第44回 リコー519Mの分
(リコーの珍種)

今回は、ある方から預かりましたリコー519Mの分解です。絞り羽根の開閉不良でした。でもこのカメラは珍しいカメラです。国内販売はされていません。輸出専用のカメラでリコー519にセレン式のメーターを載せたものです。メーターのおかげで若干の構造変更が加わっています。ただベースである519より部品の質、構造が落ちていることが残念です。
まずはトップカバーを開けて見ましょう。基本構造は519と同じですが軍艦部に付けられているメーターブロックの為、フィルムカウンターの位置が変わっています。内部構造的にはぎりぎりまで詰め込まれています。リコーのカメラはファインダーブロックという構造をとっているものは少なく、ファインダー関連の部品は直接ボディに取り付けられているものが多いです。 519ではフィルムカウンターのあった部分です。519Mではメーターブロックが置かれる為にメーターブロックの押さえ板になっています。基本構造は同じなので519の部品でここにフィルムカウンターユニットを付けることも可能です。たくさんのギアが見えますがこれがリコーの特徴である巻上げ用のギアになります。
巻き戻しノブと同軸になかば強制的にフィルムカウンターが取り付けられています。メーターのおかげでここにしかスペースが無くなってしまったのでかなり構造的には無理があります。カウンターの数字は背面から見る構造になっています。 トップカバーに取り付けられた露出計です。単純に単体露出計が付いているだけのものです。上の写真のメーター部分の押さえ板の間にはまるようになっています。シンクロ接点と巻き上げをフリーにする為の三角形のボタンも見ることが出来ます。このシステムもリコーの特徴ですね。
シャッターユニットを外して見ました。ここが一番の問題になります。かなり各部品がコストダウンのおかげか質、設計ともに悪くなっています。レバーのようなものがチャージレバーなのですが非常に材質が悪くなっています。強度もかなり低いです。ここいらが輸出用なのかな?と思わせます。 シャッターの裏面を見てみます。実は絞りの開閉不良は右部分の黒いところにあるピンが折れていたために開閉できませんでした。このピンは非常に材質、構造的にも弱いです。519であればもっとしっかりした絞り開閉機能であったのになぜこのようにしたのか?私にはわかりません。ネジも少なく折ることにより部品を固定していることがわかると思います。
シャッターを見て見ます。このプレートに関しても材質が非常に悪く、各穴に入るパーツも非常に強度がなく破損は多いのではないかと思います。 これが519Mの全体像です。リコーの最高級スペックであったのに内部構造的にはすべてにわたってあまり良くないコストダウンの跡が見られたことが非常に残念です。ここいらの問題で国内販売されなかったのではないかと思われます。今回のレストアに貴重なボディの貸していただきまして本当にありがとうございました。