌仙難遁依所望
   不顧外見書之
   寛文  六年
   林鐘日 従二位藤原基時(花押)
作者 (絵)小方仲由
   (書)藤原(持明院)基時
時代 寛文六年六月(1666)
枠  黒漆塗り。上下に溝をつけて桟を嵌入。
備考  画面上方に色紙形をつくり、和歌を書き、下方に上畳に坐す歌仙を描く。歌仙の頭体の均衡がはかられ、各歌仙は画面内に安定した位置をしめている。顔貌表現も類型化せず、たとえば目の大きさや角度などによって、それぞれに描きわけている。文様は細かく、しかもくずれはない。賦彩においても細部への配慮がうかがえる。藤原(持明院)基時(1635-1704)は持明院基春(1453-1535)以来、書役を以て朝廷に仕えた持明院流七代目の書家。寛文七年(1667)、正三位に叙せられ、元禄二年(1690)に、権中納言に任じられている。

 本絵馬は、寛文6年(1666)、福岡藩三代藩主黒田光之が、自らの産神橋本八幡宮を紅葉松原の地に移し、紅葉八幡宮を創建し、その遷座に際して、お抱え絵師小方仲由(?-寛文9年・1669)に画かせ奉納したものです。
 小方仲由の生年、出自は不明ですが、初代藩主黒田長政に抱えられ、二代藩主忠之の命によって幕府の御用絵師狩野探幽(1602-1674)の門に入りました。筑前に初めて江戸狩野の画風をもたらした初代の福岡藩御用絵師尾形家です。
 仲由は早くは、福岡藩の職員録である『寛文官禄』(1661〜73)に「絵書」と記載され、幕府の絵番掛狩野信義が江戸末期に著した日本画家辞書『古画備考』にも「名画」の項にとりあげられるほどの画家でした。しかし、仲由の作品は諸記録にいくつかの作品名が知られるのみで、現存するものはわずかに「霊昭女図」(紙本淡彩、福岡市徳門寺蔵)と「桜井与止姫社古図」(慶安4年・1651 紙本彩色、福岡市博物館蔵)のみです。
 紅葉八幡宮の創建を記念して藩主から奉納された本絵馬は、本市に残る二千数百点にのぼる絵馬のうちで最も古い絵馬としての価値を有するのみならず、福岡藩御用絵師尾形家の祖・仲由の画業の基準作となる極めて稀な遺作であり、かつ美術的にも優れた作品です。



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