しかし、かけがえのない文化の世界はここにもあるのです。
パリ・コミューンの騒乱を逃れて、ガブリエル・フォーレはスイスにやって来ましたし、ロシア革命と第一次世界大戦を逃れて、ストラヴィンスキーがレマン湖畔に住み、ここで多くの傑作を作っています。
第二次世界大戦によって、大戦中はスイスに多くの非ナチの音楽家が逃げ込んで来ました。そして大戦後は、ナチに協力したということで、追放された音楽家もここにやってきました。また、引退した音楽家たちの多くが、たそがれの時をここで迎えています。
戦争や騒乱から逃れてきた音楽家たちの、新たな創造の場の提供だけでなく、ブラームスやワーグナー、リストといったロマン派の楽聖たちの創造の場であったことも、記憶しておきたい事実です。
更に今世紀後半の古楽ブームの火付け役となった、バーゼル・スコラ・カントゥルムの活動や、ブーレーズなどの現代音楽の活動を手助けし、その果たした役割は決して小さくはありません。
スイスに限らず、ヨーロッパの町や村には教会があり、そこに多くの場合、立派なパイプオルガンが設置され、ミサの時、冠婚葬祭の時、コンサートの時と、みなさんもオルガンの音楽を聞かれたこともあるかも知れません。
オルガンの音楽は、日本人にはなかなか馴染みがない部分はありますが、そういう面からもスイスの文化を考えてみたいと思います。
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