第二次世界大戦の最中に、ジュネーヴのスイス・ロマンドのスタジオで録音されたアンセルメと手兵のスイス・ロマンド管弦楽団によるモーツァルトのト短調といわゆる「ジュピター」交響曲がDANTEから出たのは一昨年だったでしょうか。
最近聞き直してみて、改めてアンセルメという人の音楽の面白さを味わった次第です。
アンセルメのドイツ物、特に有名曲ほど、どうも血筋の違いなのか、不思議な肌触りとでもいうのでしょうか、落ち着かない演奏が多い中、このモーツァルトもそうした二面性を持つ演奏であるようです。
ト短調交響曲の第一楽章、テーマは大変落ち着いたテンポでよく歌っているので、まずは安心安心。しかし第二テーマに向かってテンポは走り始め、提示部の一回目はどんどんアチェレランドして、提示部の終止などは弾ききれないほどですが、繰り返しで戻ったとたん、元のテンポに戻り、冷静に始まるのを聞くと、先程の興奮は何だったんだという気になってしまいます。 |