スイスに関する本の紹介 その十一

 スイスに関する本ももうネタ切れと思うと、あれやこれやが出てきて、なかなか尽きることがありません。
 今回は、堀淳一氏の「ライン川源流域紀行〜知られざるスイスの水の風景」(東京図書)から。
 この本は前作がドナウの源流域紀行として出版され、その第二弾として出された本です。出たばかりですから、本屋さんで簡単に手に入ることでしょう。
 水をテーマとしてのスイスを旅するというのも面白そうですね。ジュラ山地からティトゥリスの山腹に引っ掛かっているトリュブゼーにブリューニック線の沿線での地面に消える水の話など、とても面白いですし、あまり詳しく紹介されない(よくガイドブックには載ってますけどね)アーレシュルフトも載ってます。
 しかし、そういったよく知られた名前だけでなく、ここには水をテーマとして、ほとんど日本のスイスに関する書物で出てきたことのない町や村の名前がたくさん出てきて、私には大変興味深い一冊でした。
 ジュラのアールズ川、オルブ川、アルノン川、シュズ川と地獄門。ラインとローヌの間。アーレ川についてはビール湖、ベルン市とアーレ川、ハスリベルク、アーレ・シュルフトと有名ですね。でもルツェルンからマイリンゲンに着く直前に見える岸壁はどうでしょう。
 ブリューニックからロイス川は本流のゲッシェネンだけでなくティトゥリス、クラウゼン峠。もちろん一般に源流とされているトゥマ湖、オーバーアルプ峠なども紹介されていますが、トゥマ湖をラインの源流とだけではかなり無理があることを著者は述べています。それは、ここまで読んでくればよく分かります。
 大推薦の一冊です。

 次は森田安一氏の「物語スイスの歴史」(中公新書)はいかがでしょうか。U.イム・ホーフ著の「スイスの歴史」(力水書房)の訳者としても高名ですが、こちらはちょっとハードなので、入門用としてはこちらが良いでしょうね。
 旅行の際にこれを一冊ポケットに忍ばせておけば、列車の中、雨の日の時間つぶしにうってつけではないでしょうか。カエサルの時代から神聖ローマ帝国の時代、三州盟約から多くの戦いを経ての近代、現代に至るスイスの歴史が分かりやすく述べられています。
 犬養道子氏を始め多くの人が指摘しているスイスの特殊性をよく語っているのではないでしょうか。

 小川氏の名著「スイス・ハイキング案内」が、手に入りにくくなっているので、スイス・アルプスでのハイキングを紹介した本としては市原芳夫氏著「スイス・アルプス山歩き・花紀行」(本の泉社)がいいのではないでしょうか。
 写真があと一歩という感じですが(小川氏の本はその面でも本当によく出来ていました)何と言っても各地のパノラマ図を載せてくれているので、とても分かりやすい一冊で、スイスでの山小屋での泊まり方なども紹介してくれているのは、私たちアマチュアにとってはありがたいですね。
 スイス山岳会の山小屋はどこでも素晴らしいロケーションのところにあり、ぜひ一度泊まってみたいなぁと、思っているものですから。