昨年七月・恩師安川加静子先生がお亡くなりになりました。丁度私は今回のリサイタルのプログラムを考えている時でした。急な知らせに心底びっくりいたしましたが、今迄安川先生からいただいた多くの教え、又あの場面、この場面の思い出が一度にわき上がってきました。いろいろ考えて、今晩このようなプログラムで、私なりに安川先生への追悼の気持ちを表わしたいと思った次第です。
安川先生から一番身にしみて授かったことは"あわてずに、着実に自分の道を歩むこと"でした。このように言葉でおっしゃったわけではありませんが、毎年ご自分の勉強発表を続けられたお姿から、また先生ご自身の存在からこのように学びました。スイスに住むようになってから、自分で自分に約束したことは、日本人として少なくとも一年に一度は東京でリサイタルをし、勉強の発表の場とするということでした。これも安川先生の教えに由来することかと思います。皆様のおかげで一回も休むことなく今日十一回目を迎えることとなり、こんなうれしいことはございません。安川先生を偲びつつ、今夜しばらくの時をご一緒に過こさせて下さいませ。