バーゼル放送交響楽団

 バーゼルには、有名なバーゼル交響楽団がありますが、それとは別にバーゼル放送交響楽団があるのをご存知でしょうか。
 バーゼル放送交響楽団は、一九二四年、チューリッヒに設立された私設オーケストラをその母胎としてスタートしました。放送用のオーケストラとして当初活動を開始していて、四年後、スイス放送管弦楽団として改組しています。
 その後、ベロミュンスター放送管弦楽団として、ヘルマン・シェルヘンやエーリッヒ・シュミット達と共に多くの放送録音を残しています。
 スイスの作曲家リーバーマン(いつかこのコーナーで取り上げねばと思っています)もこのオーケストラの指揮台に立っていますから、当時から結構一線級の活躍をしていたと思われます。
 ヘルマン・シェルヘンの放送録音がフランスのターラから大量に出ていて、その中にこのベロミュンスター管弦楽団との録音も多く含まれているので、その演奏をお聞きになった方も多いのではないでしょうか?ベロミュンスター管弦楽団をウィーンのオケのように誤記している場合もあるので、知らない方も多いかも知れません。
 そして一九七〇年四月一日。
 本拠地をバーゼルに移し、バーゼルのスイス・ドイツ語放送の所属(というべきか専属と言った方がいいのでしょうか)として再び改組し、名称を現在のバーゼル放送交響楽団(Radio-Sinfonieorchester Basel)と変更したのであります。

 初代首席指揮者には、スイスの中堅指揮者のジャン・マリー・オーバーソンが就任。現代スイスの作曲家に作品を委嘱。多くの初演を行い、放送オーケストラとしての役目を果たしています。
 一九七七年のシーズンからは、多くの知られざる作品の紹介で名高いこれまたスイスの指揮者マティアス・バーメルトが首席指揮者に就任。彼は、スイスのエアージンゲンに生まれ、ベルン音楽院、パリ音楽院で学んだ逸材でもあります。
 シャンドスにストコフスキーのアレンジ物のCDがあったり、コッホにラフの素晴らしい「レノーレ」のCDがあるので、お聞きになった方も多いかも知れません。
 自身が作曲家でもあるそうで、単なる下手物趣味ではない、しっかりとした鑑識眼と一時期モーツァルテウム管弦楽団でオーボエを吹いていたこともあるという、オーケストラを団員としても知り尽くしたその手腕で、確固たる地位を築いている指揮者の一人です。
 一九七九年からはテレビへの出演も始まり、バーゼル放送交響楽団は一層の飛躍の時を迎えます。
 一九八六年には、イタリアの巨匠で、日本の読売日本交響楽団にも客演を重ねているネロ・サンティが首席指揮者に就任し、オーケストラに明るいカンターピレが付け加わったのであります。
 サンティは、チューリッヒ歌劇場の常連指揮者でもあるので、その関係から選ばれたのではないでしょうか?全くの推測なのですが…。また彼は、若手指揮者の登用でも大きな成果を発揮しており、おそらくはスイスの未来のマエストロをどんどんここから育てあげて…ということもこの人事の裏側にはあったのではないでしょうかね。

 彼らの記念CDもテューダー・レーベルから出ており、それについてはスイ音推薦?盤のコーナーで書きましたので、興味をお持ちになられましたら、そちらも参照して下さいませ。
 他には、ラフの後期交響曲がCDにして四枚ほど出ています。(チューダー・レーベル)なかなか良い演奏なので、気に入っています。
 さすが放送オケというべき素晴らしい機能性を持っている、近代的なオーケストラであります。私は木管の響きの美しさが特に気に入っているのですが、全体のバランスの良さ、反応の良さはこのオーケストラの最大の美点ではないかと思います。
 アンドレアス・ヨホやマリオ・ヴェンザーゴ(と読むんでしょうね?)と言った知らない指揮者も出てきますが、これまたそれなりに良いのですよ。皆さんも買ってみて、自分の耳を試してみられてはいかがですか?

 チューリッヒに近く、ドイツ、フランスに国境を接している、ちょっと特殊な町バーゼルに、有名な音楽院、そしてザッヒャーが率いていたバーゼル室内管弦楽団(今はどうしているのでしょうか?)とバーゼル交響楽団、そしてこのバーゼル放送交響楽団と、音楽文化の世界でもちょっと他の都市とは違う、過密地帯であるようです。
 このライン河畔のオーケストラ、どうぞ聴いてみてください。