銀座博品館劇場で2月24日(水)から28日(日)まで公演された「江分利満氏の優雅な生活」講演とエッセイ・ミュージカルに行って きました。
昨年の初演も拝見したコメホカスタッフは、一年たってどんな江分利満に出会えるのかとても楽しみでした。
さあ、幕が上がったら、もうびっくり!何にビックリしたかって?それは公演レポートをご覧になれば分かりますが、とにかく小野田さ んの演技&歌が素晴らしかったんです。嬉しいやら感動するやらでウルウルしっぱなしのひとときでした。
「江分利満」の作者や山口瞳氏を意識して、エッセイ風のレポートに仕上げてみました。コメホカスタッフ渾身のレポートをどうぞ。

「江分利満氏の優雅な生活」ポスター

「江分利満氏の優雅な生活」ポスター

ジェームス小野田
講演とエッセイ・ミュージカル

原作=山口 瞳(新潮文庫版)
台本・演出:竹邑 類 音楽:甲斐 正人、和田 典久
演奏:和田 典久(ピアノ) 藤山 正史(シンセサイザー)
キャサリン・キャッシュ(ヴァイオリン)

第一部

日替わりゲストを迎えてのトーク

          2/24 竹邑 類 (演出家)+山口 正介(映画評論家・山口瞳氏の長男)
          2/25 野坂 昭如(作家)
          2/26 岡本 喜八(映画監督)+安達 英一(演劇評論家)
          2/27 常盤 新平(作家・エッセイスト)
          2/28 天野 祐吉(コラムニスト・童話作家)

第二部

「江分利満氏の優雅な生活」

東京の屋根の下

我が住まい 川崎市にありて

不器用ソング

悲しい酒

ムーンリバー

青春

海ゆかば(BGM)

戦後ヒットパレード

(ヴァイア コンディオス、テネーシーワルツ、
チェンジング パートナー)

昭和の子供

昭和の日本人

浪漫飛行

すみれの花咲く頃

あなた-夏子

リンダ−こまっちゃうなメドレー

はてしない世界


プログラム(直筆サイン入り)

プログラム(直筆サイン入り)

2月28日、久しぶりに銀座へ足を運んだ。小野田さんのひとり芝居「江分利満氏の優雅な生活」を見るためだ。
最近は渋谷方面ばかりで銀座はすっかりご無沙汰だ。渋谷の人込みと違ってゆったり歩ける。行き交う人々も落ち着いた年齢の紳士、淑女が多い。 これが、「大人の街」銀座といわれる所以だろうか。
博品館劇場も久しぶりだった。この前来たのはいつだっけ?たしか、志ん朝か、小朝の独演会だった気がする。ずいぶん前だ。
エレベーターで8階の劇場入り口まで直行。エレベーターは満員。いろいろな年代の人たちが居る。しかも誰一人途中の階で降りない。
全員が「江分利満氏の優雅な生活」を見に来ているのだ。きっと満員だ。小野田さんの人気に一人ほくそえむわたし。
会場ロビーに入るといろいろ「江分利満」にちなんだ展示がしてある。まず、テレビが目を引く。いかにも展示用です!といった大画面 フラットテレビではなく、どこの家庭にも有りそうなありふれたテレビ。流れているのは山口瞳氏の制作したサントリーのCMだった。
あの伝説のCM「トリスを飲んでハワイに行こう!」もある。ビデオが劣化して画面の色が変わっているのがいかにもって感じでおかしい。
そう言えば、昔うちのテレビも古くなってしまって画面の上三分の一くらいが赤っぽく映っていたっけ・・・懐かしいな。
反対側には岡本喜八監督の作品の映画ポスターが貼ってある。小林圭樹が主演した「江分利満」のポスターも当然ある。
客席へ上って行く階段の途中にスナップ写真が多数貼ってあった。なんだろう?と見てみたら前日までの公演で撮った写真である。
トークのゲストと撮ったもののほかに観客と一緒の写真もある。やった!どうやら最後に小野田さんとご挨拶が出来るらしい。期待に胸が膨 らむ。
写真の数々を見ていると、得能さんらしき人発見。あの髭面と帽子は間違いないだろう。
プログラム(600円也)を買って席へ。最前列のど真ん中だ!舞台も至近距離でまさしく唾がかかるほどの近さだ。ラッキー!
こんなに良い席は6年ぐらい前のCCC集会以来かもしれない。
客席は大体30代かなという女性が多いが、ほかのライブ等よりはるかに男性の姿が多い。50〜60代の人も結構居る。

石井さんからのお花

石井さんからのお花

第一部の始まり。女性アナウンサーの紹介で天野祐吉氏が登場。
舞台のソファーセットに腰掛けてトークが始まる。サントリーのCM、開高健氏や山口瞳氏のつくった名作CMに付いてのトーク。
そうそう、アンクルトリス覚えているよ。
時代に迎合する事無く、最も世俗的なTVCMを通して、なおかつ批判的精神を失わなかった山口瞳氏について語る。ひとりトーク。

続いて第二部。いよいよ小野田さんの登場だ。
前半はひとりミュージカル・エッセイ。前回の「江分利満」での後半部分、酒場でのシーンから始まった。

あらかじめ断っておかねばならないが、この日わたしの涙腺はきわめてもろくなっていた。前日ある人の告別式に出たせいなのだが、 それを割り引いて考えても、わたしはジェームス小野田の熱演に涙が止まらなかった。

海ゆかば−「きけわだつみのこえ」朗読。このあたりでもういけない。
ヴァイア コンディオス−せつなくなって涙が止まらない。
置いて行かれた者のやるせなさ、青春を奪われた者のせつなさ、親しいものが逝ってしまった悲しさくやしさ・・・・なんだか胸が痛く なるほど伝わってくる。

わたしの両親はまさに「江分利満」と同世代である。
「江分利満」は大正15年生まれ。昭和の年数と年齢が同じだ。
わたしの母は、正月になると「新しい年が今年のお母さんの年齢だよ」といつも言っていた。同い年である。
母は僻みっぽい人だ、偏屈でもある。少し酔うと必ず昔話で「明治の人間が戦争を始めて、大正の人間が戦争で死んだ。人生の一番いい 時を戦争に持って行かれた」と言う。そのせいだか知らないが「江分利満」の妻夏子はテタニーと言う病を得た。そして母は偏屈になった。

「江分利満」は酒乱である。
わたしの父は多くを語らない人だが、母によると、出征前は酒も煙草もやらない人だったらしい。「酒屋の前を通っただけで、においで酔 う」ほどの下戸だったと言う。
復員してきた父は大酒のみになっていた。

父もまた「江分利満」なのだ。紛れも無く、この国に生き残った「江分利満」のひとりなのだ。

舞台の上の「江分利満」は「白髪の老人を許さないぞ!」と叫んでいる。「美しい言葉で若者を誘惑した奴等を許さないぞ!」と告発して いる。
寡黙な父の代わりに「江分利満」の言葉に耳を傾けよう。「江分利満」の叫びを聞き続けて行くつもりだ。

青山ケンネルからのお花

青山ケンネルからのお花

第二部の後半は一転して、ジェームス小野田&「江分利満」のショータイム。
客席に降りて歌いながら握手のサービス。もちろんしっかり握手してもらいました。米米時代では考えられない事!なんて幸せ。
リンダメドレーではハメをはずしすぎてひとり暴走。「江分利満バンド」の皆さんを呆れさせてしまうほど。
うーん、米米の仲間だったらついてこれたんだろうになぁ。
それにしてもなんともサービス精神の旺盛な事。

終演後の小野田さん

終演後の小野田さん

終演後、期待通りに小野田さんが出口でひとりひとりにご挨拶を。嬉しい。
もう一度握手していただいた上にプログラムにサインまでして貰った。感激ひとしお。

それにしても、初演から1年たったとはいえ、小野田さんの演技の素晴らしかった事といったら驚くばかり。
とにかく200%増量(当社比)とでも言えば分かってもらえるだろうか。
確実にミュージカル俳優として進歩を遂げた小野田さん。ミュージカル俳優の地歩をしっかりと固めたことを確認できて嬉しかった。
今後、一流のミュージカルスター達と共演の予定だという。(ラ・カージュ・オ・フォール)
素晴らしい先輩達にもまれて、またいっそう上手くなるに違いない。これからの成長ぶりがますます楽しみになった。
ずっとずっと小野田さんの成長を追って見守り続けて行こうと思う。
「江分利満」はライフワークだと言う小野田さんの言葉どおりまた来年も演ってほしい。
絶対見に行くから。

ビー・ブレーンからのお花

ビー・ブレーンからのお花

ジェームス小野田39才。がんばれ!ミュージカルスターへ!

今日は本当に見に来て良かった。最高に美味しい思いもしたし。
外へ出ると上気した頬に春の風が心地よい。春宵一刻・・・かぁ。
やっぱり銀座は大人の街だった。


今後の出演予定。「ラ・カージュ・オ・フォール」4月名古屋、8月大阪。東京は未定。共演は市村正親、嵯川哲郎、森久美子ほか。

今流れているNTTドコモのCM−広末涼子の出てるCM−の最後のナレーションの声を小野田さんが担当しています。


会場で配られたチラシの中に小野田さんと行くハワイツアーがありました。詳細は小野田さんと行くハワイツアーのページへ。


小野田さんのメッセージのページへ

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