スイスに関する本の紹介 その四

 スイスについて書かれた本の四回目。もう無くなるだろうという予想を覆し、どんどん続いて来ていますが、さてスイスに関する本が好きと言って、写真が豊富な本は、ぼんやり眺めているだけでも楽しいもので、その意味でクレオから出版されている”知の旅シリーズ”の「湖と森とメルヘンの国〜スイス紀行」は、著者に鈴木光子女史を得たことで、奥行きのある大変良い本と言えるでしょう。
 中塚裕氏の写真も素晴らしいものですが、着眼点がとても興味深いもので、「峠はアルプスと人の融合の証」「牧童は美しいスイスの庭師」「メルヒェンの国スイス」「ローマの軍靴を聞いたアルプス」「スイスに巡礼の道を求めて」「スイスの秘境と山岳共同体」「登山鉄道の網の目」「スイスの歴史はヨーロッパの小窓」といった各項目だけを並べても、単なる写真集とも、ガイド・ブックのような本とも違った深い教養に裏付けられたしっかりとした視点を感じさせるものばかりです。

 えー、前に新田次郎の「アルプスの村、アルプスの谷」を紹介しましたが、その時の経験から生まれた「ホテル氷河にて」や「オデットという女」という短編小説が含まれる新潮文庫の「アイガー北壁・気象遭難」はいかがでしょうか?
 本のタイトルにもなっている「アイガー北壁」は一九六五年に起きた日本人パーティーの遭難のドキュメンタリーで、ホテル・ベルビューのシュトイリ氏も登場する作品です。
 「アルプスの村、アルプスの谷」が気に入った方に、ぜひお薦めしたい一冊ですが、更にその時、新田次郎氏と一緒に旅した、佐貫亦男氏の「佐貫亦男の旅の回想」(グリーンアロー出版社)もまた、その時の想い出なども少しではありますが、語られていて、佐貫氏の側から見た「アルプスの村、アルプスの谷」が、少しではありますが、かいま見られるようで、なかなか面白い本です。

 佐貫氏の本は他にも紹介したい本がありますが、今回はこれを推薦しておくことにして、アイガー直登という偉業を成し遂げた一人の今井通子女史の「マッターホルンの空中トイレ」(TOTO出版)という本はどうでしょうか。
 女性登山家が山の事、旅の事、そしてその途中でのトイレの事について語った本書は、その視点の面白さから興味を惹いたものですが、ご自身が泌尿器科のお医者様でもあり、なかなか含蓄のあるお話で、一気に読み終えてしまう楽しい本でした。

 ガイド・ブックの代わりと言っては失礼ですが、池田光雅氏の本はスイスに関して何冊か出ていていますが、その中から「スイス・アルプス一人歩き術」と「スイス・アルプス旅の宿」(晶文社)を紹介しておきましょう。
 よく似た内容の本であるのでとちらか一冊でもいいでしょう。始めてスイスに旅する際の情報収集には良い本と思います。ガイド・ブック代わりに最初の頃(スイス初心者の頃)は読みましたが、ガイド・ブックとしてスイスにまで持って行くにはハードカバーの新書はちょっと重いし、で何冊か買いましたが、最近の本は何故か手が出なくなってしまっています。(スイマセン、池田様)
 ただ、スイスを旅するのに特別な技術が要る訳でもありませんので、行けばなんとかなる位でも本当に何とかなるのがスイスだと思います。
 だから、この本を読まないと大変というわけでもないので悪しからず…。(コレマタ、スイマセン)

 さてさて、スイスの本のシリーズ、次へと続く…。